小説『異セカイ系』を読む

・第58回メフィスト賞受賞作。

・Web小説を投稿している20代男の主人公が、ある時自分の作品世界に入り込めるようになり小説の登場人物を救おうとしたことをきっかけに、小説の主人公の恋愛関係や作者の恋愛関係が絡み合っていくストーリー

・作者が神として世界を改変しようとする話は珍しくないが、本作は想像上の産物のキャラクターとの恋愛の可能性にフォーカスしているのに特徴がある。

・キャラクターに恋するのも自分、キャラクターを作ったのも自分というマッチポンプをつきつめて肯定するとどうなるのかという思考実験が見もの。

・ハーレム構造を多世界解釈とつなぎ合わせるのがとても二千ゼロ年代してて、ここら辺をもっと掘り下げれば批評的な面白さがもっと出てきたんだろうけど、現実のゼロ年代の想像力が失速していったことへのアンサーも出さないと説得力が弱くなっちゃうのが重荷でそこは踏み込めなかったのかもしれない。

・大森望氏が帯に書いたようにこの主人公、とにかくいい奴。作中描写で中高生のいじめはでてくるものの大人のばっちい悪意のようなものは一切出てこない。メタ要素もろな作品だけに育ちの良さが文章ににじみ出てる感じ。

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