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値上げ

団体客でうるさい町中華から帰ると、ポストに大家さんからの封筒が入っていた。ただただ宛先と、送り主の名前が入ったものだ。
これは十中八九クレームの手紙だと察した。最近模様替えをしたため、スピーカーの配置や配線を一新したので音量感のデリカシーが狂っていたかもしれない。比較的大きな音で葬送のフリーレンを観ていたし。新しいギターを買ったのでアンプのノブを上げて楽しんでいたのは否めない。クレームと戦う中井は茶色い封筒を乱暴に開け、3つに折り畳まれた白い紙を広げる。拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げますと始まるいつもの論調に身構えながら読み進めると、そこに書いてあったのは、

家賃の値上げであった。

くそッ
家賃を値上げすな!
物価上昇なんて気にしないもんねぇ、なんて気楽に過ごしていたが、家賃って値上げされるんですね。このままだとネット通信代や携帯料金も値上げされるの必須。心許ない銀行口座からジワジワとむしり取られて行く!やめてくれ!

町中華で美味しい海老の旨煮飯を食べて帰ったらエッセイでも書くかぁとルンルンとしていたのに、この茶色い封筒のせいで気分は最悪。どれくらいの値上げかは更新時に知らされるようだが、額によっては引越しも考えられる。引越しがめんどくさ過ぎるのできっとそれを呑むことになるだろう。肌感覚では最低でも1割はアップするのではないだろうか。1割アップは痛い、やめてくれー!

昨日と今日で曲ができた。
やはり3連休に曲は生まれる。
中井をバンドに誘うとしたらなんで声をかけるかという歌で、20年前のアニメのオープニング曲のようなコード進行でとてもダサい。あからさまに転調すな!歌詞も直接的で恥ずかしい。しかしどうにも気に入っており、こういうのも世に出せるようになったら余裕が出てきたってことなのかもなぁと思っている。いろんな曲が揃っているからこそ許される曲みたいな感じ。

次の次のアルバムのイメージが湧いているので、頭の中が今とても忙しい。イメージがある時は視界がクリアで生きていて楽しい。イメージを具現化するために着手し始めるとコレじゃない感に押し潰されるのでその辛さが待っているのだけど、今現在はスーパー天才モードなのでコレを足してコレを引こうみたいな勝手な想像で夢が広がっている。残念ながら頭の中でうまくいっても音にしてみると大したことなかったりするのでまた試行錯誤の日々になるのだろう。

歌の先生に、忙しく働いているのにどこからそんな活動意欲が湧いてくるのかと聞かれて、創作欲が湧いてしまうので仕方ないと答えたのだけど、呪いのようなもので、楽ではない。
元旦に新しい機材が届いてもうすぐ2ヶ月経つのに、未だに碌に使えるようになっていない。未知の楽器にどう接すれば良いかわからないのは、それが自分のルーツにないものだからなのは確かでイメージがついていないから。だから趣味がないのが悩みだ、という人に対してギターおすすめだよ、とは簡単に言えない。ギターに興味があればとっくに手にしているだろうし、好きなギタリストもいない状態でギターを買ってもすぐに触らなくなるだろう。
新しい楽器を手懐ければまた新しいアイデアが生まれるだろうと期待していたが、新しい楽器を手懐けるなんてのはかなり労力がいるんだったっけ、と項垂れているところだ。そんな事を言いつつ来週また新しい楽器が届く。
今後何が役に立つかわからない、よくそれを思う。何度も売ろうと思ったがめんどくさくて手元に残しホコリを被っていたエフェクターが、ふと試しに使ってみたところばっちりハマって今では手放せないものになっているとか、要所要所で起こることだ。欲しい、必要かも、でも本当に必要かなぁ、みたいに悩むんだけど、一度欲しいと思った自分は追ってまた現れるということだ。皆さんに聴かせる音はいろんな実験を経て選抜されたものだということを、ここに囁いておきたいですね。

写真はキースヘリング展の一幕。

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