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視座向上に欠かせない視点とは?

今月初めのnoteでは、責任者、当事者意識、自分ごと化の違いについてご紹介しました。
同様に、以前から変わらずご相談の中で多いお悩みの一つが「部下の視座の低さ」に関するものです。

例えば、以下のような声を経営者の方からよく耳にします。
「会社全体で起きていることを自分事化していない」
「言われたことに対して真面目に取り組むものの、3年後、5年後を見据えた活動ができていない」
「自部署のことしか見えておらず、会社全体を俯瞰して経営視点で物事を捉えられていない」
「何ができるかより、できない言い訳を並べ立てる」

「社長と副社長の距離は、副社長と運転手の距離よりも遠い」

元帝人社長・大屋晋三氏

この言葉の通り、特に社長という立場に関しては語り草のようにその視座の違いが語られています。

さて、「○○の視座が低い」という言葉は多くの場合自分より下の階層にいる部下の資質や能力に原因があるように言われることが多いと感じます。

自分は幅広くものを見ていると思っている社長であっても、経済同友会のような業界全体を束ねる人からは、「あの企業は自社の利益ばかりしか見えていない」と揶揄されることはあります。
また、同様に天下国家を考えようとしていない産業界に対して、「自分たちの業界のことしか考えていない」と憤りを覚える政治家や官僚の方たちの姿に、何度か遭遇したことがあります。

部下の側の「視座の低さ」は当人の資質、能力の課題ではなく、別のものが要因であるとすると、それは何でしょうか?

それは、「上司の側」の器と視座、そして、「ヒエラルキー型の組織構造」が視座の違いを生むということであると考えます。
このポイントについて、2回に分けてそれぞれ簡単にご紹介します。


1.「上司の側」の器と視座

仮に部下がその上司よりも高い視座を持ち合わせた場合、自分より「見えていない」「わかっていない」上司についていきたいとは思わないでしょう。
それでもついていきたいのは、その上司の人としての「器」の大きさに惹かれている場合にのみそうなり得ます。
器も小さく、視座も低いという上司に対しては、端的に言うと「つまらない」「成長できない」と部下は感じ、異動や退職という形で職場を去っていきます。
そうして視座の高い部下が職場からいなくなることによって、残るのは視座
の低い部下ばかり、という状況になっていきます。
残った部下も、上司の器の小ささによって展開される甘えの構造と、上司の視座の低さによって出される指示のレベルの低さによって鍛えられる機会がなく、結局視座も育たないということが起こります。

2.ヒエラルキー型組織の階層構造

(1)「社長と副社長の距離は、副社長と運転手の距離よりも遠い」を生み出す構造

社長という最終意思決定者であり、「答えのないところに答えを出す」プレッシャーは、社外有識者との交流機会や議論、様々な研鑽を重ねることの衝動へと変わっていきます。
そうして培われ磨き上げられた社長の視座には、社内で誰も歯が立たない、という状況が出来上がります。

(2)圧倒的な視座を持つ社長による視野狭窄社員の生産

そして、社長と周囲との視座のギャップは、「打っても響かない」部下に対する社長の苛立ちとともに、矢継ぎ早なトップダウン指示と朝令暮改な施策の展開となり、そのことが、部下を”How”思考に終始させることになります。その構造が繰り返されることによって、「視野狭窄社員」を生産し続けることになるのです。

解説の詳細はHPにも記載しておりますのでご覧ください。
https://www.authentic-a.com/case03

視座の違いは部下の側の能力や資質ではなく、上司の側の器と視座、そして組織構造によって生み出されているということをご紹介しました。
では、今回のタイトルにもなっている視座向上に欠かせない視点とは、いったい何なのでしょうか。

視座向上に欠かせない視点

それは、自分の責任範囲をどう捉えているか、そして、自分の影響力についてどのように認識しているか、という点にあると考えます。

まず、「視座が低い」と言われてしまう人の共通点は、
「自分の責任と権限の範囲内のことを考えることに終始している」
ことであるとみています。
自分に与えられた責任を全うしようとする姿勢は、これ自体は問題ではないのですが、大きな副作用を伴います。
それは、自分が影響を与えている、または、与えうる範囲を限定しやすくなるのです。

それに対して、「視座が高い」といわれる人は、自分の責任と権限を越えた範囲を超えた物事に関心を寄せ、『自分は影響を与えうる力を有している』という視点に立っているという点に違いがあると考えます。


自分の影響力を「脳内地図」の範囲を超えて認識することができるかどうか?
この点が視野向上に向けた第一歩ではないでしょうか。


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