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また手を伸ばして ‐From another sky‐

皆さんお久しぶり(もちろんはじめましても)です。

前提としてこちらの記事ではこのツアーの意図であったり、バンドの紹介等については割愛させていただき私的な感想や考察を書かせてもらいたいと思っています。

さて、自分はGRAPEVINEのファン歴はもう20年以上と長いのですが、実はライブに参戦した回数は本当に少なくてファンを名乗るに恥ずかしいレベルなんです。

1回目は「CURRY'S SOUNDTRACK」ツアー最終日のZepp東京で、2回目が「沈黙の臓器」ツアーの旧渋谷公会堂でのライブのみしかありませんでした。どちらも相当前のツアーなので今回の参戦は本当に楽しみで仕方なかったです。

前述した通りこの「ANOTHER SKY」がリリースされた時のツアーを初めて行っているので余計にこのアルバムに対する想いも強かった為、コロナ禍ではあったけれども行く決心をしました。

前置きが長くなりましたが、その期待に胸膨らませて参戦した感想を稚拙な文章ではありますが書いていきますので宜しくお願いします。


『マリーのサウンドトラック』

このスタートは想像出来る(当たり前か…)のだが、当時のツアーでは田中さんはアコギで歌っていたせいか、今回のテレキャスで始まる音は少しひんやりとした冷たい印象でした。
且つ青く薄暗い照明と金やんの無機質なマラカス、そして徐々にギターやシンセやドラムが入ってくる流れがひんやりとした雰囲気と奇妙にマッチしていたのを覚えています。
そしてサビで奏でられる一瞬不協和音にも聞こえるコード感が、異世界へと誘う…いや、引き込まれる程の世界観を創ってしまう迫力に圧倒されてしまった。そして盛り上がりからブレイク部分を経て、またギターと歌だけの静寂な世界へ引き戻される。
まさにアナザースカイへの入り口に相応しい始まりだとこの1曲で感じました。

『ドリフト160(改)』

余韻に浸る間もなくあのブリッジミュートのリフが聞こえて来る。
「来るぞ!」と身構えていてもやはり格好良さに痺れてしまうこの曲は、メインのコードは2つしか使っていないのに各パートのアレンジでそれを感じさせないのがまた凄い所ですね。
サビ裏でコーラスしている「Isn't real love?」は当時はアニキが生声で歌ってたけど、今回は金やんがボイスエフェクトをバリバリに掛けて歌ってた。そこにまたバンドの成長や面白みを見出だせるので楽しめる要素が沢山あるなと実感。そして「大人になった今さっき〜」のアニキのコーラスが当時から好きで、今回も同じだったから思い出とも重なって嬉しさ倍増だった。
しかし相変わらずこのベースラインは秀逸ですね。曲の半分を構成していると言っても過言ではない位に屋台骨を築いています。

『BLUE BACK』

ギターが鳴ったその瞬間からハイになれるこのアルバムの中でもトップクラスのアッパーソング。しかしながらリーダーが作曲した最後の作品でもあるので物悲しさもふと過るかも知れないと思ったが、もうテンションはいきなり最高潮。
亀ちゃんも憎い位に緩急をつけて盛り上げてくれるので自然と身体が動いてしまう。そして何より田中さんが「この曲好きなんだろうな〜」と見てて分かる位に楽しそうに演奏してたのが印象的だった。メチャメチャステップ踏んだりシャウトしたりしてるのは本編ではこの曲位でした。
田中さん→西川アニキのギターソロ繋ぎも色々な曲で定番化してるけど、この曲でも格好いいのが聞けて満足でした。

