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 ねん くみ なまえ

 小学校低学年の頃、落とし物委員に入っていた。確か、全員が何かしらの委員に属する決まりだったと思う。他にどんな委員があったのか知らないが、ぼくは落とし物委員なるものをつくって数人でふんぞり返っていた。  仕事内容はこうだ。ときおり出てくる名無しの落とし物を回収し、誰の物なのか特定する。持ち主が判明したら、「名無しのごんべえ」と呼ばれる折り紙と共に、落とし物を手渡す。どうしてこんな手の込んだことをしていたのか。今となってはさっぱりだが、ただ単に面白がっていただけな気もする。

    • 「普通はこんなとこ潜ろうとしないよ」

      そして、ぼくは浮上する。  この前、バイト先の社員に酔った勢いで言われた。「俺、アルバイトの中で君が一番好きなんだよね。一番変わってるから」。どういう文脈だったのか思い出せない。むしろ、何の脈略もなく唐突に言われたような気すらする。おいおい、そんなこと他のみんなの前で言っちゃっていいのか。だけど本人は大真面目なようだった。それにぼくも、とくにいやな気持ちはしなかった。  考えてみると、ぼくは昔から変わっていると言われがちかもしれない。親にも妹にも友達にも言われた。  「

      • カントもハイデガーも、たぶん膝はガサガサ

        ※このエッセイは、大学で提出したエッセイ課題を改訂したものです。  「幼い頃から哲学的な問いについて考えることが多かった」  幼少期からそんなことを考えていたなんて、優秀なものである。  「〇〇の業界に興味があり、哲学的な側面から考えようと思った」  自分の関心を哲学的に捉えなおそうだなんて、結構なことだ。  だけど、ぼくはこういった話を聞くたびにもぞもぞしてしまう。相手の意識の高さからくる焦りのせいなのか、言葉の真意を掴めないもどかしさのせいなのか。ぼくはいつも、

       ねん くみ なまえ

      • 「普通はこんなとこ潜ろうとしないよ」

      • カントもハイデガーも、たぶん膝はガサガサ