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YouTube脳への警鐘

「本質とは何か」を最近ずっと考えている。僕にとっての「本質」とは、「物事で一番大切なこと」である。例えば僕の執筆活動における本質とは「読者が読んで良かったと思える文章を書くこと」である。このnoteも、その本質を意識して書いている。

しかしここ最近、世の中の多くのコンテンツが本質とは関係ない付け焼き刃のテクニックに走っているように感じられる。そしてその風潮を牽引しているのが”YouTube”だと僕は考えている。YouTubeによって考える力が失われ、本質とは関係がない目先の利益に目が眩んでいる人が絶望的に多い。このnoteはそんなYouTubeに侵された脳"YouTube脳"に対する警鐘である。

YouTubeで求められているコンテンツ

YouTube脳とは何かを考えるにあたり、YouTubeで求められているコンテンツを考えてみると分かりやすい。みなさんがいつもYouTubeで見ている動画はどんなものが多いだろうか。ビジネス系?ゲーム実況?料理?いろいろあるだろう。何より僕自身も毎日YouTubeを見ている。好きなゲーム実況者がいて、彼が動画を更新するのを楽しみにしているくらいだ。

今回僕が問題にしたいのはビジネス系のYouTubeである。「年収が10倍になる思考法」だったり「5分で分かるベストセラーの要約」だったり「プログラミングで稼ぐ裏技」だったり。そういった動画がYouTube脳を生み出していると考えている。

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ではこのようなビジネス系の動画ではどのような要素が求められているのだろうか?

それは「短く・分かりやすく・大げさな動画」である。製作者は間違いなくこの3点を意識して動画を作っている。なぜこれが分かるのか。実は僕は今、この活動と関係のないところでYouTubeの脚本を書く仕事をしている。そこでまず必須条件として提示されたのが上記3つの要素なのだ。

そしてYouTubeを作る側の人間は、偏差値40以下の人間でも分かるような動画を作ることを意識している。これはテレビと同じだ。彼らの多くは長時間何かに集中することも、文字をたくさん読んで理解することも、抽象的な概念を理解することもできない。だから「短く・分かりやすく・大げさな動画」がしか見られないのだ。今、人気のビジネス系YouTuber達は間違いなくこの層を狙っている。というより、まずはこの層を取り込んで勢力図を広げつつ、次第に上のレベルの人たちにもリーチを伸ばそうとしている。

ここで「短く・分かりやすく・大げさな動画」の各要素を分析してみよう。

(i)短い動画

長い動画は見ていられない。これは誰でもそうだ。僕だって「1時間で〇〇を徹底解説!」より「5分で分かる〇〇の大切なこと」のような動画の方が手が出やすい。多くの人は毎日が忙しいと感じている。ゆっくり腰を据えて学ぶ時間がないと口を揃えて嘆いている。(本当に時間がないかは別として。)

「ハーバード大学教授が経済を解説する1時間の動画」「人気YouTuberが語る5分で分かる経済の今」だったら、後者を選ぶ人がほとんどだろう。しかしどちらがより勉強になるかと言われたら明らかに前者だ。

これは勉強がある程度できる人にも当てはまる。「ハーバード大学教授が経済を解説する1時間の動画」「同じハーバード大学教授が書いた400ページの経済の本」だったら、前者を選ぶ人が多いのではないだろうか。より彼の言いたいことが詰まっているのは本の方にも関わらず。

勉強ができるできないに関わらず、ほとんどの人は短い時間で学べることを重要視している。


(ii)分かりやすい動画

知らない単語や、難しい数式が出てくると人は拒絶反応を示す。そのため動画ではできるだけみんなが知っている言葉を使い、アニメーションや効果音で分かりやすく表現することが大切になる。そして大多数の人は、多くのことを一度に理解することもできない。そのため「大切なこと5選」のように片手で数えられるくらいの範囲で語る動画が多い。大事なことをできるだけ削ぎ落とし、一般的な人でも理解しやすい部分だけを抽出し、取り上げることになる。

またYouTubeでは冒頭15秒で8割が見るのを止めると言われている。そのため冒頭部分にギュッと視聴者を引きつける工夫がなされる。この動画を見て何が分かるのか簡潔に伝えるなどの工夫が大切になってくる。


(iii)大げさな動画

冒頭の工夫では大げさなキャッチフレーズも大切になってくる。「この動画を見ないと一生貧乏」「これを見れば人生が変わる」「知らないとヤバい」など。コンプレックスを刺激するワードで視聴者を離さない。

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【何がどうヤバいんだ?知らなくても死にはしない】

サムネイルも同様である。派手はエフェクトを使い、「稼げる」「モテる」「人生逆転」「勝ち組」など強調したい部分がデカデカと映し出されている。

ビジネス動画を見る人のほとんどは「現状に不満があって、少しでも自分を向上させたいから動画を見にくる」人たちだ。そんな彼らのコンプレックスに漬け込む動画が、結果的に伸びるアルゴリズムになっている。

YouTube脳とは

「短く・分かりやすく・大げさな動画」がYouTubeでは求められていると解説した。ではそんな動画を見続けたことによって生まれるYouTube脳とは一体何だろう。それは「すぐに答えを求める平凡な脳」だ。

