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【競馬】"一騎打ちレース"の3番人気と3着馬を調べてみた

 2023年のジャパンカップ。
昨年の年度代表馬イクイノックスvs三冠牝馬リバティアイランドの一騎打ちムードが強く、オッズもこの二頭に集中。3番人気となったダービー馬、ドウデュースの単勝オッズは13.2倍を付けました。
結果、レースはイクイノックスの圧勝、リバティアイランドも古馬勢をかわし2着とオッズ通りの決着に。3着に追い込んだのは二冠牝馬スターズオンアースでした。

 このようなGIや重賞における一騎打ちレースは時々ありますが。ここで私は気になったことが過去の一騎打ちレースの3番人気と3着馬です。
特に今回のレースの場合3連単でイクイノ→リバティ→色々と流していた人も多いはず。誰かしらのヒーローであった、マッチレースの3着馬。二頭の対決に割って入れると期待された3番人気。そんな忘れじの名馬たちを調べてみました。


初めましてnakaと申します。
普段はX(旧Twitter)で主に障害レースを中心に緩く競馬を楽しんでますが、今回この議題について気になり、調べたのをまとめるためにnoteを始めてみました。今後活用していくかはわかりません。
 本題に戻り、今回一騎打ちとして選んだレースは私のイメージや趣味です。「あのレースが無いなんて!」とか「あれは一騎打ちじゃない!」思うかもしれませんが悪しからず。では早速見ていきましょう!
※馬齢、クラスの表記は現在に合わせています。

1988年 天皇賞秋

芦毛は走らないといわれていた時代を過去のものにした決定的レース。
笠松を含め14連勝中オグリキャップと天皇賞春制し7連勝中のタマモクロスによる対決。単勝オッズの35%をオグリキャップが、29%をタマモクロスが占めるまさに一騎打ちムードの勝負です。
・単勝オッズ
1番人気:単勝2.1倍 オグリキャップ…2着
2番人気:単勝2.6倍 タマモクロス…1着
3番人気:単勝7.7倍 ダイナアクトレス…5着
9番人気:単勝31.3倍 レジェンドテイオー…3着
二頭を割るようにして人気を集めたのがこのレース唯一の牝馬、ダイナアクトレスでした。

3人気 ダイナアクトレス

 ダイナアクトレスは主に1400m~1800mを得意とする馬でした。
クラシックでは現フローラステークス(4歳牝馬特別)、オークスでメジロラモーヌの2着、3着となり、彼女のライバルとして知られています。
 マイル中心のローテでしたがオークスの3着や前年のジャパンカップで3着になるなど中距離の適正が全くなかったわけではありません。この年は当時GIIで3月開催だったスプリンターズSの1着から、京王杯スプリングCを1着、安田記念2着と活躍。毎日王冠ではオグリキャップの5着に敗れていますが、このレースでは発走直後にシリウスシンボリに蹴り飛ばされるアクシデントがありました。このときシリウスシンボリは他の一頭も蹴り飛ばしこちらは競争除外となりました。
 その後迎えた天皇賞秋、前走はアクシデントもあり今年は好調ということで芦毛対決に一矢報いる期待がされていたダイナアクトレス。岡部騎手を背に最後追い上げますが惜しくも4着に敗れ、これが引退レースとなりました。彼女の前に居たのは最強の白い馬体二頭。そしてもう一頭は奇しくも毎日王冠で蹴り飛ばされ競争除外となった馬レジェンドテイオーでした。

3着馬 レジェンドテイオー

1年前の天皇賞秋で2着、その後ジャパンカップで12着になり、有馬記念で4着、中山記念で5着と辛酸舐める日々の続いたレジェンドテイオー。秋の仕切り直しとした毎日王冠でも不幸に遭ってしまいます。この状況で迎えた天皇賞は昨年の連対馬でありながらの9番人気。しかし逃げを得意とした彼は、スタートから果敢に飛ばし、自らペースを作る勝負に出ました。
 レースは常にタマモクロスが番手に控えた苦しい形となり最後の直線で差されてしましますが、粘りを見せなんとか3着を死守しました。なお昨年の2着はニッポーテイオーに敗れたものですが、2023年現在、天皇賞秋を逃げて勝った馬はこのニッポーテイオーが最後です。秋天における逃げの苦難はレジェンドテイオーから始まったのかもしれません。
 このレースでの健闘もあり、次のレースのアルゼンチン共和国杯では2番人気に支持、見事逃げ切りで勝利しました。

