【全曲紹介】Dave - Psychodrama - #10 Voices
10曲目、Voice。この曲はアルバムの中でも一番アップテンポでポップなニュアンスの曲です。フックもメロウでかなり聴きやすい曲に仕上がっているかと思います。
前の曲、Lesleyまでで全セラピーセッションを終えたデイブ。ここまでの9曲がとても辛く苦しい内容だったこともあり、この曲を聴き終えると心にあったモヤモヤが全部吹き飛ぶような、自分を縛っていた何かから解放されるような気分になるかと思います。
デイブはフックで「寝ているときも声が聞こえる。それを頭の外にはじきだすことができない。」と歌い上げます。10曲目まできてもまだデイブの心は100%解放されていません、それでも、曲が進むにつれデイブは少しずつ前向きになっていきます。そしてVerse3...この曲のVerse3は本当に素晴らしい内容です。不覚にも僕はちょっと泣いちゃいました。この曲、1回聴くとラブソングに聴こえますが、ここまでデイブが語ってきた悩みや痛み、憂鬱など、そのすべてが頭から離れないVoiceなのでしょう。デイブは様々な感情を擬人化して、それを頭から離れない声、として表現していくわけです。では内容を簡単に紹介します。
[Verse 1]
I gotta speak out/I know heartbreak well, man, I got her on speed dial/Me and suffering got the same dad/Me and pain go way back/And it's hard to explain but
俺は真正面から話さなきゃいけない。俺は心が割けるような気持ち(失恋)を知ってる。彼女(=失恋)の番号は短縮ダイアルに登録してあるんだ。俺と苦しみは同じ父親で、俺と痛みは昔からの友人なんだ。そして、説明するのは難しいんだけど…
イントロといっていいような短いバースからスタートします。自分の本音を打ち明けることを宣言した後は、失恋を女性に例えます。苦しみは兄弟で、痛みは親友。様々な感情を擬人化していきます。ずっと苦しんできたことを認めて、そのままフックに入っていく、と。
[Chorus]
All my life, I hear voices/All my life, I hear voices when I sleep/All my life, I hear voices/And the voices/They say you’re everything that I need
俺は人生でずっと「声」が聞こえてるんだ。寝ている時に、俺は人生でずっと「声」が聞こえてるんだ。俺は人生でずっと「声」が聞こえてるんだ。その声は君が俺に必要なものの全てなんだって言ってくるんだよ。
[Post-Chorus]
I can't get 'em out/I can't get 'em out my head/I can't get 'em out
その声を、外に追いやれない。頭の中から、その声を外に追いやれないんだ。その声を、外に追いやれない
コーラスでは声が人生でずっと聞こえていたことを告白します。そしてその声が頭から離れない、と。僕は、「声」は最初聴いたときはシンプルに「彼女の声」だと思いました。このライン、「All my life」ではなく「oh my love(愛しい人よ)」に聴こえるんですよね。。(どっちが正しいのか微妙ですが、一旦Geniusを信じます。)そういうのもあって、「彼女の声」だと思いました。
もちろん好きだった彼女の声であることは間違いないんだと思います。ただ、もしかしたら人生で自分を悩ませてきた「悩み」「痛み」「プレッシャー」「ストレス」。そういった自分の心の葛藤全てが「声」となってデイブを悩ませていたのかもしれません。
Look, I don't wanna waste time/But heartache's my G I can get her on FaceTime (Right now)
時間は無駄にしたくないけど、心の痛みってやつは俺の友達みたいなもんだ(=いつも近くにある。)。彼女にはFacetimeで連絡できるんだよ(今すぐね)
時間は無駄にしたくないけど、いつも心の痛みは近くにいる(=友達)でFacetimeを使えばすぐにでも連絡できる(=すぐに心が痛くなる)。そんな心の葛藤を謳います。
I don't know envy, that nigga lives on the other side
俺は「妬み」なんてしらないよ、そいつは俺とは別のところに住んでる奴さ。
俺には妬みなんて感情はない。と言いきります。でもデイブはフックの「声が聞こえて離れない」わけで、このバースでも「Facetimeでの連絡できる(=なにかあればあっという間に心が病んでしまう)」わけです。
