藤井七段の初タイトル戦
昨日、高校生プロ棋士の藤井聡太七段が渡辺明三冠に挑戦する棋聖戦第1局が行われました。
その大一番で藤井七段が採用した戦法が興味深かったので、珍しく書いてみようと思います。
いまのプロ将棋の世界ってほとんど「研究勝負」になっています(これはAIの発達によるところが大きい)。
昭和のトップ棋士は「序盤ほどほどに指して終盤勝負」みたいなところがありました。(ちなみに、僕も昭和タイプです、レベルは全然低いですがw)。
で、若手ナンバーワンである藤井七段はどんな最新定跡を繰り出してくるだろうか、というのが、対局相手の渡辺明三冠も含めて、将棋界全体の注目だったのです。
ところが!
藤井七段の初手が76歩!
将棋を知らない人には何故これがビックリなのかわからないと思いますが、藤井七段と言えば初手にはほとんど(おそらく9割5分以上?)26歩という手を指していたのです。
渡辺三冠もこれにはかなり意外な顔を、明らかにしていて、序盤で早々に時間を使わされます。
で、藤井七段が誘導したのが「相矢倉」という戦型でした。これにもかなりビックリ。
「矢倉は純文学」っていう米長邦雄先生の名言(迷言?)もあるように、相矢倉は、若手がAIで研究しまくってる最新定跡というよりは、どちらかというと、昭和の将棋民が大好きなオールド定跡です。
で、その後更に、藤井七段は相矢倉戦のなかでも「脇システム」という戦型に誘導していきます(Wikipedia参照)。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%84%87%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0
このへんで、これは藤井七段が「準備してきた狙いの戦型」だったと、僕は理解しました。
先に「プロ将棋は研究勝負」と書きましたが、更に突き詰めると「準備勝負」になってきます。
プロの対局には持ち時間が設定されてますが、予め準備してきた戦型に誘導出来れば考慮時間を節約出来て、その分有利になります。
渡辺三冠はおそらく最新定跡のどれかだろうと準備してきたと思います。それを見事に外された訳です。
ということで、序盤は見事に、藤井七段は持ち時間をあまり消化せずサクサクと指し、ほんのわずかな差ではあるものの、指しやすい状況の構築に成功します。
ところが!
並のプロ棋士ならそのままズルズルと藤井ペースに巻き込まれていくでしょうが、渡辺三冠は違いました。
中盤で老獪な指しまわしを見せ、形勢は互角のままであるものの、終盤入口くらいでは逆に藤井七段のほうが時間を使わせられる展開になりました。
渡辺三冠スゲー!
ところがところが!w
藤井七段は小学生の頃から詰将棋選手権をダントツの成績で連覇し続けてる「終盤のバケモノ」。
最終盤では、又も渡辺三冠のほうが時間を使い、先に秒読み状況に追い込まれます。
で、最後に渡辺三冠は決死の勝負に出ます。守りは諦めて、藤井七段の玉を強引に詰ませにいきました。
王手が20手くらい?続きましたが、紙一重で藤井七段がかわし、藤井七段の勝利!
文章に書くとカンタンそうですが、20手くらいの連続王手の中で、一回でも受け間違えたら即死というのをAIが示していたのです。
Twitterでは、観戦していたプロ棋士たちも何人か「頓死した(正解がわからなかった)」とツイートしています。
それを、自分の頭脳だけで「詰まない」と判断し、正確に指して勝つバケモノw
ちなみに僕は、解説の先生が「玉が34までいって詰まないのか、なるほどね」と言ってる意味が全然わかりませんでしたw(実際玉が34までいったところで投了となりました、解説の郷田先生もスゲーw)。
とまぁ、長々と書きましたが、天才ばかりのトップ棋士の世界でも、ただ強いってだけじゃなくて、ちょっとでも有利にしようと、準備段階から血の出る努力をして、それでも勝負はギリギリになる。
その繰り返しのなかでも勝ち続けてしまう、というバケモノ中のバケモノの世界、ということでした。
僕がやってる素人の将棋はもっといい加減で楽しいものです、念のためw
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