5分で分かる系や、本の要約系の動画を見続けていると、「なんだ。わざわざ勉強しなくても読書しなくても、大事なことって簡単に分かるじゃないか。」と思うようになってくる。時間をかけなくてもすぐに答えは分かるように思えてきてしまう。

僕はそういう動画をほとんど見たことがないが、コメント欄を見ればそれが分かる。

「とっても勉強になりました!」「明日からバリバリ仕事できる人間になれた気がする!」「これは良いこと言ってる!名作!」みたいなコメントで溢れている。

動画を見た多くの人が、見ただけで学んで、理解した気になっているのだ。「気になっている」くらいなら構わない。誰にも迷惑をかけないし、一人で満足している分には結構だ。しかしそんな個人がどんどん増えて、とんでもない人数にまで激増すると厄介なことになる。よく考えず、他人から与えられる断片的な要点をかいつまんだだけの人が多数派になってしまう。

これはコモディティ化である。コモディティとは「代替可能などこにでもいるその他大勢」という意味だ。結局のところ、みんなが見るような動画を見て賢くなった気でいる人は、同じようにその動画を見ている人と同等のレベルにしかなりえない。何十万、何百万という視聴者が、みなその程度の思考しかできない同じレベルの頭でしかないのだ。

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「ちょっとでも賢くなりたい」という向上心を持って学びに来たはずの人が、結局その他大勢の一部になってしまう。極めて平凡だ。本末転倒である。

結局のところ、彼らは自分が理解できる範囲のことにしか手を出さない。自分ではまだ理解できない、真剣に手と頭を動かして勉強しないといけないレベルには踏み込まないのだ。自分が理解できる範疇をグルグルグルグルと永遠に回り続けることになる。

果たしてそれが真に意味のある勉強と言えるのだろうか?


脱・YouTube脳のために

ここまでをまとめると、YouTubeは「短く・分かりやすく・大げさな動画」で溢れており、それに触れ続けているとYouTube脳=「すぐに答えを求める平凡な脳」になってしまい、その他大勢の一部になってしまう。

もちろんそれで満足なら構わない。誰にも迷惑をかけていないし、その人が幸せならそれで十分だ。しかし本当に意味のある進化を遂げたいなら、脱・YouTube脳しなければ未来はない。

ではどうすればいいのか。「YouTubeなんて見なければいい」というのが一番簡単な答えかもしれない。YouTubeなんか見ずに、読書して自分で考えて手を動かせばいいと。しかしそれだとつまらないし、すぐに断ち切ることは難しいと思うので別の回答を示したい。

それは「ひねくれた視点で物事を見ること」だ。

僕はおそらくひねくれている。大多数がイエスと言ってるのを見るとノーと言いたくなる。というより実際にノーと言い続けてきた。

そんな僕からすると、「5分で分かる年収が10倍になる思考法」だったり「明日から人生が変わるモチベーション動画」だったり「ベストセラーの要約」みたいな動画は見る前から「なんて馬鹿らしいんだ」と思ってしまう。

だってそうじゃないか。5分で年収が10倍になるわけないだろう。そんなの視聴回数を増やすための大げさな売り文句だと1秒で分かる。明日から人生が変わるって?そんなんで変わるなんて今までどんだけ薄い人生歩んできたんだよ。本の要約?自分で買って読めよ。まず製作者への敬意を忘れるなよ。お前がそういう動画を作って、見るだけで満足した人たちが本を買わなくなったら製作者は損をするだろ。

実際に動画を見ても感想は変わらなかった。この動画の何が役に立つんだ?嬉々としてコメントしてる人たちは一体普段何を考えて生きているんだ?としか思えなかった。

これは一般的には「ひねくれている」と呼ぶらしい。しかしそうは思わない。これこそが本質ではないのだろうか。

本質とは「物事で一番大切なこと」だと冒頭で定義した。年収を10倍にするために一番大切なことは「5分で分かる思考法を実践すること」なのだろうか。人生を変えるのに一番大切なのは、その他何百万人が見た動画を見てその気になることなのだろうか。答えは否だ。これらは全く本質的ではない。

しかし現状としては、大多数の人がこう言った本質ではないことを称賛しているのだ。では本質を見つけるにはどうしたらいいのか。簡単だ。

本質ではないことをひっくり返して見ればいい。

つまりみんなが称賛している動画を「これはくだらない。大事なことは他にある。」といった批評の目で見ればいいのだ。

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「みんなが口を揃えてイエスと言っていたら、きっと本質はノーの方にあるに違いない。」こう考えるわけである。

あえて「ひねくれた視点で物事を見ること」と書いたが、このひねくれこそが本質を見極めるのに欠かせないと僕は考える。

YouTubeを見ることは決して悪いことではない。しかし大多数が評価するものが本質的に良いものだとは限らない。そして大多数が評価する動画は、評価されるように短く・分かりやすく・大げさな動画に作られていることを忘れてはならない。YouTube脳=「すぐに答えを求める平凡な脳」になってはいけない。何が本当に大切なのか、本質はどこにあるのか。常に考えながら日々学ぶことで真に意味のある進化ができるのではないだろうか。


それでは素敵な1日を。

最強になるために生きています。大学4年生です。年間400万PVのブログからnoteに移行しました。InstagramもTwitterも毎日更新中!