1996年 阪神大賞典

どちらも年度代表馬であるナリタブライアンマヤノトップガン
4コーナーからの2頭の一騎打ちの様相はすさまじく、GIIレースにも関わらずWikipediaに記事があるほどのインパクトを残しており、一騎打ちと言えばこれ!という人も多いのではないでしょうか。
・単勝オッズ
1番人気:単勝2.0倍 マヤノトップガン…2着
2番人気:単勝2.1倍 ナリタブライアン…1着
3番人気:単勝9.2倍 ハギノリアルキング…5着
7番人気:単勝99.2倍 ルイボスゴールド…3着
2頭がほぼ同じ2.0倍台のオッズを分け合ったこのレースで3番人気に支持されたのが晩成のステイヤーでした。

3人気 ハギノリアルキング

 ハギノリアルキングは年明けの3歳でデビューし、その後1勝クラスで足踏みしますが、翌年から長距離路線で活路を見出し2500m戦で3連勝。5歳では目黒記念でサクラローレルに打ち勝ち勝利。続く阪神大賞典では一個下の三冠馬ナリタブライアンに離されながらも2着に入ります。この後の天皇賞春で3着になって以降馬券外を続けますが、6歳初戦の日経新春杯を勝利し次に挑んだのがこの阪神大賞典、つまり彼にとってナリタブライアンへのリベンジだったのです。しかし、二頭に追いつくことができず5着、その後は8歳まで現役を続けました。
 二頭から大きく離れた後続の3着争い。それを制したのはなんと中央馬ではなく笠松からの刺客だったのです。

3着馬 ルイボスゴールド

 ルイボスゴールドは笠松でデビューした地方馬です。地方で通算1812勝を挙げた坂口重政騎手とのコンビが多く、この人馬で東海ダービー1着、さらにはダービーグランプリ1着と当時の地方競走のなかでも最強を名乗れるほどの成績を残していました。そんなルイボスゴールドが初めて挑んだ中央競争がこの阪神大賞典、そしてその背には坂口騎手が載っていました。
 レース唯一の地方所属馬。芝コースも初めてでした。当然期待は低く10頭立ての7番人気。しかし笠松から来た刺客はテレビ画面に映らないところで人知れず戦っていたのです。最後尾から始めたレースの最後に追い上げを図り、先を行く2頭以外、ハギノリアルキングを含むの馬たちを全て撫で切り3着に好走しました。
 何馬身も離されての3着。動画でもゴールの瞬間はほとんど映っていないのが切ないです。この時代は3連単、3連複、ワイドが無く、3着が関わる馬券が複勝しかなかったのでこういうレースの3着馬があまり語り継がれないのではと思います。世知辛い…。 
 とはいえ年度代表馬どうしの一騎打ちで銅メダルを勝ち取った人馬が地方出身というのはなんともロマンティックだと思います。当時の笠松ファンの人の中には複勝を握りしめていた人もいるかもしれませんね。

1999年 有馬記念

 天皇賞秋、ジャパンカップを1着としたダービー馬スペシャルウィークと有馬記念連覇、グランプリ三連覇を懸けたグラスワンダーの歴代有馬記念の中でも随一とされる一騎打ちです。
・単勝オッズ
1番人気:単勝2.8倍 グラスワンダー…1着
2番人気:単勝3.0倍 スペシャルウィーク…2着
3番人気:単勝6.5倍 メジロブライト…5着
5番人気:単勝12.5倍 テイエムオペラオー…3着
 2頭の単勝オッズが見事に割れていますね。その割に二頭が意外と美味しいオッズとなっているのが3番人気メジロブライトに期待があったことが分かります(と4番人気ナリタトップロードも6.8倍と結構票を集めていました)。天皇賞春や菊花賞などの長距離レースを制した馬が有馬記念で期待される傾向がよく分かるオッズです。

