天才雑誌デザイナー「メガネ」氏の仕事いくつか紹介

橘川幸生氏のこの文章がしっくり来たので、オレも書いてみます。クリエイティブ界の「スターを使っておけば何とかなるだろう」的発想が存在する、ということには完全同意でございます。

しかしながら、ここで述べたいのが、雑誌のエディトリアルデザイナーについてです。2001年から2005年まで、オレがテレビブロスをやっていた時はガッツリと一緒に仕事をしていた「メガネ」というデザイナーがいます。

メガネは、いつも目が死んでいて、覇気がまったく感じられず、ボソボソと喋る一般的には「コミュ障」と言われるタイプです。「ホント、メガネは目がいつも死んでるよね」と言うとぐでーんと死んだような目を突然大きくし、「ボ、ボクの目は生きてるゾー!」とか言い出すワケですよ。

いつもメガネには無茶苦茶なスケジュールでデザインをしてもらっていました。ブロスって6ページの特集に平気で20000字とかブチ込んじゃう上に、やたらと細かいラフ(設計図)を書くので、恐らくはデザイナー泣かせな雑誌だと思います。

こちらがラフを渡し、それを20分ぐらいかけて説明すると、メガネは「ハイ。ワカリマシタ。じゃあやっときます」とだけ言い、2日ぐらいすると見事なデザインが上がっている。その見事さというのが、私の好きなバカげたタイプの見事さなのですね。

細部に色々な遊びを加えている。「北斗の拳」特集ではページの右端にに「あたたたたたたたた」と入れるし、版元から「コマは自由に使っていい」という許可をもらい、「お前にもっと教えてやる」というページを作ったらメガネは冒頭にケンシロウによる「さあ来い、ハゲ」というコマを使う。カエル特集をやるにしても、カエルに「ゲロゲロ」とか喋らせる。

とにかく細部に宿るバカバカしさをメガネは徹底してくれました。性格がいいし、腕もいいので相当売れっ子ではあるのですが、まったくもってして「オレ、クリエイティブ」感を出さず、「○○さんと仲がいい」みたいなことも言わないし、徹頭徹尾職人風でいるところがオレはステキだと思うのですよ。だからこそ、今回の東京五輪のエンブレム騒動の広告業界デザイナーの気持ち悪い擁護のし合いと、余計な擁護をしたが故のネット民による詮索→炎上、というコンボが発動されてしまったのとは一線を画すメガネが好きなのです。彼には妙な「ムラ社会意識」ってやつがない。というわけで、メガネにデザインしてもらったページをいくつか紹介しましょう。まぁ、10年以上前のブロスなので、現役ブロス編集部の皆様、どうか許してください。

とまぁ、こんなデザインをしてくれる「メガネ」氏に久々に会いたくなりました。今度飲んでくれ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?