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Illustrator作業工程 イラスト「ああプランタン無理もない」のできるまで。

Illustrator練習用イラストの製作工程です。
前回に続いて歌をモチーフにしたシリーズより「ああプランタン無理もない」となります。
ご存じない方もいるかも知れませんが、好きな歌なもので、選びました。

この歌は昭和28年発表の、いわゆるラジオ歌謡です。
作詞サトウハチロー、作曲中田喜直
ラジオ歌謡というのは、NHKで放送されていたラジオ番組のタイトルであり、そこで発表された数々の歌の総称でもあります。

歌ったのは藤山一郎と松田トシの男女デュエット。
藤山松田松田藤山の順で一番づつ独唱しています。
その後もたくさんの人がレコーディングしていますが、ダークダックスやボニージャックスのようなボーカルカルテットが歌っているのも好きですよ。
ぜひ一度聴いてみてくださいね。

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さて今回は最初にしっかりとしたイメージを決めていません。
部分を描きながら全体を決めていこうという作戦です。
あまりそういうことはしませんが、練習ですので面白いかなと。
そんな工程も見ていただきましょう。

とりあえず絵の中心を決めます。
二番の歌詞から「宵です人待つバルコニイ」のシーンで行ってみましょう。

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バルコニイで人待つ女性です。
左にあるのは腰掛け。

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バルコニイの手すりに頬杖をついている様子。

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お洋服に柄をつけまして、腰掛けに座ったところ。
腰掛けの高さが足りませんが、この辺は隠れる予定なのでこのままで。

「プランタン」とは、フランス語で「春」という意味だそうです。
猫が騒ぐのも、影がもつれるのも、眠いのも、吐息も、もだえるのも、とにかく春なのだから無理もない、という歌です。

さて、バルコニイと、建物の下書き。

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今のところ色は暫定で、ほぼ直線、四角、丸。

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屋根はスペイン瓦っぽいのを重ねて変形しました。

この歌自体が、いつの時代のどんな場所をイメージして書かれたのか判りませんが、少なくとも、昭和28年の日本的風景ではないように思えるので、今回のこの絵も、何処とも知れない何時とも知れない、なんかそんな感じにしたいなあと思っているのですが、どうなるでしょうか。

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瓦の色をいろいろに変えました。

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壁灯です「ゆれますほのかな灯りです」

壁に付けてみたら、大きさの割に細かく作り過ぎたかもしれません。
やりなおすかも。
そもそもこの歌詞が窓からの灯りの事なら壁灯はいりませんけど。


合わせてみると瓦が大きいようなので、少し小さくして数を増やしました。

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とりあえず出来たものを合わせてみましょう。
手すりを白くして、屋根全体にグラデーションをかけました。
今回は程よくグラデ使いたいと思います。

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一番の歌詞冒頭「猫です今夜もセレナーデ」です。

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こういうのを描きましたが、
もう少し絡ませようという事で、

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白い方を変えまして、重ねて屋根の上。

春だから無理もない。

一番の歌詞から「月です眠くておぼろです」

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今回は顔付き。
眠そうなお月さんをわりと大きめに入れて、絵の上の方のスペースを担ってもらおうと思っております。

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さて左側をどうしましょう。

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ところで、ラジオ歌謡という番組は、昭和21年から37年までのおよそ16年間に845曲の歌が放送されたという事です。
10分番組で一曲を週5回放送するという形式だったそうです。

レコード化されたのは全曲中一割ほどのようですが、現在まで親しまれている歌も多くありまして、「朝はどこから」「森の水車」「さくら貝の歌」「雪の降るまちを」「白い花の咲く頃」「山小舎の灯」「黒いパイプ」などがあります。

戦前の「国民歌謡」という番組が前身になりますが、国民歌謡の当初の主旨である「家庭で歌える流行歌を放送局が独自に作る」というものが、時代の中で次第に、戦意高揚、国策プロパガンダ的色合いを強くしていきます。
戦後になって再び初心に立ち返って始められたのが、この「ラジオ歌謡」という事ですね。
テレビの時代になると「みんなのうた」にその精神は受け継がれ、今に続いている、というわけです。

さて、左側どうしましょうかね。

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歌には出てきませんが、桜の木を描いてみましょう。

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日本的な風景ではないと言っておきながら、春といえば桜とは。
我ながらこのイメージの貧困さはどうでしょう。

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出来上がりもなんかつまらないですね。

保留。


左に塀を描きましょう。

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レンガ塀にします。
パースを付けて湾曲。
湾曲はエンベロープツールのワープ(円弧とかアーチとか)で。
後ほどここに影を映します。
一番の歌詞「影です人ですもつれます」の影です。

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これは塀の下の道、石畳風。

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組み合わせて変形。

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桜の木をなんか変な形にしました。
道と塀、塀の向こうに桜。
背景の色は見えやすくする為にとりあえず。

蔦の葉風のものを。

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塀の上になんとなくアクセントみたいなものがほしいかな、と。

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男女の影。
これがもつれる訳ですが、まあ今日のところは上品にこの程度で。
色を薄くして乗算で重ねると壁の模様が透けて見えます。

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こういう葉っぱと、鉢植えを作りまして、バルコニーの内と外に。

すきま恐怖症になっているのでしょうか。
ごちゃごちゃしてきましたぞ。

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とか言いながら、家の向こうに並木をいれるつもり。

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こういった木を作りましたが、

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やっぱりごちゃごちゃするので、結局単色でシルエットにしましたとさ。

空の色を決めて、
とりあえずここまでの所。

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さて、空いたスペースには。

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遠くの家並みを入れてみました。

四番の歌詞冒頭「音ですなやましサキソフォーン」

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このお家を塀の向こうに置きます。
夜に屋根でサキソフォーンを吹く男。
近所迷惑な話ですが、でも春だから無理もない。

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色を調整して、シルエット的に。

三番冒頭「もやです悲しいスーベニア」

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スーベニアとはお土産とか贈り物と言った意味だそうですが、思い出や記憶、という意味もあるそうです。
悲しいお土産、というよりは、悲しい思い出、の方でしょうね、きっと。

そんな「もや」は、ぼかし効果で、
さらに桜の花びらを散らして、
カーテンをヒラヒラさせました。

さてパーツが揃いましたので、
最終微修正をして完成させましょう。

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桜の花の色を暗く。
前の蔦の葉も暗く、影を濃く。
バルコニイ内の植木鉢の柄をなくし色を変え、植物の葉の形を変える。
レンガ塀の色を少し暗く。
建物の壁の色を変える。
壁灯の灯りを少し強調。
白猫の色を暗く。
バルコニイの下を暗く。
手前下のもやを濃く。
散る花びらを淡く。
女の人の服の色を微妙に変化。
女の人の髪の毛の色を微妙に変化。
その他ちょこっとしたとこ。

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以上のような感じですが、
なんかごちゃごちゃしてるでしょうか。

どうもよくわからなくなってきました。

少し時間をおいて見直してみましょう。

とりあえずこの時点でひとまず終了といたします。

おつきあいありがとうございました。

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このイラストを描いたのは2009年4月です。
記事は当時自分のホームページにアップしたものを今回書き直しました。
工程の画像に大きなものが残っていなかったのが残念です。

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