3人気 メジロブライト

 有馬記念となると一騎打ちムードとはいえ3番人気・3着馬もかなりの実力者。メジロブライトは前年の天皇賞・春の覇者。有馬記念ではグラスワンダーの2着でした。(ハギノリアルキングといいリベンジ相手がいる馬は人気しがちなのでしょうか…?)
 この年では阪神大賞典2着、天皇賞・春2着、京都大賞典2着と惜しいレースが続き、天皇賞・秋では11着と苦しみます。しかし長距離路線での実績はメンバーの中でも確実。また天皇賞・春ではスペシャルウィーク、セイウンスカイとともに三強といわれオッズを三頭で分けていました。これらのことからいわゆる黄金世代と呼ばれる98年クラシック世代に打ち勝てる可能性がある先輩という期待があったのではないかと推測します。
 有馬記念への集中のためジャパンカップを回避するなどこのレースへ陣営は力を入れていました。特にグラスワンダーへのリベンジという思いが強かったのではないでしょうか。結果はグラスワンダーの5着。その後屈腱炎を発症し、一度は復帰しますが再発。このレースが最後のGIとなり競走馬生に幕を閉じます。

3着馬 テイエムオペラオー

 この馬の後の実績についてはもはや言うまでもありませんが、このレースでは"今年の皐月賞馬"として、いわば最強古馬勢への挑戦者の立場でした。
皐月賞以降は日本ダービーでアドマイヤベガの3着、京都大賞典でツルマルツヨシの3着、菊花賞でナリタトップロードの2着、ステイヤーズステークスでペインテドブラックの2着と当時の強豪ぞろいの同期、古馬相手に苦しんでいたことが見て取れます。迎えた有馬記念では4番人気ナリタトップロード6.8倍に対し、5番人気12.5倍とトップ二強とその対抗の二強からも離されてしまいます。
 レースは普段は追い込みタイプであるゴーイングスズカがハナを取り、1000m65.2というスローペースで進みます。テイエムオペラオーは最後の直線で先頭に立ち勝利を目前にします。最終的には二頭の差し決戦に飲み込まれますが二頭から逃げ切れる可能性を見せたこの有馬記念で実力を評価され最優秀3歳牡馬(当時は4歳)に選出されました。その後の活躍はご存じの通りです。ではその後、現役最強となった彼がG1で最初に敗れたレースのときはどうだったのでしょう?

2001年 宝塚記念

記事のヘッダーは私の実家でなぜか家宝の如く祀られているこのレースの勝者、メイショウドトウの馬券です。5回のGIで世紀末覇王テイエムオペラオーの2着に喫してましたが、このレースで初めて白星をつけました。
・単勝オッズ
1番人気:単勝1.5倍 テイエムオペラオー…2着
2番人気:単勝3.4倍 メイショウドトウ…1着
3番人気:単勝13.4倍 エアシャカール…5着
8番人気:単勝41.7倍 ホットシークレット…3着
 オッズは圧倒的にテイエムオペラオーが集まていますがメイショウドトウも3倍台と「彼を倒せるとしたら…」の当時の競馬ファンの感情が伝わります。

3人気 エアシャカール

 このレースの前年、皐月賞と菊花賞を制し、ダービーではアグネスフライとに惜敗の2着とクラシック路線で存在感を出したエアシャカール。その後はジャパンカップ11着、大阪杯2着、天皇賞・春7着と古馬ではあまり存在感を発揮できていませんでした。しかしこの当時G2だった01年の大阪杯については特質すべき点があります。このレースはテイエムオペラオーも出走しており1.3倍の支持を集めていたのですが、アドマイヤボスとエアシャカールに揉まれ4着となったのです。3頭が揉み合っている間にトーホウドーリームの大外一気が決まったため、そこには追いつけませんでしたがオペラオーに先着した2着だったのです。
 よって宝塚記念のメンバーの中でテイエムオペラオーに先着したのはエアシャカールとアドマイヤボスだけ(そのアドマイヤボスも4番人気13.8倍とエアシャカールと対抗人気を分けました)。クラシックでの活躍と大阪杯での結果が人気を集またのでしょう。結果は5着。秋には肺炎を患いこの年はこのレースが最後でした。

