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メリー

ほんの少し前に実家の犬が亡くなってしまい、ポカンと小さな穴があいたような気持ちで暮らしていた。

ワンマンライブで新曲を5曲くらいやる予定で、ゴールデンウィークを皮切りに先月ガッと曲の屋台骨となるものを5曲とも作った。そこからは曲自体のストーリーを一曲一曲につけて行くんだけど、余程自分のなかでしっくりくるテーマじゃないと書けないので、この6月は極力予定を入れずにノートと睨めっこをしていた。犬のメリーが亡くなったこともあったから、メリーをテーマに曲ができたら良いななんて思ったんだけど、簡単なテーマじゃないのでどうしてもいいものにはならなかった。

今日知り合ったひとに、私の名前忘れないでね、私はいつも近くにいるよと言われてハッとした。私はメリーのことを忘れない。メリーをいつも近くに感じている。なのでそんな歌を今日つくりました。

メリーが自由に走っていきながら、ちょっと離れるとこっちを振り返って舌を出している、リードがなかったらどこまででも行ってしまうのか、結局は身体ごと向きかえって戻ってくるのか。生涯のお散歩のほとんどを東京の狭い歩道で歩いたメリー。私が忙しく働き、帰ってきて曲を作って寝て起きるみたいな生活で疎遠になっていたら、いつのまにか寿命を迎えてしまった。夏のはじめに、メリーは走り去っていった。そんな曲も今日はつくりました。

こうやって何か別のストーリー同士が合わさった結果、歌いたいと思えるようなイメージにつながって、私はそれが嬉しい。

昨日からなんだか具合が悪く、熱も計るたびに上がっている。曲も出揃ったし何もしなくていいか、と横になっている。高熱が出てもう寝るほかに選択肢がない、ということがたまーにあるんだけど、そういう時は自分から解放される気がして毎回嬉しい気持ちになる。身体はつらいけど、休んで良い時間がやっと与えられた感じだ。

氷枕で首下を冷やしながら、ぼーっと本棚に並ぶ背表紙を眺める。不揃いに棚板からはみ出す本の下端の擦れやカバーのズレなんかを観察して、それぞれをどう組み合わせたら整形に落ち着くかを考える。同じようなことをしょっちゅうしている気がするけど、それはどんな時だっけ。

はぁ、みんな幸せになってほしいのに、幸せになってほしい人はみんな幸せになるのが下手な気がする。

写真はベルーナドーム。

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