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とみおかアンバサダー活動① ~とみおかワインプロジェクト視察~

富岡町でワイン用ブドウを栽培して、ワインを作っちゃおう!というプロジェクトを率いている「とみおかワインドメーヌ」代表の遠藤秀文さんのお話をうかがってきました。

このプロジェクト、僕は前から知っていて、Facebookページでいつも情報を追っていました。
https://www.facebook.com/tomioka.wine/

初めて知った時の印象は今でもはっきり記憶しています。「ととととととと富岡でワイン????」震災前に始まっていた産業ではありません。完全に新しい試みです。しかも富岡は海のそば。さらに津波に漬かってしまった場所も多く、果たしてブドウ栽培に適しているのかどうか、という疑問がぬぐえませんでした。そんな思いを抱えながら、富岡の海が見渡せる小高い丘の上にある圃場にうかがいました。

プロジェクトの概要を簡潔に。
2016年:栽培を開始。白ワイン用のブドウを中心に合計787本を栽培 (2019年現在)
2019年:初収穫
2020年1月:初のワインが完成の見込み

初収穫まで3年。ワインの完成までは実に4年。それを商業ベースに乗せるとなるとさらに多くの年月が必要でしょう。そんなリスクを伴う事業に果敢に乗り出した遠藤さんの言葉は、非常に明快で説得力のあるものでした。

「無理だと思われることをやらないと、街は生まれ変われない」

富岡町は震災前は畜産業も盛んで、遠藤さんは富岡の良質な豚肉と海産物、それに酒を絡めた町おこしに乗り出そうとしていたそうです。そこに襲った地震と津波と原発禍。畜産業は操業を停止。ならば富岡の海産物と一緒に楽しめるワインを作ろう!と、このプロジェクトを始めたそうです。白ワイン用のブドウを中心に作っているのは「海産物に合わせるため」。なるほど、徹底しています。

「何故日本酒ではなくワインなのか」という問いにも、非常に明快に答えていただけました。

「水田は景観としての価値は低いが、ブドウ畑にはその価値がある」
なるほど、確かにそうですね。いやでも、田園風景を売りにするのはインバウンド需要を取り込むことを考えたらアリなのでは? もう一つの理由が僕には心の奥底に突き刺さるものでした。

「ワインの樹は100年続く。だから、代々これを受け継いでいって資産にできる」

そして

「息子に『お父さんがあそこで頑張っていた意味がわかった」と、10年後、20年後に言われたい」

震災後のいわゆる「復興」(僕はこの言葉が大嫌いなので使いませんが)は、どこかで「短期間の」という暗黙の前提があったような気がします。「震災からたった半年で、〇×町はここまでよみがえりました!」とか「これから1年以内に△□します」的な。短期間で変わったもの、変わっていくであろうもののほうが、情報を伝える側は扱いやすいし、受ける側にも耳ざわりが良いのは確かでしょう。

でも、その影で静かに進んでいる「長期的な目線で動いているプロジェクト」に、自分は全く目を向けていなかったなあ、と痛感しました。富岡町に通い始めたのも、宮城、岩手などのいわゆる「原発禍を免れた被災地」の変わっていきようと比べた際の、富岡町の圧倒的な「変わらなさ」をしっかり見て、自分なりに伝えたい、と思ったからでした。でもここで僕が勝手に前提していた「変化」の基準って、やっぱり短期的な変化を前提していた気がします。「1年前と同じだよ…」「この車、半年前もあったな…」といった具合に。だけどその影で、街の方々が言葉通りの意味で先を見据えて、こういった活動を着実に続けていたことに本当に頭が下がります。

今回の視察を先導していただいた街の方は、移動の車中で「私も息子に約束したんです。あきらめないって。」と熱く語っていました。数年前に知り合いになった街の方は「俺は子供達に地域のバトンをつなぐためにがんばっている。富岡町を、双葉郡を彼らの選択肢に残すようにと」。

最近の意識調査では、富岡町に住民票がある方々の中で「戻るつもりである、もう戻っている」は約16%、「戻るつもりはない」が約50%にのぼるそうです。楽観できる状況では全くありません。でもそんなことは、実際に富岡町に戻って街の再建に取り組んでいる方々が一番わかっているのでしょう。「まずいなあ…」ではなく、「まずいなあ。では、どうしよう。よし、こうしよう。」と、二つ先の段階に富岡の方々は進んでいました。それも、とっくの昔に。

10年後、100年後の富岡を創ろうという遠藤さんの覚悟は、この言葉にその全てが詰まっていると僕は感じました。

「我々の代は、主役にはなれない。」

#とみおかアンバサダー
#富岡町
#イノベびと

【初出:2019年12月11日/facebook, ブログ「N予備校 中久喜匠太郎の講師室」

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