3着馬 ホットシークレット

 さて2頭の運命(と新しく導入されたワイド馬券を握りしめたおっさん達)を変える鍵となったのが個性派のセン馬ホットシークレットです。これが調べてて困惑するほど情報量が多い馬で、まとめると。
・新馬戦、次の未勝利戦で2連続最下位
牡馬相手に馬っ気を出す不可解な気性。結果セン馬に
・セン馬になってからの初戦で3着
・4歳のステイヤーズステークスでナリタトップロードを破り1着
・6歳のステイヤーズステークスでは岡部幸雄騎手をのせ二度目の1着。
これが自身と岡部騎手最後の重賞勝利に。
・他にも目黒記念を勝利。総獲得賞金3億9338万8000円
・本馬はJRAが購入し、馬主に再頒布された抽せん馬で、抽せん馬の中での歴代最高総獲得賞金馬
…と個性派も個性派な名馬です。目黒記念は5歳の時に勝利しており宝塚記念はその次戦で挑んだレースでした。であればもう少し人気があってもいいように思えますがオープン戦で4着になるなど成績にはムラがあり嫌われたのかもしれません。12頭立ての8番人気という支持で、柴田善臣騎手を乗せレースを迎えることになりました。
 ステイヤーズSは先行で、目黒記念は差しで勝つなど変幻自在な脚質の持ち主。とはいえ先行での勝負が比較的多くこのレースはハナを取ります。
そこで後続勢が1000m61.3秒のスローペースで彼を逃げさせたのがこのレース結果につながったのでしょう。ドトウは前方で、オペラオーは後方でレースを進める形になりました。シークレットは最終コーナーでドトウにつかまりますが、このスローペースもありドトウは非常に楽な手ごたえ、結果オペラオーは差し切ることができませんでした。そのペースを作り出した張本人であるホットシークレットは最後の直線粘りに粘ってあわやオペラオーに先着できるのではないかというほどの3着でした。

2008年 天皇賞秋

言わずと知れたウオッカダイワスカーレットの最強牝馬決戦です。
歴代最強クラスの牝馬同士、ハナ差決着のインパクトから今でこそマッチレース扱いですが、下のオッズを見たらわかる通り、当時を知る競馬ファンの中には彼の存在を思い「あれは三つ巴レースだ!」と叫びたい人もいるかもしれません。
・単勝オッズ
1番人気:単勝2.7倍 ウオッカ…1着
2番人気:単勝3.6倍 ダイワスカーレット…2着
3番人気:単勝4.1倍 ディープスカイ…3着
フジテレビ青嶋達也アナの例の実況でも三つ巴が伺えるようなセリフが散りばめられています(「人気の三頭!牝馬と牝馬と今年のダービー馬!」など)
なのに接戦の中であまり取り上げられない彼が不憫に感じ(失礼ながら歴代競走馬の中でも極めて不憫という言葉が似合う馬な気がします)今回彼のことを考えてみました。4着になったカンパニーが一緒に取り上げられることも多いですが彼は後にとんでもない偉業を成し遂げ続けるのでまあいいでしょう…。秋天勝ってるし…。

