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私の履歴書: Apple 編 (その 4)

前回までの Apple 編: その 1 その 2 その 3

一旦ホールドになったオンラインストアでしたが、やるとなったら早いもので、とにかく集中的にすべてがドラスティックに動きました。当初このプロジェクトが始まった時にいた二人は戻ってこず、基本やるのは自分一人。もちろん上司はいましたが、社内で関わる人が多岐に渡っていて、一体どういうことをやっていたか詳細を思い出すのは今となっては不可能…。

まずはローンの時にも書いた通り、クレジットカード会社、ローン会社、銀行の選定、そしてこれはもちろんファイナンスのクレジットチームとのやりとり多数。コールセンターの設置についてはサポートでお世話になっていた会社にお願いすることになり、ここはサポートチームとのやりとり。個別配送に向けて既存のサプライチェーンをどう変えるかについてはオペレーションチームとのやりとり。社内の基幹システムとウェブのフロントエンドとの繋ぎ込み部分のテストなどは IT 部門との密接なやりとり。そしてフロントエンドは文言、UI のローカリもして、US のストア開発部門とはストアスタート後もかなり頻繁に連絡をとってやりとりしていたような気がします…。まあ、やりとり、と書いてみたものの、どう考えてもほとんどはお願いというか、ストアを始めるためにこういうことが必要です、というお願いばかりだったと思います。

オンラインストアのシステムは WebObjects という自社製品で作られていて、仕組み自体は素晴らしかったのですが、ストア自体はカタログをいじるメンバーが非常に限られていることもあり、かなりクセのあるシステムでした。というか、要は、マニュアルもないのに落とし穴がたくさんあるシステム(笑)。パズル好きな自分としては、この曲者を使いこなすというのは、けっこう楽しい仕事でした。UAT も何度もビジネス側の代表として参加しましたが、この経験のおかげで、様々なシナリオを考えることや、バグを発見するという能力を身につけることができたと思います。その後の社会人生活で非常に役立っている能力ですね。

さらにはプロダクトマーケティングチームとは、実にディープなつながりを持つことになりました。店頭で販売されているモデルなら値段は 1 モデルについて一つだけつければいいわけですが、ストアの CTO 製品はパーツレベルで価格を設定しないといけないわけです。さらに言うと、パーツを積み上げていって、店頭で販売されるモデルの価格とも整合性がとれないといけない…、さらに言うと、パーツレベルでフォアキャストもしなくてはいけない…、これはなかなかのチャレンジでしたね。巨大なエクセルシートを見ながらのミーティング、楽しかったなぁ(笑)。

オンラインストアにフルタイムの時間を使っていたのは、当時のアップルジャパンでは私一人しかいなかったわけですが、一人ですべてをやったなんてもちろん思っていません。それどころかほとんど自分は何もしていなくて、みんなに忙しすぎて可哀想だと思われたのでしょう(笑)。本当に助けてもらった、みんなで作り上げた、という感じでしたね。

新卒の私にこの仕事がアサインされたのは、今考えると理解できるような気がします。特に専門分野を持っているわけではないけれど、そのお陰で現状を変革することに対しての先入観がない、そして各部署を研修で回ったことがあり顔は知られているし身構えられたりしない、そして経験を考えるとみんなで助けてあげないと回らない、仕方ないなー、という感じでしょうか…。

1999 年のマックワールドエキスポ東京でこのストアのオープンは発表され、ついに日の目を見ました。オープン後はストア運営をそのまま担当することになり、社内では「店長」と呼ばれるようになりました(笑)。



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