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花開く

9月3日、川崎フロンターレU-18の再開初戦となったプレミアリーグEAST第12節、大宮アルディージャU-18戦。

岡崎寅太郎。香取武。志村海里。多くの攻撃のキーマンが不在だった川崎フロンターレU-18で、主役となったのは、リーグ戦初先発の3年生FW、髙橋宗杜だった。

キックオフの笛が鳴るとともに、DF5土屋櫂大のフィードに、スピード感ある動き出しを見せ、「自分の武器である」と自負する前線からの守備で、大宮の守備陣に圧力をかけ続ける。
パスが入れば、持ち前のキープ力で、相手陣内で時間をつくっていく。

そして、37分、大宮の選手のミスを見逃さなかったMF14岡田泰輝のスルーパスに、エリア前へ抜け出し、チャンスを迎える。

スライディングでブロックに来たDF5真壁拓海を、切り返しで交わすと、左足でシュート。ゴール左を揺らし、プレミアリーグ初得点を決めてみせた。

「泰輝が持った時に、自分が武器のスピードがあるので。スピードで走って、相手のCB1枚剝がして。シュート打つときにCBがスライディングしてくるのが見えたので。“これ打ったら当たるな”と思ったので。冷静に見えていたので、切り返して、あとは左足で流し込むだけだった」

試合後にそう振り返るNo.13の表情は、この日ピッチで見せた姿と同様、充実感と自信にあふれたもので、2得点という結果と、チームの勝利に貢献できたことへの喜びが伝わってくるものがあった。

フロンターレU-18を愛するサポーターならば、髙橋宗杜がフィジカルやスピード、そして、前からの献身的な守備でチームに貢献できる、唯一無二の武器を持つ選手であるということはご存じなところであると思う。

その一方で、チャンスを迎えても、なかなか決めきれない。昨年から途中出場で、プレミアリーグEASTのピッチに立ってはいたものの、無得点が続いていた。

「いい選手なんだけれど」「いいものを持っているのだけれど」。何だか、歯がゆくなってしまうような。だからこそゴールが見たい、と応援したくなるような、かつての山田新に通じるような魅力を持つ、そんな選手なのではないか、と思う。

夏前ならば、この日決めた先制点の場面でも、相手のブロックに遭い、決定機を逃し、頭を抱える姿があったかもしれない。

だからこそ、相手を見て、的確な判断を下し、ゴールへ流し込んで見せたこの日の初得点からは、大きな成長を感じさせられるものがあった。

この夏、髙橋宗杜は、日本クラブユース選手権グループステージの最終節、V・ファーレン長崎U-18戦で公式戦初ゴールを決めると、続いてのラウンド16、FC東京U-18戦では公式戦初先発。

そして、多くの試合が組まれる和倉ユースでは、多くのプレーの機会を得て、結果も残した。

時間が限られる途中出場では、得られなかった経験をしたことで、「メンタル的にも技術的にも成長を実感した」と語る。

「彼は本当に練習からもうずっと努力し続けてくれていて」「本当に努力できる選手。素直で取り組んでくれる選手」と長橋康弘監督が評するように、出場機会が少なくとも、日頃の練習でサッカーに向き合って、自身の中に、まいてきた種が、この夏で得た多くのプレーの機会という水や日の光を浴びて、芽吹き、そして、花が開きつつあるのだと思う。

後半4分、MF14岡田泰輝による追加点の起点となったのも髙橋宗杜だった。

DF4元木湊大の浮き球に、エリア外左へ抜け出す。胸でうまくボールをコントロール。味方の上がりを待った髙橋宗杜は、アウトサイドでエリア左へのパスを供給。それをおさめた岡田は、素晴らしい切り返しの連続で、大宮の守備陣を翻弄。そして、放ったシュートはゴール右へ決まる。

先制点のアシストへの返礼のような、メッセージのこもったパスは、最高の結果となって、表れた。

「本当にわくわくするんですよ」とシーズン当初から長橋監督が語る紅白戦で、コンビを組むことの多い岡田と、同時にピッチに立ったことも、いい相乗効果をもたらしていたように思う。


試合後、「今は自信に満ち溢れている」と目を輝かせて語るその表情が印象的だった髙橋宗杜。

「自分の力で今年はファイナル優勝させたいな、というのはあります」「自分の武器のフィジカルの部分を見せて、献身的に走って、サポーターに愛されるような選手になりたい」

出てくる言葉も力強く、自信が満ち溢れ、どんどんプレーをしたい。そんな自分を見てほしい。意欲がにじみ出てくるようだった。

また、練習が続いていく。そして、週末には新たな一戦を迎える。

この試合で得た2ゴール1アシストという結果も、さらなる自信にかえて、きっとさらに、花を開かせてくれるはずだ。

(文中敬称略)

【川崎フロンターレU-18 プレミアリーグEAST第12節 vs 大宮アルディージャU-18】
9月3日(日) 午後4時キックオフ Anker フロンタウン生田 Anker Field  晴れ 354人
前半1-0 後半2-0 計3-0

得点:髙橋宗杜2 岡田泰輝


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