3着馬・3番人気 ディープスカイ

 2008年のNHKマイル、日本ダービーを制し、キングカメハメハに続く二頭目の変則二冠馬となったディープスカイ。その後神戸新聞杯も制し、春の毎日杯も含め4連勝の中で天皇賞秋を迎えます。この4連勝は全て四位洋文騎手でこのコンビはここまで4回、つまり人馬の成績は[4-0-0-0]であったわけです。その四位騎手といえばその前年ウオッカでダービーを制した騎手。牝馬牡馬連続ダービー制覇というこれから起こるのか分からない記録を残しました。ウオッカには武豊騎手が乗り、四位騎手は昨年のクラシックの相棒に今年のクラシックの相棒で挑むことになります。
 ディープスカイにとって勝手の分かる東京競馬場で行われる天皇賞・秋。レース、ハナを取ったのは安藤勝己騎手を乗せたダイワスカーレット。GI3冠の女王がついにレジェンドテイオーから続く天皇賞秋逃げの運命を止めるのか! 直線まで粘りますが、ディープスカイは変則二冠を制した末脚を武器に一気に追い込みます。だが更にその外に怖い先輩ダービー馬ウオッカがいたことはいうまでもなく二頭の末脚争いへ。しかも苦しくなったはずのダイワ―スカーレットが差し返すという異常事態も発生、怖いお姉さま方二頭に挟まれる形となりさらに後ろから謎のおじさんが突っ込んでくるなどカオスな状態でフィニッシュ。結果はなんとか意地を見せた3着でした。
 実はその後、彼は1勝もできずに競走馬生を終えます。ジャパンカップ2着、大阪杯2着、安田記念2着、そして宝塚記念では3着でした。馬券内にはいるのに…。このうち安田記念は再びウオッカに敗れ、最強牝馬世代の中で最強の牡馬であるドリームジャーニーに大阪杯、宝塚記念で敗れます。残されたジャパンカップもスクリーンヒーローの覚醒に遭うなど、どこか不運なところが目立つディープスカイ。このレースが単純な最強牝馬の一騎打ちでなかったことは覚えておきたいものです。 

2017年 中山大障害

 私が何でこの記事を書いたのかというと、このレースを書きたかったからです笑。私が障害競走ファンになった所以のレース。ラジオnikkei山本直アナウンサーの『さあ前王者か!現王者か!』で有名。絶対王者オジュウチョウサンに前王者アップトゥデイトが勝負に出ます。
・単勝オッズ
1番人気:単勝1.1倍 オジュウチョウサン…1着
2番人気:単勝6.8倍 アップトゥデイト…2着
3番人気:単勝17.1倍 シンキングダンサー…4着
5番人気:単勝30.3倍 ルペールノエル…3着

 これまたとんでもないオッズですが王者に勝てるのは王者しかいないという気持ちの表れでしょう。なおこの翌年の中山グランドジャンプではさらにオジュウ、アップの人気は顕著になり、オジュウ1.5倍、アップ2.3倍と一騎打ちムードが強くなります(なおこのレースの3番人気ニホンピロバロン(14.1倍)は3着となり、同年の中山大障害を制します)。ただし有名なのは17大障害なのでこちらを取り上げました。このレースについて書きたいことは山ほどありますが今日はテーマに沿って彼らのことを紹介しましょう。

3人気 シンキングダンサー

 シンキングダンサーはこの年の東京ジャンプステークス、そして秋陽ジャンプステークスを勝利した馬でした。二走の間の東京ハイジャンプでは8着になるなどムラはありましたが、メンバーの中でアップトゥデイト、オジュウチョウサンを除いた時、唯一、年内の重賞を制覇している馬でした。
 となると三番人気になるのも頷けます。レースは逃げを宣言していたアップトゥデイトが後ろを大きく離す形に、オジュウチョウサンが番手に控えこの1-2の順を保ちつつレースを勧めます。シンキングダンサーと相棒金子光希騎手は2、3番手集団で控え徐々に追い上げを図るかたちを得意としていました。このレースでも後ろ側からレースが進むにつれて位置を上げていきます。最終的にオジュウチョウサンも後続を引き離し単騎でアップトゥデイトを捕えようととする中、シンキングダンサーは楽な手ごたえで3番手に。しかし最後の直線でとある馬の強襲に遭い4着となりました。
 その後のシンキングダンサーはこのレースを含め2021年の大障害までJ・G1レースに9回連続出走。2019年の中山グランドジャンプではオジュウチョウサンまで2.5馬身差の2着まで詰めるなど大障害レースで圧倒的な存在感を持っていました。結果この2着がキャリアハイの記録となりますが、彼と共にJG1の戦い方を学んだ金子騎手はその年の大障害でシングンマイケルに騎乗し初のG1制覇を成し遂げます。コンビは19グランドジャンプで一旦解散しますがシンキングダンサーは騎手を変えながら2022年まで出走し、22秋陽ジャンプでは3年ぶりに金子騎手と再会。14頭の11着となりこれを最後に中央競馬を離れます。その後は高知に移籍し、10歳となった2023年まで現役を続けています。