きっと自分の中で2つの感情が交差して、なんとか自分をまっすぐ保とうとしているのでしょう。矛盾を孕みながらもデイブは続けます。
But the struggle my bredrin/And the hustle my best friend/I heard of regret but I don't know him as well as my last few ex's
でも苦しい日々は俺の友達、そしハッスルは俺の親友さ。俺は後悔の念を耳にするけど、でも昔付き合っていた彼女たちと同じくらいにそいつのこと(=声のこと)をよく知らないんだ。
All this pain must be the reason/The reason that
この痛み全てが理由に違いない、その理由に違いなんだ。
このバースでは妬みや他人のことに目を向けないように、前を向こうとする自分、でも振り返ってしまう自分。その葛藤が最後のライン「この痛みが声の聞こえる理由なんだ…」と自分の痛みを認識して受け入れます。そして、フックに戻る、と。
そして、ついに最後のバースに入っていきます。ココから、泣けます。泣けるので全部訳します。
[Verse 3]
Used to sit down in a room all day and think to myself, "What the fuck am I doing wrong?"
昔は部屋の中で一人で座り込んで、一日中自分に問いかけてる。「俺がどんな間違いを犯しているっていうんだ?」って。
Sorrow's a bitch, I'm glad that she left, I'm moving on
悲しみはビッチだ。俺は彼女が俺の下を去ってうれしいよ。俺は前に進んでるんだ。
Never had no pot to piss in
俺には金が全くなかった。本当に貧乏だった。
Made so many wrong decisions
そして間違いを沢山犯してきた。
'Til I fell in love with optimism
でもそれは俺が「楽観主義」と恋に落ちるまでさ。
この一連のラインが本当に素晴らしいです。部屋で一人で自問自答を繰り返す日々。貧乏で間違いも沢山犯してきた。それでも彼女と別れて、前を向いたと。(ここは悲しみをビッチに例えているので、彼女を「ネガティブなもの」の比喩としても使っているのだと思います。)そして、色んなものを乗り越えて、デイブは「前向きさと恋に落ちる」わけです。この辺の詩的な表現が、一層涙を誘います。ずっと苦しんできた男がoptimismと恋に落ちる、と。一気に曇っていた視界が開けるような感じがしませんか?
続きます。
And our love, it's like the sweetest thing
そして、俺たちの愛はまるで一番甘いもののようだった。
Man grew up 'round sweets and cling
俺は甘いものとくっついて離れないものに囲まれて育った。
Now we pull up to the club with the sweetest tings
今ではクラブに車を停めて、一番いい女たちと一緒にいる。
I can’t even play with the ting if she ain't 19 on a FIFA ting
俺はその女の子(彼女)ともうFIFAをプレーできないんだ。彼女が「19」じゃないからね。*
*ここも素晴らしいラインです。FIFAはサッカーゲームで最新作が「FIFA19」。つまり、付き合っていた女の子はもう過去の女の子であることを認めるわけです。彼女はもう今の彼女じゃない(=最新作)ではない、だからもう一緒にFIFAでプレーできない、と。この19は彼女の年齢とも掛かっているんだと思います。年齢が離れていて上手くいかなかったのか、19歳の時に付き合っていて、もう時がたって20歳になってしまった、ということなのか。
I don’t care what beef mans in, can't pull up 'round here on a idiot ting 'cause-
俺はどんな奴がビーフを仕掛けてくるかなんて気にしない。そんなバカげたことに付き合うために止まれないんだ。だって…
といって、またフックが来て終わりです。
どうでしょうか。この曲、単純に失恋ソングと取ることもできますし、人生のネガティビティとの決別、と取ることもできるのでは。この曲のようにリスナー側に一定の解釈の余地を与えている曲をここに持ってくるあたりがニクいですよね。
さて、次でいよいよ最後の一曲です。最初は最後まで辿りつけるか不安でしたが、何とか完成できそうです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?