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トレモロアームが折れたことで分かったこと

シンクロナイズドトレモロユニット使用によるチューニングの狂いに悩まされて10年。その悩みがついに解決しようとしている。
ボディ裏のスプリングの状態に懸念があって、アーミングするたびにパキっ、チカっ、と音がする。ナットやストリングガイドもそうだ。グリースを塗れば解消するかと思ったが変わらない。ストリングガイドは伝統的なカモメ型で摩擦が大きくサビもあるので今回バレル型に変えてみようと思う。基本的に標準仕様から大きくパーツの方針を変えるつもりはないのだが、錆び取りに1時間かけるより400円くらいで使ったことないパーツを試してみたい気持ちがある。今日中に届くはずだ。

使用しているストラトキャスターはレースセンサー時代のクラプトンモデルで、仕様しているパーツなどはヴィンテージ使用、特にトレモロアームはクラプトン自身も使っていないし、トレモロを使う想定をしていないモデルだ。私もトレモロアームはこれまで使ってこなかったのだが、昨今音程をゆらゆら揺らすのにハマっており、いざ使ってみるとチューニングがあまりに狂うので辟易としている。ロック式のペグにしたり2点式のトレモロユニットにしたりと対策は色々考えられるが、ジミヘンだって同じような仕様のギターでライブをやっていたんだからなんかやりようがあるはずだと色々検索し、スプリングのテンションを各弦ごとの可変音で調整することで狂いをなくせるというかなり信憑性の高そうな情報があり試してみたのだがどうにもうまくいかない。これではギターが使い物にならないなぁと悩んでいながら、原因を探るべくアームをグニョグニョアップダウンさせてギターのパーツの動きやピキッという摩擦音の出どころを探っていたところ、トレモロアームの根本が折れてしまった。絶望だ。

「トレモロアーム 折れた」で検索すると、なにやら鉄工ドリルとか逆タップとか私の持っていない工具で解消している情報ばかり。金属に穴を開けるの大きい音がしそう。インパクトは持っているのでまぁできないこともないがめんどくさい。いや、楽器にインパクト使うのは危険なのでやめた方がいい。鉄工ドリルはAmazonで買うか電車を乗り継いでホームセンターに行くか、、、それはめんどくさい。その辺のスーパーに売ってたら考えてやらんでもない。5mm程度の穴の奥に取り残された10mm程度のネジ先を救う方法はないものか。

そこで、折れたアームの先っぽに瞬間接着剤を塗って穴の奥のネジと接着し、普通に回して取ればいいのではないかと思いつく。いや初めから思ってはいたが、どうせ無理だろうなというイメージがあった。ねじる方向の力に接着剤は弱いのではないかという先入観があるからだ。
「トレモロアーム 折れた 接着剤」とかで調べてみても試している人が見つからない。確かに穴そのものに接着剤が付着してしまったらそれを取り除くことも難しいしリスクがある。でも5mmのネジに2mmの穴を開けてビスを打ち込んで、、みたいなことをやるより接着剤でやるのは今すぐできる。やってみたい。
「接着剤 ねじる方向 金属」などで調べてみると、瞬間接着剤でも耐衝撃のものがあるという。なるほどこういう時に使うのか。
国民健康保険の手続きに役所に行き、その際に大きめのスーパーの3階にある工具とか売っている売り場に行ってみる。耐衝撃の瞬間接着剤を見つけた。鉄工ドリルも探したがそこまでは対応していないようだ。小さくて陶器でできているような可愛い植木鉢も置いてほしい。
帰宅次第すぐに着手しようと思ったが買ってきた弁当をレンジで温めてしまったため、弁当を先に食べることにした。と思いきや、やっぱり食べている時間を接着時間の確保に充てたかったため、ほかほかと湯気を立てている弁当を脇にどかしてギターをデスクに横たえ、トレモロアームの先に接着剤を垂らし、穴の奥に取り残されたネジに接着する。とはいえ「遊び」があるので穴の中でアームが自重で傾いてしまうため、近くにあった吸音スポンジでなんとか固定し、誤ってぶつからないようにとピアノ練習用の椅子の上に放置。瞬間接着剤とはいえ、しっかり固まってほしいので数時間の様子見を見込んだ。

