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自信

完全復活を予感させる復帰2戦目だった。

9月10日のプレミアリーグEAST、流通経済大柏戦。前節、昨年10月22日以来のプレミアリーグEASTの舞台に戻ってきたばかりのMF11岡野一恭平。

「今日はうまく最初のプレーから入っていけた」。いい感触をつかんで、そのプレーは加速度を増していく。武器であるドリブルで、攻撃を活性化していく。

「恭平一人でなんとかできる」「ボールを預けてくれれば何とかしてくれる」。好調さを感じ取った左SBのDF2元木湊大をはじめ、信頼してくれるチームメートたちが、次々にボールを預けてくれる。

前半、20分、右MFの加治佐海がクロスを上げると、エリア正面やや左でボールをおさめる。「いいところにおさめられた。相手外して、あとは気持ちごと押し込みました」
そう振り返るシュートは、ゴール右へ、吸い込まれるように決まる。そして、昨年10月15日の横浜FCユース戦以来のゴールに、ピッチの上はもちろん、ネット越しに見守っていたサポーターにも歓喜の輪が広がっていく。
バスケットケース。揺れる青黒の旗。そして、送られる「恭平!恭平!」のコール。


昨年の桐生第一戦で負った左ひざ十字靭帯の断裂からの長いリハビリ。周囲に支えられた日々を経ての復帰1戦目、前節の大宮戦。試合後、口を突いて出た言葉には、ピッチに戻ってきた喜びよりも、ゴールに絡めなかった悔しさがにじみ出ていた。

「個人のプレーとしては全然」「自分のプレーには満足していない」

相手が自分を意識している。そう感じ取った81分間。ピッチの脇から見ていても、けして悪い出来だったわけではないように思えた。

しかし、欲しかったのはゴールやアシスト。相手が対策をしてきても、特長を出さなければいけない。それができなかったことへの悔しさがあった。



流通経済大柏戦までの1週間、見つめ直したのは自分の持っている武器、ドリブル。それをどうやってピッチの上で出すか、ということだ。

「取られたらどうしよう」「ミスしたらどうしよう」

そういった迷いは捨てた。ドリブラーに必要なのは、自信。そして、ピッチの上では、チャレンジすることだ。

ゴールを決めたあとも、何度も挑み、ペナルティーエリアへ迫っていく。時には虚を突いたパスで、チームメートたちを走らせていく。流通経済大柏が後半、相対する右SBを代えても「楽しかった」「ゾーンに入れた」というそのプレーで、左サイドを席巻する。

「いいところを学ばせてもらっている」というU-18の先輩、三笘薫(ブライトン)のように。そのドリブルで、時には相手が2人来ても、剝がしていく。



途中、1年生のDF30林駿佑が退場になり、フロンターレは数的不利になった。しかし、逆境に結束したチームは、長橋康弘監督が大きな指示を与えなくても、試合をコントロールできるたくましさを見せていく。

相手の決定的なシュートは、GK1濱﨑知康が止める。公式戦では初めてのCBだったDF32関徳晴も、当たり負けせず、集中したカバーリングを見せていく。交代で入ったMF24児玉昌太郎や、MF18八田秀斗、FW41恩田裕太郎といった選手たちも、攻守で求められたプレーを完遂していく。

そして、岡野一の久しぶりのゴールは、決勝点となった。


試合後、目の前に広がったのは、復帰を目指す日々のなかで思い描いてきた景色だった。

自らの音頭で、チームメートたちとともに肩を組んで、“バラバラ”を歌う。それを見守る家族やサポーターも笑顔で一緒に歌い、喜んでくれる。
U-18、3年目で初めての体験。「こういうふうに喜べるようにリハビリも頑張ってきたので。報われて良かったです」

まだまだ、自分のプレーに満足はしていない。喜びの一方で、「本当にそこは決めなきゃいけなかった」と振り返る、終盤に訪れたカウンターからのビッグチャンスをゴールにできなかった悔いもある。

それでも、チャレンジし続け、チームに勝利を呼び込むことができた成功体験は大きなものになる。これからも、その武器で挑み続ける。自信を胸に何度も何度も。チームに、家族に、サポーターに、自分自身に喜びをもたらすために。

周囲も、まだまだ、こんなものじゃないと感じている。
「もっと点決めてほしいです」(MF6由井航太)
そんな期待にも、絶対に応えられるはずだ。

【川崎フロンターレU-18 プレミアリーグEAST第13節 vs 流通経済大柏】
9月10日(日) 午前10時キックオフ 流通経済大柏高校グラウンド 晴れ
前半1-0 後半0-0 計1-0

得点:岡野一恭平(フロンターレ)

(文中敬称略)


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