見出し画像

企業結合

第4 企業結合

→企業結合とは、合併、株式取得、役員兼任、事業譲受など複数の企業が組織法上の手段によって結びつくこと。これらが行為要件となる・9条及び11条→一般集中規制→市場集中は生じていないが、経済全体としてみて、特定の企業や企業グループに経済力が集中している。
・市場集中規制⇒特定の商品・役務の市場における経済力の集中(競争の実質的制限の合理的蓋然性)を個別に規制する。
→会社の株式保有(10条)、会社の役員兼任(13条)、会社以外の者による株式取得保有(14条)、会社の合併(15条)、会社の分割(15条の2)、共同株式移転(15条の3)、事業譲受等(16条)、脱法行為の禁止(17条)
→以上において、①一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合、②不公正な取引方法によるものである場合、に禁止される。

1 結合関係(の形成、維持、強化)結合関係について、「複数の企業が株式保有、合併等により一定程度、または完全に一体化して事業活動を行う関係」を結合関係という。
→結合関係が「形成・維持・強化」されることにより競争を実質的に制限するおそれが生じる場合には、企業結合が禁止される。
→株式保有等について①議決権保有率10%以下で役員選任なければ非結合。②10%かつ3位以内、③20%超かつ単独筆頭株主、④50%超ごとに結合あり。
・水平型企業結合⇒同一市場内で構想関係にある会社間の結合、競争相手が減ることになるので直接的な効果がある。
・垂直的企業結合⇒取引段階を異にする会社間の結合。効果は間接的
・混合型企業結合⇒異業種・多地域間の企業結合。効果は小さい。

2 一定の取引分野
⇒「一定の取引分野」は企業結合により競争が制限されることになる否かを判断するための範囲を示すものである。これは、一定の取引の対象となる商品役務の範囲、役務、取引の地域の範囲(地理的範囲)等に関して、基本的には需要者にとっての代替性という観点から判断される。また、必要に応じて供給者の代替性という観点も考慮される。
⇒他の商品又は地域への振替の程度が小さいために、当該独占事業者が、価格引き上げにより、利潤を拡大できるような場合には、その範囲をもって当該企業結合によって競争上何らかの影響が及びえる範囲ということになる。

3 競争を実質的に制限することとなる
「競争を実質的に制限する」とは、「市場が有する競争機能を損なうこと」であり(多摩談合)、「市場支配力の形成・維持ないし強化」である(NTT東日本)。
「こととなる」とは、企業結合により、競争の実質的制限が必然ではないが、容易に現出しえる状況がもたらされることで足りるとする蓋然性を意味する(実質的制限の合理的蓋然性)

(4類型)
①水平型における単独行動による競争の実施的制限の蓋然性

(百45 水平型企業結合 新日鉄合併事件)
「競争を実質的に制限することとなる場合」とは、①当該合併によって、市場構造が合併前と比較して非競争的に変化し、特定の事業者が市場における支配的地位を獲得することとなる場合をいう。②しかして、ある事業者が、市場を独占することとなったり、あるいは取引上、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右しうるかをもつこととなり、③これによって、競争事業者が自主的な事業活動を行いえないこととなる場合には、④右の特定の事業者は、その市場における支配的地位を獲得することとなるとみるべきである。

②水平型における協調的行動による競争の実質的制限の蓋然性
⇒当事者グループが競争者と協調して価格を支配する場合。実質的制限の合理的蓋然性、(阪急・阪神など)競争者の単位の変動、過去の競争の履歴

③垂直型における単独行動による競争の実施的制限の合理的蓋然性
⇒当時会社グループ間でのみ取引することが有利になるため、事実上他の事業者取引の機会が奪われ、当時会社グループ間の取引部分について閉鎖性・排他性の問題が生じる場合がある。

④垂直型における協調的行動による競争の実施的制限の合理的蓋然性
⇒たとえば、メーカーと流通業者との間に垂直的企業結合関係にある流通業者を通じて、当該流通業者と取引のある他のメーカーの価格等の情報を入手しえるようになる結果、当時会社グループのメーカーを含むメーカー間で協調的に行動することが高い確度で予測することができるようになる場合がある。
4 問題解消措置→失われる競争を回復する措置
→当該企業結合により、独禁法上の問題が生じる場合、すなわち一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合にも、当時会社が自発的に一定の適切な措置を採ることにより、独禁法上の問題が解消し、当該企業結合を認めてもよい場合がある。
 事業譲渡など「構造的な措置が原則」 単独の解消に情報遮断措置はしなくてよい。

(百46 水平型企業結合 新日鐵・住金合併事例)
「本件合併により当時会社は約55%の市場シェアの格差も拡大することとなるとした。したがって、A社の供給余力の状況、輸入圧力の程度や需要者からの競争圧力の程度によっては、当時会社グループが単独で価格等をある程度自由に左右することができる状態が現出するおそれがある」
 また、「本件合併により無方向性電磁鋼板の国内市場における事業者数が3社から2社となることから、各事業者の供給余力の状況、輸入圧力の程度や需要者からの競争圧力の程度によっては、当時会社グループとその競争事業者が協調的行動をとることにより、書かう等をある程度自由に左右することができる状態が現出するおそれがある。」
※協調的行動→当事会社グループと競争者と協調して価格を支配できる力の形成・維持・強化 参入、隣接市場、ユーザー、輸入、競争者の供給余力
※正当化事由の範囲狭い

(百45 水平型企業結合 新日鉄合併事件)
「独占禁止法15条1項1号にいう、「競争を実質的に制限することとなる場合」とは、「①当該合併によって、市場構造が合併前と比較して非競争的に変化し、特定の当事者が市場における支配的地位を獲得することとなる場合をいう。②しかしてある事業者が、市場を独占することになったり、あるいは取引上、その意思である程度自由に、価格、品質、数量その他各般の条件を左右しうる力を持つこととなり、③これによって、競争事業者が自主的な事業活動を行えないこととなる場合には、④右特定の事業者は、その市場における支配的地位を獲得することになるとみるべき」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?