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潮干狩りで、あさりは見つからなかったんだけどね。

宮崎県延岡市、
宮之浦という場所に広がる海岸。

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ここは、山を越えなければ到着できない秘密の場所だった。

私はここで初めて潮干狩りというものを体験した。

潮干狩り。
その言葉を聞いて思い浮かぶのは、
ちびまる子ちゃんでみた、まる子の夏休みの話の映像、
いつやらのニュースで見た尼ちゃんみたいなおばあちゃんたち。

ずっとあさりとしじみの違いを考えながら、土をガリガリと削っていた。

私はこの日、中学の恩師に誘ってもらって、海へと出た。

「岩をひっくり返して、地面をガリガリ掘ってみて。
しばらく出なかったら、場所を変えたらいいよ!」


どうやら、コツなどないらしくほぼカンに頼るしかないらしい。
なんてこった、なにから初めていいのかわからん。

私は、適当にそこら辺を掘った後、周りを見渡した。
誰か上手い人に教えてもらおう。
見かけたのは地元のおじちゃん。
籠の中に少しではあったがたまったあさり。慣れた手つき。

私はためらいもなく、「教えてください!」と声をかけた。

おおいいよ!!あんた分かってるね。一番いいのは地元の人に聞くことよ。
おいちゃんが沢山ほれるとこ教えちゃるわ!


褒められて嬉しかったし、声をかけたことで、「おねえさん学生さん?」と話が広がっていくことが嬉しかった。
そして話しながらもやることは変わらない。
とりあえずガリガリと掘るだけ。

あれ、おかしいな、見つからんね。



その日は調子が悪かったのか見つからなかったらしい。
そんでコツというものもあるわけではなく、やはりカンだけが頼りらしい。
それはそれでシンプル。
ただひたすら掘るだけ。


私は、ん?と思った。

潮干狩りは初めての経験。私は5人ほどのグループで来ていた。
ここで取る行動の違いに意識が向いた。


ああまた答え求めてるな。


初めての体験ならなおさら、あさりちゃんが眠っている場所など分かるはずもない。とりあえず掘ってみることはしたものの、試して試してあさりちゃんが出てきそうな場所を自分で探していくことをめんどくさいと思ってしまった。

だから、私は一番知っている人に聞きに行った。
案外私は、効率性や楽して結果を出すことを求めているのかもしれない。

前はそんな自分が許せなかった。
「努力」や「継続」が輝かしいものだと思っていた。
「探究」という自由研究のような授業に惹かれながらも、
実は答えのあるもし勉強の方が楽だったのかしれない。

 「答えを求める」いわゆる現代の若者のレッテルを張られるのが屈辱だった。

そんな心の葛藤があることなどばれることはない。
いやばれている人にはばれているかもしれないが。

「人に聞く」ことは1つの褒められるべき能力でもあることを知った。
「行動力があるね」という言葉になるらしい。

そんなことを考えながら、あさりちゃんを探していた。




大雨が降りだした。帰る時間だ。
籠の中には、みんなよりも少ないあさりちゃん。
おじちゃんと話すことや、考え事に夢中になってあさりちゃんを見つけられなかった。

人以外の生命体と触れてみたら。何か変わるかもよ。


ある人の言葉を体感した時間だった。

なかじょうさん!またね、元気でね!!

私はわずか1人分のあさりちゃんしか見つけられなかった。
でも、とっても豊かな時間を味わえた。

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(2021.6.26 宮之浦海岸にて)

考えすぎは時に疲れるものです。
よし、今日は1000文字ちょっと超えで終わったぞ!

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