「幼い手」

潮風にふかれて歩きながら
父は自殺を考える
幼い君を残して逝けるはずがないと
わかっていても考える
君は日々成長し
まばゆいほどに生命力を増してゆく

君の小さな手が
突然、父の二本の指を握りしめた

思いがけない力強さに父は驚き、涙した
死ぬことも、生きることもできない父を
君はまだ知らない


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