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Tremolo Hopの話

ワウペダルはギターソロの時に踏むものだと思っていた。
あとはチャカポコする時。
トレモロアームでピッチを揺らし、
ワウペダルでEQを揺らし、
ギター側のつまみでヴォリュームをコントロールできる。
ストラトキャスターって完全体じゃんと昨日思った。

LofiHipHopが好きなので、いつか作りたいなと思っていた。
でもいつもながら重い腰を上げるには、
自分がやる意味のあるコンセプトが必要だ。
あとずっとギターという楽器の音にどこか不満があった。
バイオリンの弓で弦を擦るなめらかな音や、
ピアノのようにぶっとい弦を叩くダイナミックなレンジの広い音、
ギターにはカッティングノイズという武器があってそこは好きだけど、
音色で好きなのはピッキングハーモニクスやチョーキングした時の、
泣き叫ぶようなコーンと抜けるトーンだ。
でもずっとそれを出すわけにいかない。
ギターは好きだけど、ギターの音色の全てを愛せていなかった。
とりわけギターでメロディを弾くことにあまり興味が持てなかった。

しかしワウペダルを常にオンにしてコントロールすることを思いついた。
マイケルシェンカーのワウ半踏サウンドが連想されるし、
特別なことではないんだけど、
今まで飛び道具や効果音としてしかワウペダルを捉えていなかった。
ワウをトーンコントロールと考えてみれば、
今までピッキングしながらトーンつまみをいじるのは難しかったけれど、
ペダルを踏みながらであればそれが可能になる。
トーンの高低でリズムを出すこともできる。
一度発音した一音に対して、
そのサスティンの間にトーンとピッチの調整ができるのであれば、
もうそれは歌に近づくのだ。
ギターでメロディを弾きたくなった。

LofiHipHopをトレモロワウギターサウンドを要にして作ろう。
そうだ名前はTremolo Hopにしよう。
イメージが浮かぶと身体は勝手に動き出す。
ループ音源でビートを組み、ベースを弾いてみる。
なんか普通だと思いBASSⅥを引っ張り出してみてアルペジオを弾いてみる。
よし、うまくハマったと思ったら、
既にLofiHiphopなんかではなくて中井設計曲になってしまっている。
トレモロギターも弾いてみると、
いつものガラクタフォルダ行きの手癖曲になってしまった。
ちゃんとLofiHipHopには作法があるのだ。
その作法を学ぶ必要がある。
それは放課後にやることにする。

まるまる1週間作業配信をやってみて、
夜は広報活動をしようと計画していたけれど、
あまりに広報にやる気が出ずにいきなり気が滅入っていた。
音楽を作るために会社を辞めたのに、
なんでその先に誰もいないスマホに向かって歌を歌わなきゃいけないのか。
まぁ絶対それはいつのタイミングでも必要なことなんだけど、
今使いたい時間ではない。
有休消化期間中くらいは好きに過ごして良いことにした。
昼はウタモノを作り、夜はインストを作る。
ビートにベースやギターを入れていくのは楽しい。
この時間をもっと豊かにしたくなって赤ワインを買いに走り、
飲みながら友達に楽しいよと連絡する。
わかっていたことだが少しでもお酒を飲んでしまったが最後、
一人で録音なんてめんどくさくなり、
ベッドの上でChillタイムに入ってしまった。

この日に誕生日だった友達に連絡すると、
共通の知人が数日前に急死した話を聞いた。
アルコールで肝硬変とそれにより併発する病気が原因。
毎日毎日朝から晩まで飲んでいるようなやつだった。
ワイン飲んでチルってた矢先に聞いた話だったので、
とてもショックだし、とてもヒヤッとした。
飲まずにやっていられない時という言葉があるけど、
例えばものすごく図星で言われたくないことを、
言われたくない人から言われた時とか、
頭にきて頭にきて仕方ないけど言い返せない。
そんな時は酒どころの話じゃなくなっちゃうので、
ジョギングせずにはいられなくなる。
脚にかかる負担とか、疲れとか、
少しずつ流れる景色で少し忘れる。
帰ってきた時のちょっとした達成感でまた少しまぎれる。
わたしはそうやって小器用に生きる術を少しずつ身につけて、
しれっとひらり生きている。
私の知っている彼は多分ジョギングなんかしない。
死ぬほどムカついた時、彼はどうしていたのだろうか。
お酒はほどほどに、なんて誰にでも通じる話ではないということだ。
寂しくなるなぁ。
寂しいよ。

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