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【全曲紹介】Dave - Psychodrama - #5 Location ft. Burna Boy

4曲目のPurple Heartまではどちらかというと、ラッパーとして売れる前の話が多かったような印象でした。しかしセラピーを挟んで、この「Location」からラッパーとして成功してからの出来事に話が移っていきます。この曲でデイブは自分の成功や、女にモテることなどをひたすらフレックスしていきます。フレックスやボースティングはヒップホップでは外せない要素ですが、デイブの場合は単純な自慢話を並べ立てるのではなく、ここでも巧みなワードプレイをこれでもかと繰り出してきます。

この手のお決まりのテーマを取り扱う場合、何を言うかより、デリバリーやライミング、ワードプレイで優劣がつく。そういう意味でデイブはこうしたボースティング・フレックス物は得意なのかもしれませんね。この曲、メロディラインがとてもキャッチーで、他の曲に比べると軽いテーマなこともあり(?)、今のところアルバムの中でも一番ヒットしている曲です。また、本作5曲目にして初めて客演が登場することもハイライト。このBurna Boyはナイジェリア出身の27歳のシンガーです。デイブもナイジェリアにルーツがあるようなので、その辺でつながったのですかね。すみません、詳細はわかりません。

[Chorus: Burna Boy]

曲はキャッチーなフックから始まります。

If you send me the location/Then I'll be right there/And make I come check you, my baby/No time, no/And my dawg is on probation/Another 5 years/Me bring girls to his location/No time, no
場所を送ってくれれば、俺はすぐにそこに行くよ。俺がついたらすぐに君に会いにいかせてくれ。すぐにいくよ。俺の仲間は今執行猶予状態、あと五年間続くんだ。だから俺はそいつのところに女を連れて行く。すぐに連れてくんだ。

場所さえ教えてくれれば、いい女がいれば世界中どこでもいくよ、と。そして執行猶予期間中で身動きが取れない仲間のところにもすぐに女を連れていけるぜ。というラインから始まります。世界中簡単に移動できる金があって、女も簡単に手に入るということを歌いつつ、仲間のことも気づかうラインになっています。

Verse 1

最初のバースから巧みなワードプレイを乱発してきます。

Looking for one wish, on a Ray J ting
Ray Jみたいに「One Wish」を探し求めてる。

Ray Jのヒット曲を引合に出します。one wishは直訳すれば「一つの願い」ですが、ここでは「素敵な女の子」と捉えていいと思います。

I pree'd that girl, outrageous ting/But she can’t see 'cause I got shades and ting/Bare girls wanna throw shade and ting/No shade, what shade is your foundation in?/Darkest grey, the shade I'm in/49 more if your babes wants in
俺は女の子に気付いた。とんでもなくいい女だ。でも彼女は俺の視線がわからない、だって俺はサングラス(shade)を掛けてるから。沢山のオンナが陰で悪口(throw shade)を言ってるけどさ。ココだけの話(no shade)、ファンデーションのシェードの色はどうした(似合って無くない?)?
俺がいる影(shade)は一番暗い灰色さところ。女の子たちでここに来たいなら49より上が必要だぜ!

ひたすらShade縛りで繋げていきます。1つ目はサングラス。サングラスを掛けてちら見しているから気づかれない、と。2つ目のthrow shadeは陰で悪態をつく、みたいな意味で、3つめのno shadeは「ココだけの話、ぶっちゃけ」みたいな感じ。4個目は化粧のファンデーションのシェードでになります。最後の49って何?と思うと思うのですが、netflixのSM系?のポルノっぽいシリーズで「50 shades of Grey」というのがあるらしいです。デイブはそれを引合にだして、俺とセックスしたい(付き合いたい?)なら49以上、つまり「50 shades of Grey」に辿りつかなきゃだめよ!というライン。巧すぎる。100点。

[Verse 2: Dave]

引き続き、くだらない内容(失礼)を巧みなライムで繋いでいきます。

Look, playboy, I don't need a Carti/I'm captain, I lead the army
Bad ratio, I leave the party
なぁプレイボーイ君よ、俺にはカーティは必要ねえんだ。俺がキャプテンだからな。俺が仲間を率いてるんだ。でも(男女の)比率がイケてねえから、このパーティは帰るわ。

まず米国のラッパー、Play Boy Cartiの名前を引合に出しますが、実はCartiの裏にはサッカー選手のイカルディが隠れているらしいです。イカルディはイタリアの名門クラブ、インテル・ミラノのキャプテンなので、次のライン「俺がキャプテンだ」に繋がるわけです。イカルディじゃなくて俺がキャプテンだ、と。そして、仲間を率いてパーティに乗り込むデイブですが、男ばっかりなのでさっさと帰ることにした、と(笑)。くだらない内容の中にも、しっかりと、巧みに言葉遊びを組み込んできます。(Cartiに対して、ここはディスというよりただのワードプレイだと僕は思いました。)

Your ex wavy, we tsunami/Girl from India, sweet as naani/Head so good, now I speak Gujarati
お前の元カレはイケてた(ウェイビー=波)かもしれないが、俺たちは津波だぜ。インドから来た女の子、彼女はナンみたいに甘いんだ。俺は頭がイイから(彼女に口でフェラされて)、すぐにグジャラット語を覚えちまったよ。

まず日本でもJP The Wavyの功績もあり定着したウェイビーを使い、津波と対比させていかに自分がイケてるかを誇示します。その後のインド人の女の子のラインの「naani」という単語はインドカレーの「ナン(naan)」と 「女性器(punani)」が掛かっていてnaaniと発音しているみたいです。そして、「head」は「頭脳明晰」と「フェラチオ」が掛かってると(笑)。ここもくだらないけど巧いです。ちなみに欧州はインドからの移民が多いですね。フランスとかめっちゃ多い。

次のラインもこれまた巧み。

Look, money like the alphabet/If you wanna see P’s, gotta pass on the ends
なぁ、金ってのはアルファベットみたいなもんなのさ。もしPが欲しければ、最後まで通過しなきゃいけないのさ。

イギリス英語ではお金のことを「P」というらしいです。物事は最後までやりきらなければ金は手に入らない、と。これだけだと前のラインの意味が分からないと思いますが、実は「on the ends」の裏に「O and the N's」が隠れています。アルファベットの順番は「N」→「O」→「P」なので、NとOを超えないと「P(=金)」には辿りつかないぜ、と。これヤバくないですか。ビビりますね。

・・・

こんな感じです。曲自体に深いメッセージはないのですが、巧みなワードプレイとBurna Boyのナイスなコーラスも相まって結果的に大ヒットに繋がっているのでしょうね。

つづく。

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