『マダカレークッテナイデショー』

今回のツアーグッズのモパサンの出処(?)になった曲。そして歌詞のなかで一流のエンターテイメント作家であるモーパッサンを作品ごと料理した、ある意味田中さんのエンターテイメント精神が爆発した遊び心溢れる歌詞。
もう楽しくない訳がない。お決まりのラスト金やんのベースソロまでやってくれて嬉しかった〜。何となく再現ライブだとベースソロ無しかな…とか少し不安だったけどそれは杞憂でした。しかしこの曲は通常のツアーでもよくやるお馴染みな曲って事もあって安定感抜群で、ベースソロ中とかみんな伸び伸びと演奏してて見ていてこっちも笑顔になりました。

『それでも』

この曲は数あるバインのバラードナンバーの中でも影が薄い存在(?)と思っているんですが、実際に聞くとスーッと心が洗われて至福の時間を体験出来ましたね。
そしてまたサビの「また〜…」から奏でるアニキのギターフレーズが堪らなく好きで、原曲通りに弾いてくれて泣きそうになったし、中間部分の「海にで行きましょう」ではファルセットを最後まで歌い上げて気持ち良かった。当時は確か「行きまし〜」みたいな感じでフェードアウトしてた記憶があったから、その違いも楽しめたし良さを再発見出来た。

『Colors』

ライブ化けする曲として当時から認識していたけれども、その認識は誤りではなかった。当時、田中さんは手元にボイスエフェクトを配置してアウトロで「未成年」や「Colors」って歌いながら声色を変えてたんだよね。確かそのツアーから手元の台が定番化した記憶が…。
今回もテンポは少し遅めでタイトル通り色とりどりの景色を見せてくれました。3/4拍子でここまでワルツっぽくなく身体を揺らしながら聞けるって結構凄い事だと思ってるけど…そんな事ないかな?
あと、余談ですが歌詞は本人も言ってるけど端的に童貞の色恋沙汰の内容なのに、こんな抒情的に比喩されるともはや短編小説を読んでいる気分になれますね。

『Tinydogs』

前回ツアーのオープニングナンバーをこの位置で聞くとどう感じるか…と考えていたけれど結局「やっぱり格好いいわ!」となってしまう。実はこれCDで聞いている段階ではそんなに印象に残ってなかったんです。でも実際にライブを見てこの曲を浴びたらもう虜ですよね。
浮遊感のあるコード進行で淡々と進んで行き、サビに入ってもそこまで開放されるかされないかギリギリの感じで幕を閉じるこの感覚がアニキ作曲の真骨頂かなと思いますね。この全体的な曲の「不穏さ」と「奇妙さ」が同居しつつ最終的には「So cool!」となるのはバンドアレンジでタイトに引き締められたからだと思うので、各々の作曲センスも宛ら全員のアレンジ力も相当なポテンシャルなんだと再確認出来る曲でもありました。個人的に惜しかったのが、イントロの田中ギターリフは今回のテレキャスでなく当時のジャズマスターの方が枯れたサウンドで合ってたなぁ〜って思っただけです。

『Let me in〜おれがおれが〜』

これも「マダカレー…」に匹敵する言葉遊びの過ぎる(?)ぶっ飛び曲ですが、これは実際に田中さん本人もインタビューか何かで回答していた様に韻の踏み方が下手なジャパニーズラップよりも上手いのがまた面白い。
あと、Aメロの進行がA→G#→G→F#と普通に半音階ずつ下がって展開されていく手法がバインではありそうで無かったので(ルートだけ半音階とかはよくある)潔くて格好いいなと素直に思えました。
そう言えばイントロのアニキのギターフレーズがひらすらF#のオクターブ奏法だったのでそこが少し違和感があったかな。でもギターソロは円盤に忠実な感じだったし、きっとその時その時の感覚で合うフレーズを探求してる感じもあってギタリストとしての引き出しの多さに敬服でした。

『ナツノヒカリ』

これは田中さんの歌い方がどうかな?って気にしてたんですが、(自分的には)当時の歌い方に寄せてくれていて何か初ライブの感じを回顧出来て良かったなと思いましたね。
何気にこの曲はベースとキーボードが全体を通していい味を出していて、それをあの2人は自分流に変えれるのに、それをせずほぼそのまま原型を留めてくれている金やんと勲助教授にも感謝ですね。みんなで奏でるコーラスワークも清々しかったなぁ。ちょっと赤面しそうな詞と曲だけど、今歌っても違和感ないスレスレな若気の至り感(?)がまた当時の記憶をくすぐってくれました。

