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誰かに向けてなんて言わなきゃいい

今日は特に東京住まいの人のSNSには青空と5本の白のストライプが溢れていました。


私は多摩川超えた神奈川県民なので、ブルーインパルスがくるりと旋回するあたりにいました。少し買い物をしに外に出たら商店街の薬局とか和菓子屋とかの店員さんがわらわらと出てきて、空を見上げたのでつられて見上げた途端、

町中の建物で仕切られた狭い空をさっくり切り裂くように、ブルーインパルスが現れました。開けたところではなかったから、あっという間。

あ、と気付いてカメラを空に向けたけど、撮れたのはへなへなな雲の余韻。

大好きなドラマに「空飛ぶ広報室」というのがあって、

主人公の空井大祐という青年はあこがれのブルーインパルスに乗る資格を得た直後に大けがをしてその資格を剥奪されて、空虚な気持ちのまま航空自衛隊広報室に配属される自衛官、という設定。

彼が「ブルー」にかけた想いとか、そこから立ち直って自分の職務に生きがいを見出だしていく様に、広報室の同僚や上司、テレビ局ディレクターの女性それぞれが関わっていくストーリー。(語りだすと思い入れありすぎなのでこのくらいで。)

どうもツイッター見る限り同じようなひとがやっぱり結構いたけど、「空飛ぶ広報室」からブルーインパルスに勝手にいいイメージがあって、今朝ブルーインパルスが東京上空を飛ぶ、と聞いて私は素直に喜んでいました。

でも「医療従事者の方に感謝と敬意をこめて」って文言をみて、うーん。ってなった。

私は医療従事者ではなく、もはや今のとこ何にも従事してないものなので、無邪気にわーい。なんて喜べるけど、このブルーインパルスが飛ぶ、ということに何ら意味を見出だせない、はおろか、そんなことで「感謝」する暇とお金があるならもっと具体的な策を出せ。シンプルにこの状況をどうにかしろよ、と思う人が一定量いるにきまってる、と思ったから。

自分はつねづね、ちょっとひねくれてものいいをする方なので、「クリスマスなんてキリスト教でもあるまいに。」みたいなベタな反発したりするけど、実はちょっとうらやましい、みたいなことがありました、若いころ。

でも今回のブルーインパルスを素直に喜べない医療従事者さんはひねくれてるわけでも感じが悪いひとでもなく、それだけ逼迫した、キツイ状態にあるからだろうと思う。

もっというと「キツイことになってるの医療従事者だけじゃないからな。」って思ってる人もたくさんいる。

かてて加えて、これだけ助けてくれてと絞り出すように声を上げていてもなんにも状況の変わらない気持ちでは、一瞬通り過ぎる飛行機のアクロバットにはなにも救われないと感じてしまうのは、むりもないこと。

口々に、青空の5本線をみて「前を向けそうだ」「希望を感じられた」といえる人たちは、それだけ心にゆとりがまだある人たちなんだと思う。


「頑張ってくれる医療従事者の方たちに、感謝をとどけます」自分の大好きな俳優さんやアーティストさんが言葉をかけてくれたら力になるし、ドキドキと心拍があがるから、血流も上がって、アドレナリンもでて実際ちょっと頑張れると思うんだ。


でもなぁ、わざわざ「医療従事者のみなさんに敬意を示す」って、言わなきゃいいのに、と思う。

「なにをやってももう何も信じられないもんね、あなたたちのことなんて状態」の日本政府なので(あ、政治批判とかここで繰り広げたりしません、心情として、です。)、何かをピカピカ光らせるとか、飛行機飛ばすとか、こういうのは「パフォーマンス」として括られるもの、よくない意味の。

良い意味のパフォーマンスは良い結果を生む。

ピカピカも、ブルーインパルスも、否定はしない。

ただ「これで僕らの感謝を感じてね、わかるよね?僕らの思い、届け!」みたいなのは、好きでもないアーティストのまったくどこがいいかわからない歌を聞かされて感動して泣け、と同レベルなものなので、考えものです。

「空飛ぶ広報室」ファンの私としては、ブルーインパルスの操縦をされていた人たちの心意気は感じたいと思います。でも、それを「国民や医療従事者のことを思ってやった」なんていうふうに、操縦もしてないひとが、思うんじゃありませんよ。

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