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身体障碍者×緊縛師という異色のコラボレーションを観た 金滿里×龍崎飛鳥「BASKET 舞×縄」

大阪を拠点として、態変を主宰されている金滿里さんの公演をAI HALLでのソロパフォーマンス以来、約2年ぶりに観た。

2023年10月態変40周年記念公演「私たちはアフリカからやってきた」のアフタートークに登壇さた龍崎飛鳥さん(緊縛師・老舗fetish bar.BARBARAのオーナー)と、態変主宰の金滿里さんの緊縛セッション。

 態変とは、主宰・金滿里により1983年に大阪を拠点に創設され、身体障碍者にしか演じられない身体表現を追究するパフォーマンスグループである。 
「身体障碍者の障碍じたいを表現力に転じ未踏の美を創り出すことができる」という金の着想に基づき、一貫し作・演出・芸術監督を金が担い、自身もパフォーマーとして出演する。金自身ポリオの重度身体障碍者である。
ー中省略ー
その方法は、身体障碍者がその姿態と障碍の動きとをありのままに晒すレオタードを基本ユニホームに、障碍それじたいを表現力に転化して人の心を撃つ舞台表現を創り出す、それが態変の表現である。

公式ホームページより
当時の公演チラシ2022年公演
「漆黒の赤」@AI HALL

私の態変公演の初鑑賞は2017年のHEP HALLで行われた「ニライカナイ -命の分水嶺」だった。そこから黒子に参加したり、陰ながら応援しているファンの一人だ。

態変が稽古場やパフォーマンスの場の拠点として構えるメタモルホールに来たのは更に前のはずで、いつぶりだろうか。明らかにコロナ以前だった。

最寄り駅の東淀川駅はすっかり様変わりしていて綺麗になっていた。


今日、私は受付手伝いとしてサポートとして参加し、お客様にドリンクを提供した。といってもプラカップに氷を入れてお茶やジュースを注いだだけ。


ドリンクカウンター越しに、
本日のポスター

涼しくなってきた17:30、お客様がそれぞれやってくる。

龍崎さんのファンの方もいれば、態変ファンの方もいて、日が落ちるとともに久しぶりにアンダーグラウンドな世界が始まる怪しげな雰囲気にドキドキする。


開演5分前の18:00、公演をみるため受付を離れて会場へ進む。

本日の公演チケット

観客約40人が息を潜めて開演を待つ中、空いている席に座る。最前列に陣取る。

床に赤く染められたロープが円状に置かれていて、真ん中には吊るされた赤いロープが床を這っていた。

これから金さんと龍崎さんの身体と緊縛というパフォーマンスがはじまるのを今か今かと少し不安に思いながら待つ。

開演前に、龍崎さんがとても親しげな関西弁で挨拶をし、位置につく。
今回は、龍崎さんともう一人の女性緊縛師、金さんの3名でパフォーマンスを行うようだ。

真っ黒の衣装を身に着けたふたりの妖艶な緊縛師が、舞台後方にスタンバイする。

会場に心臓音のようなドックンドックンという音が大きな音で鳴り響く。


その中へ、黒いレオタードを身に着けた金さんが黒幕から現れ、いつものように床をゴロゴロと転がってくる。


黒いレオタードにジェルでオールバックに固めれた髪の毛。跳ね上げられた目尻のメイクアップに鋭い眼光でこちらに迫ってくる。

態変のいつもの障碍者の身体をそのまま魅せる演出はいつ見ても見てはいけないものを見ているような気がしてドキッとする。

ゴロゴロ、と書いているが、彼女は障碍を持っており首から下は不自由なパフォーマーだ。

床と隙間なく身体が床とくっついているかのように、ゴロ、ゴロと独特な手の動きとともに舞台に登場する。

鑑賞者が見守る中、彼女は鋭い眼光で客席や宙を見つめつつ、そこに垂らされているロープに身体を近づけてみたり、巻きつけるような仕草をしていた。


そこにふたりの緊縛師と絡みが始まる。一人は金さんの動きに呼応するように身体を近づけたり離したり。

もう一人も動きを探るように3人の身体が重なったり離れたり、

その動きの延長で、金さんはそこにある赤いロープが肩に巻かれ、お腹に巻かれ、足にも巻かれて縛られていった。


その間の金さんは、終始鋭い眼光を暗闇に光らせながら、独特な手の動き、宙を掴むような、時折しびれたような、形容するのが難しい動きをしながら縛りが展開されていった。


ひと通り縛られ終わった金さんの後ろで、龍崎さんがカラビナをカチャっ、カチャとつけていく。


そして、

龍崎さんがぐっと力を入れてロープを引き、金さんは宙に浮いた。

と言っても床から15〜20cmくらいか。

浮いた金さんのまわりを龍崎さんが円の四分の一ほどゆっくり回っていく。


吊られた金さんは、

私の中で一番よく知っているポーズをしていた。


いつも左向きに足を折りたたみ、手も定位置に置いて床の上で体のバランスを保っている金さん。
いつも稽古場で、定位置に座っている金さんのいつもの身体のカタチがそのまま宙に浮いていた。

その時音響はもう水が流れるような音に変わっていて、

吊るされた金さんがまるで胎内の中にいる赤ん坊のように見えた。


そして

二人の緊縛師に縛られる途中にロープの赤い繊維が暗闇の中でふわふわと舞っていて、
床に這うロープが
血管のようにも、
今日、私がメタモルホールまで来る道中に浴びた桜の花びらと重なったようにも思えた。


浮いていた時間は1 ,2 分ほどか。
緊縛師のふたりが、床についた金さんのロープを解く。

またロープの赤い繊維が舞う。金さんの身体とロープの距離が離れる。


いったいどこに感覚の置き場があるのだろうか。


態変の公演を初めて観た時の感想が想起された。


私は緊縛される健常者の姿を間近で見たことはない。アラーキーの写真集くらいだ。
二人の緊縛師は誰が見ても容姿淡麗な方々だった。

でも、やはり圧倒的に金さんが主役だった。

得体の知れない、絶対にわからない身体を目撃した。多分そんな感じ。


約30分という公演時間に色んなことが頭を駆け巡った。


パフォーマンスが終わり、周囲が明るくなる。

金さんはまだ部分的に縛られたままで、龍崎さんたちがロープを解いていく。

もうそこには普段の関西弁の笑いを含んだ柔らかなやり取りがあった。


金さんは「内臓が面白かった。」と言った。


私は内臓が面白かった。という経験はない。

やっぱり感覚の置き場がちがうのか。


そもそも自分以外の感覚なんて知らないのだけど。

公演後には交流会が予定されていたのだけど、私は都合で会場を後にした。


金滿里×龍崎飛鳥「BASKET 舞×縄」

という身体障碍者と緊縛師という異色の組み合わせの公演をみた。


そんな金さんの主宰する態変の公演「ヴォイツェク」は6月に大阪ウイングフィールドで開催される。

公演チラシ

私も何らかの形で関わりを持てたらなぁと思った。


後で金さんには公演の感想をメールしよう。

ちょっと怖いけど。



4/16(火)追記

公演の翌朝に感想をメールして数分後、
金さんより、
「嬉しい感想、本当にありがとう。」

良かった、ほっとした。


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