“猛暑で人気になるアイス、人気が落ちるアイス” 記事から考える「読んでもらえるネット記事の切り口」の基礎

ウェブメディアにおいて非常に重要なのはいかに集客力のあるサイトに大きく取り上げてもらい、そこからのリンクバックを獲得するか、というところです。ヤフー、LINE、グーグル、アップル、スマニュー、グノシーなど様々ですね。今、色々人生の棚卸的なことも考えているので昔のHDとか見ていたのですが、そういえば2010年頃、私は弊社のY嬢と共にWEBR25編集部に毎週日曜日に行き、「ヤフートップを狙う会議」というのをやっていました。

編集部の人達とアイディアを持ち寄り3時間ぐらいはああでもない、こうでもない、と議論し、「これだ!」というのを取材したりしていました。HDの中には「ヤフトピまとめ」というものがあり、ヤフートップに載った記事が10本入ったWordのファイルがありました。いずれも「あぁ、こういった切り口だったら今でも載るだろうな……」と自分なりには思います。私は基本的には会議に対しては懐疑的ですが(オヤジギャグじゃないぞ)、この時の会議は「ネットでウケるものが何か=人間が本能的に知りたいことは何か?」を徹底的に考えるのに良いトレーニングになったな、と思っています。

もうR25もメディア・シェイカーズの手を離れてしまっておりますし、この記事自体は多分ネットには存在しないので、そのうち1本を転載してみますね(当時の関係者の皆さん、スイマセン…。お許しを!)。当時の我々は「どんな記事だと読まれるか」を考え続けていました。そして、この時のセオリーは今でも通用するものになっていると思います。10本の記事のタイトルを見るとこうなっています。                           
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基本的には「今あるニュース」に対してどんな補足や裏事情を提供できるか、という観点に立っています。速報やストレートニュースはTV、新聞、通信社に勝てるわけがないので、そこを補完するメディア、ということですね。この件については11月10日、バズフィードの古田大輔さんが講師を務めた新聞社社員相手の勉強会(私も新聞社側として参加)でも似たようなことが話されていました。

「2500人の編集局員がいるところに我々のような45人の所帯が速報で勝負しても勝負にならない。新聞社と別のことをすることで読者に価値を提供したい」

そして、古田さんは人員もカネも新聞社と比べればネットメディアは少ないと述べました。その通りなんですよね。だからこそ全国の事件に記者を派遣するなんてことはできない。だったら、世間が関心のあるテーマに対し、いかに関連する話題を提供するかを考える。これってメディアに限った話ではなく、企業や役所だってそう考えるべきなんですよ。自社HPにアクセスしてもらうには、流行りの話題に関連した何を出すことができるか? そこを常に意識し、コンテンツを作る体制にならなくてはいけない。

R25の会議でなんとなく私もウケるコンテンツの法則は分かったのですが、それは以下が基本となります。

【1】メジャーなもの、人気があるものの裏事情/サイドストーリー

【2】二項対立への回答提示

【3】ニュースの中心にある人物と関係しそうな人々の思惑紹介

【4】何かが上がれば何かが下がる--今、泣いている人の声

【5】何かもてはやされているものには実はネガティブな面があるのか? の調査

【6】とある事象に対し、専門家の見解・分析

さて、それでは、上記10本の中から最も分かりやすいというか、ネット向きの記事「アイス」記事を紹介します。

↓ 以下本文

猛暑で人気になるアイス、人気が落ちるアイス

3日、赤城乳業は「『ガリガリ君』(各種)品薄状態についてのお詫び」を同社HPに掲載した。それによると、「この夏の猛暑の天候状況もあり、通常の販売数量を大きく上回る状況が続き、現在品薄状態となって」いるとのこと。現在、増産体制を敷いているが、未だに安定供給の確保には至っていないという。

