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外資系翻訳あるある・番外編・直訳か、意訳か

去年外資系翻訳あるあるを楽しんで書いてた頃は、今の仕事を始める直前だったんですね。

現在は mmhmm という会社で働いています。ビデオを使ったコミュニケーションをリアル以上に楽しく、わかりやすいものにすることをお手伝いするアプリを作っている会社です。

クローズドのベータ提供から 1 年が経ちましたが、現状 mmhmm は英語と日本語のみで展開しています。Windows 版はまだ英語ですが…、Mac 版、そしてウェブやメールなどのマーケティング系、サポート系も日本語化してあります。この夏の間には 12 言語展開になる予定ですが、日本語については特別扱いで、ベータ版の時から一部日本語化していたのです。

日本市場をこんなに重要視するスタートアップはなかなかなくて、本当にありがたいです。昨日、現在 mmhmm の仕事をしているのは世界中で 75 名とフィルが言っていて、「そこまで増えていたか!」とびっくりしましたが、とはいえまだまだ日本・アジア太平洋チームは小さいですから、マーケティング、コミュニティ、サポート、翻訳など、なんでもやっています。大変ではありますが、会社がどういうことをやっているのかの全体が見えるので、とても充実した日々を送っています。

自分が翻訳をしているので、翻訳あるあるに書いてあるような変なことに mmhmm で出会ったということはないはずですが(笑)、もしおかしなことを発見しましたら、ぜひお知らせください…。

さて、今回のタイトル、直訳でいくか、意訳でいくか、という問題。これは好みもあるので、必ずしも正解のない話です。

これは私の個人的な意見ですが、自分の場合、場合によって若干スタンスを変えて翻訳している気がします。

意識的に直訳にしようとしているのは、「リリース」と「動画の字幕」です。リリースを訳すときというのは、通常、本社の広報が作成した承認された文章を訳すわけです。言葉の取捨選択、話す順序、ストーリー含め、議論に議論を重ねた上で紡ぎ出され(と信じたいw)たはず。なので、その意図を汲み取った上で、できるだけそのエッセンスをそのまま伝えたいと思うわけです。

一方で、リリースはそれを見るメディアの方や消費者のみなさんが理解できなければ意味がありません。例えば私がプロダクトマーケティングの担当であれば、原文から若干逸脱して意訳をしたり、日本市場により合った内容に書き換えることもありますが、翻訳者として関わる場合にはできるだけ原文に沿って訳すようにします。

そして、動画の字幕。実は mmhmm で「mmhmm Summer」というオンラインイベントをやっていて、かなりの数の動画に字幕をつけました。

「別にそんなこと気にしなくていいじゃん」と言われそうなのですが、私はできるだけ英語の順番で訳したいと思ってしまうんです。なぜなら、英語で話している映像を見ている時、音は英語で耳に入ってくるので、それに対していいタイミングで日本語が表示されているほうが優しいと思うんですよね…。

英語が全くわからない!という人は完全に聞き流しているのだと思いますが、私は英語を聞きつつ字幕も見るタイプなので、そのタイミングが全く別になっていると頭の中がごっちゃになってしまうのです。

日本語で考えたときには順序がいまいちおかしいな、と思われることもあると思うんですが、英語での思考順序を理解できるようになると、英語の理解にもつながるような気がするんですが、それって考えすぎでしょうか。

なので、mmhmm Summer などの字幕を見てもらったときに、「字幕のタイミングがいいので、これは英語の勉強にも使える!」と思っていただけたら嬉しいです(笑)。

思いが強く入った文章(CEO のメッセージなど)は、本当に細心の注意を払わなければなりませんね。一語一語の単語がどう選択されたかが重要なのと同時に、伝えたいメッセージを正しく理解してもらわないといけない…。意訳であり、直訳でもなければいけない…。

結局のところ、意訳とか直訳とか分けてる時点で楽をしてるんだと思います。原文を大切にしつつ、意図をいかに伝えるか。翻訳の醍醐味はそこにあるんだろうなあ、と改めて思った次第です。

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