「湖で釣りをする」

水は濁っていて生ぬるい
おまけに風は強く
水面は波立っている
これじゃあ釣れないだろうな
と思いながら
大きな魚との出会いを求めて
何度もルアーを投げる
ルアーが風を切る音だけがむなしく響く

眼をとじてリールを巻くと
自然と一体となったような気がする
日頃の憂いも去っていく

「釣れますか」
通りすがりの釣り人が声をかけてくる
「釣れませんね」
そう答えると
釣り人は安堵の表情を浮かべる
釣り人同士に共感が生まれる

季節はすっかり夏になり
蝉時雨が聞こえる

明日には
またもとの生活が待っているのかと思うと
憂鬱になる

しかし、そんなことを考えるのは時間の
無駄というものだ
日暮れまでにはまだ時間がある
とりあえずいまは楽しみ尽くそう

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