『Sundown and hightide』

実はこの曲がこのツアーの中で1番聞きたかったと言っても過言では無い曲なんです。何故かと言うと、当時のツアーではアルバムに収録されていながら自分の参戦したライブではやらなかったんです。当時のツアーセットリストを別の日で確認したら普通に初日からしばらくは演ってたんですよね。
まず曲がすごく正統派で格好いいのに歌詞が卑猥なものを連想させるギャップがかなり良くて、何でこんなにも注目度が低いんだろうと疑問に思っていました。でもこの日この曲の演奏を目の当たりにした全員感じたと思いますが、サビの突き抜け感が半端ない位カッコよくて、それを担っているのが勲助教授のコーラスだと思ってます。本当に鳥肌が立つ位にゾクゾクしたのを今でも鮮明に覚えてます。あとアニキギターが全て良くて亀メロとの相乗効果抜群だなとずーっと浸ってました…と言うか溺れてました。

『アナザーワールド』

これは説明不要のいつ何時演奏されても泣けるやつ!なので、イントロから既に心を鷲掴みにされてしまいますよね。これも泣ける亀メロと抒情的な田中詞が上手くマッチした上にアニキのスライドギターが来ればもう昇天してしまいます。
個人的考察になってしまうけれど、リーダー不在の世界を嘆いた歌詞にも見えるし、リーダーが戻ってきてもうあの時には戻りたくないと書いた風にも見えるので様々な感情が見え隠れするので本当に名曲だなと思います。そしてこの曲を敢えてアルバムのラストにしなかったのもまたバインのセンスなのかな。

『ふたり』

ここで驚きました。
何がって?キレイにふたりが演奏されて残響の余韻を感じつつ本編終了なんだなぁ〜…って思っていたら、何かおかしい。まだ弾いてるぞ…え?何が始まるの?愁眠!?みたいに自分も周囲もザワザワしていました。
その直後にふたりの優しいコード進行から一転、不穏なマリーのサウンドトラックのサビのコードに持って行ったのは真面目に予想外&予想以上でした。
もう一周始まるのか?と思う位の熱量で延々と演奏していく5人にただただ圧倒されていました。特に亀ちゃんのドラムが鬼気迫るような感じで叩いていたのであっという間に引き込まれていましたね。
そしてマリーのアウトロが終わった瞬間にこの「Another sky」から抜け出した!と思えた瞬間でした。本当にラストに全て持って行かれました。
感動。


こんな感じでライブ中は楽しんだり懐古したりしながら過ごしていました。
第二部も書こうかと思ったんですけど、本編がこんなにグダグダで長いので、こちらの反響次第で第二部も予定しようかと思います。

最後に、何故アルバム名が「アナザースカイ」でトラックの曲名が「アナザーワールド」なのかを根拠のない考察で締めたいと思います。

自分的に、曲のアナザーワールドはバイン自身の事を書いていると思っているので「もう1つの世界」と捉えるのが妥当だと思います。もちろん世界が変われば仕組みもスタイルも変化してしまうので、良くも悪くも変わった事を受け入れなければと葛藤している様だと思います。

では、アルバム名のアナザースカイは我々リスナー目線でのタイトルなのかなと考えました。空はどこに居ても基本1つなので「違った空」と解釈すれば、メンバーが変わろうがどうだろうが同じ空(バンド)を見ている。となるのではないかと考えました。なのでバンド内は大きな変化で大変な事になっているけれど、君たちは空の移り変わりを眺める様に見ていて欲しいと願いを込めたのならば、何か素敵だなと勝手に考えています。

毎度毎度、取り留めのない文章に付き合って頂きありがとうございました。

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