コスメティック田中の動画を見ながら弁当を食べ終え、ストラトキャスターを使った練習も今できないし、ピアノの練習をしようかと思ったがピアノの椅子にギターを置いてしまっていて動かしたくないので、寝ることにした。アコギは大きい音が出てうるさいし。

寝るとはいえ気になって寝れないので接着剤作戦がうまくいかなかった場合の次の行動を考える。アームが折れるのが本番直前でなくてよかった。本番中だったら面白かったが、直前となると対処ができない。リペアショップに駆け込み、大金を払って緊急手術をお願いしていたかもしれない。私ならやりかねない。というかそもそも新しいアームを手配しないといけないことに気づき、Fender純正でなくとも安いのでいいからと探していると、そういえばスプリングももしかしたら古くて劣化しているからパキパキいうのかもしれないという疑念がよぎり、いっそのことスプリングも変えようと注文してしまった。時系列が狂うがその後、注文したアームがミリ規格(国内製造のギター用)であることに気づき、インチ規格と間違えたのでキャンセルしたいと要望した直後に発送完了のメールが来たりなど、まぁ大したことではないが微妙な事務手続きに気を遣ってしまった。発送後だけれどキャンセルしてくれたはいいが、きっと配送料的な幾らかの銭ころもしくは労働を無駄に消費させてしまった気がする。その後インチ規格のアームとスプリングにバレル型のストリングガイドを加えて再発注した。

十分な時間をおいていよいよアームを反時計回りに回してみる。暖簾に腕押しというがあまりにスルスルと回転し始め、あーダメだったかー!と落胆しかけた時、生まれたままの形でアームの先っぽが顔を出した。成功だ。

生還したトレモロアームの先っぽ

これは嬉しい。この喜びを共有したく久しぶりにTwitterに投稿をしてみた。まぁ折れたことも投稿したので2時間ぶりか。
写真を撮った後、耐衝撃接着剤すごいなーと思いどれくらい耐えられるのかせん断方向に力を加えてみたところ、呆気なくポロッともげてしまった。ねじりの方向に力を使い果たしたのか、そもそも奇跡だったのかわからないが、この救出がうまくいかなかった時の絶望を考えると本当に成功してよかった。

さて、救出が成功したところでアームがない。いやある。
別のギターのミリ規格の、しかもながいアームがあるのでとりあえずそれを装着してみる。がたつくがとりあえずこれでやってみよう。
いっそのこと普段触らないところを色々いじってみようということでトレモロユニットをボディに固定しているいわゆる「6点支持」部分のネジを緩めてみた。両脇の2点支持はキツめ、他4点は緩め、というのが調整のコツだというのでそれはしていたのだが、両脇の2点もちょっと緩めてみよっかななんて感じで緩めてみた。するとどうでしょう。アーミングが軽やかに、そしてチューニングの狂いもかなり落ち着いている。これかよ!!!悩みの原因の多くはおそらくこの6点支持部分の調整にあったようだ。多分スプリングの劣化とか関係ないから買わなきゃよかった。支持部分のネジ緩めていいなんて発想はなかった。チューニングが狂わないアーミングってこんなに楽しいのかー!確かに6弦だけ半音あがっちゃうとか変な狂いが出てきたけど、おそらくこれも支持部分の6弦部分のネジの調整次第なんだろうな。実におもしろい。男の子の趣味って感じがする!
クラプトンモデルはトレモロ使用を想定していないからか、ユニットをボディになるべく圧着させて弦の振動がボディにしっかり伝達するようなセッティングであったのだろう。だからネジを緩めたことで鳴り方が若干変わった感じがある。逆にスプリングの残響感がわかりやすく響き始めた感じがあり、これはこれで良い。
一本だけ残していいと言われたら、このストラトキャスターを残すだろうなと思った1日だった。

あと練習してたら次にこういう曲来てほしいなぁと適当に弾いてたら曲が生まれた。いいライブになりそうだ。

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