確かに今年の夏は暑い。気象庁によると、2009年7月の平均気温は平年比-0.16度と冷夏だったのに対し、2010年7月の平均気温は平年比+1.42度。東日本では、同月下旬の平均気温が統計を開始した1961年以降、過去最高を記録したという。この暑さの中、絶好調なのは、ガリガリ君だけなのだろうか? 他にも好調なアイスはあるのか? 2009年7月と2010年7月のPOSデータを比較し、暑い2010年にこそ躍進したアイスクリームを調べてみた。データ出典は「日経POS情報サービス」である。

アイスクリームといっても、一箱に5~6本入っている<ホームタイプマルチアイス>のほか、<カップタイプ>、<バータイプ>などに区分される。POSのランキングに影響する総合的な販売金額(単価×売れた個数)でみると、上位は単価が高い<ホームタイプマルチアイス>が占める。

トップ20をみてみると、2010年に大躍進しているのは、

9位→2位 【ヨーロピアンシュガーコーンバニラ 56ml×5】(クラシエF)
11位→5位 【エスキモー パルムチョコレート 55 ml×6】(森永乳業) 
16位→9位 【ガリガリ君 ソーダ 65ml×7】(赤城乳業) 

の3つ。確かにガリガリ君はよく売れている。また、2010年のランクイン新顔は、

【カルピス アイスバー 45ml×10】(ロッテアイス) 
【ドール もりだくさんフルーツ 4種 24 ml×16】(ロッテアイス)
【モナ王 バニラ 100 ml×5】(ロッテアイス)

の3つであり、「さっぱりとしたアイス」(モナ王)、「後味スッキリ」(カルピスバー)、「ジューシーなアイス」(もりだくさんフルーツ)と、おおむね「スッキリさっぱり」味が人気となっていることがうかがえる。
(※それぞれのアイスのキャッチコピーは、メーカーHPによる)

ちなみに、ランク外になったのは

7位→26位【爽 ソーダフロート味 氷菓 カップ 190ml】(ロッテアイス)
18位→29位【マルチパック バニラ・グリーンティー・ラムレーズン 75 ml×6】(ハーゲンダッツ)
20位→22位【宇治金時 70ml×6】(明治乳業)

「こってり系」がランクを落とした形になっているが、ハーゲンダッツでは、【ミニカップ マルチパック バニラ・クッキー&クリーム・ストロベリー 75ml×6】も10位から14位とランクを下げている。高級感があり、濃厚な味わいというイメージがある同社製品ホームタイプは、他製品より単価も高く、猛暑でスッキリとガンガン食べたいというニーズには不向きだったのかもしれない。

ちなみに両年とも売り上げNo.1は【井村屋 あずきバー 65ml×6】である。

■関連リンク
・「ガリガリ君」(各種)品薄状態についてのお詫び-赤城乳業
http://www.akagi.com/whatsnew/222010123178.html
・日本の月平均気温平年差(℃)-気象庁
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/temp/list/mon_jpn.html

ネットニュースやっているからには、日々の刹那的なPV稼ぎをするということに追われがちですが、古田さんが言ったように、「いかに読者に価値ある情報を提供するか」を考えなくてはいけないのでしょうね…。「マスゴミ」なんて言われることもあるし、次から次へと出てくるウェブメディアの中で生き残るのは本当にしんどいしんどい。でも、それをやらなくてはいけないんですよね……。

以下写真は、R25ではなく、アメーバニュースだったのですが、「中国のパクリ問題」がしきりと報じられた時に「中国にはハンバーガーとフライドチキンが食べられる通称“マクタッキー”があった!」という第一報を中国在住のライターに書いてもらった時に彼が添付した写真です。これもすごくアクセスは多かったですね。読んでもらうには、画期的発想よりも地道に「流行りものの研究」「人間の欲望」を理解することが大事なんだろうなァ……とこの頃(2006~2010年)思っていました。それでは皆様良い秋をお送りくださいませ。

あと、前回有料noteを買ってくださった皆様。本当にありがとうございました。とても嬉しかったです。


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