3着馬 ルペールノエル

 『さあ前王者か!現王者か!』で有名な山本直アナの実況。今でも語り継がれるほど評価されていますが私がこの実況で山本アナ、素晴らしいなと思ったのはここではなく、二頭が入着したあと、3番手争いを伝える『3着に!追い込んだルペールノエル!』という実況。このレースは山本アナにとって初のG1実況だったのですが、そんな中での名レース。興奮気味にレースを伝えてもおかしくありません。しかし昔と違い3連単や3連複もある時代。特に上位2頭が強いレースでは3着に誰が来るのかも大切な情報です。この『3着に!追い込んだルペールノエル!』は山本アナが最後まで完璧に職務を果たした締めの一句だと思います。これも含めてこの実況は評価されるべきだと思います。
 余談が長くなりましたがルペールノエルはオープンで2勝したことのある馬。重賞では勝ちきれないレースが続いていました。これだけの情報だと地味な馬ですが、彼について特筆すべきなのはこの前年の中山大障害。今回と同じような構図で1番人気オジュウチョウサンが2番人気アップトゥデイトを負かし初の大障害を制します。その時の3番人気3着馬がルペールノエルだったのです。抜群の末脚と飛越技術を武器にしていたルペールノエル。2017年の中山大障害でも2頭には追いつきませんでしたが直線での追いあげ力を発揮しシンキングダンサーをとらえ2年連続3着となります。つまりこの1着2着3着の決まり方は2年連続だったのです。
 ルペールノエルは飛越が非常に長けており、長く相棒を組んだ高田潤騎手も絶賛するほどでした。

その飛越は多くの障害騎手からお手本とされ「先生」と呼ばれていたほどです。
 これほどの傑物でありながらルペールノエル。実は重賞を1度も勝っていません。重賞だけで2着3回、3着3回に入ったことがあります。よく指摘される理由は2つ。1つはこの中山大障害2年連続3着のときが一番能力のピークだったのですが、その時代にオジュウチョウサン、アップトゥデイトがいたこと。もう一つ、その2頭があまり出てこないレースに京都コースのジャンプ重賞がありルペールノエルも4回挑戦していますが、京都コースには”三段跳び”とよばれる特殊なバンケット障害があります。そしてルペールノエルはこの三段跳びが壊滅的に苦手だったのです…。結果京都では2着2回、7着1回そして最初の障害で落馬し中止が1回ととにかく淀に縁のなかったルペールノエル。現在は引退し、乗馬に転向しました。評価の高かった飛越技術を生かし第二の馬生での成功が期待されています。

まとめ

 一騎打ちレースの中でも比較的有名な6レースについて調べてみました。
『ライスシャワー・ミホノブルボンの菊花賞は!?』『アジュディミツオー・カネヒキリの帝王賞は!?』と色々聞こえてきますがキリがないので一回ここで終わりです。ただ調べててかなり面白かったのでまたやるかもしれません。3人気は堅実な馬、3着馬は個性派が多いかなという印象です。3着馬は人馬共にチャレンジャー精神が宿っている馬が入りがちかなと思います。意外と荒れてる。ルイボスゴールドやホットシークレットはもっと語られてもいいんじゃないかなとも思いました。三つ巴の4番人気4着馬も気になるところです。
 オッズでは一騎打ちだけど1、2着決着でないレースも多く(92天皇賞春、16宝塚記念など)そういうレースは省きました。結構な頻度でどっちか飛んでます。あと阪神大賞典は一騎打ちになりがち。ここらへんは後日まとめてみたいですね。以上特に意味もないまとめ記事でした。



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