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『たぶんこれで大丈夫』で生きている 【エッセイ】

ある日のこと「カメラ撮ってくれへん?」と路上の占師に呼び止められた。半ば強引だったがスマホを手渡されたので、占師とそのお客さんであろう人のツーショットを撮影した。

お客さんがツーショットを希望するぐらいだから有名な占師なのかもしれない。

パシャリ。結構いい写真が撮れたのでスマホを返すと二人から礼を言われた。用もないのでその場を離れようとしたらその占師から一言、
「兄ちゃん、ええ顔してるなー」と声を掛けてもらった。

人相占い的なものかなと思い、「良い相が出てますか?」と問い掛けてみると「リップ・サービスや」と返事が返ってきた。

面白い占師も居たものだと興味が湧いたので続けて「金持ちになれそうな顔してる?」と訊いてみたら、「金持ちには成れへんよ」と即座に返事がきた。
可笑しくて大いに笑った。

「そうか、残念やなー」

チップ程度に百円を手渡すとその占師はニコリと笑い「心配せんでも、兄ちゃん。アンタはとっても幸せもんなんやで」と最後に耳打ちしてくれた。

◇◇◇

それ以来だ。
金はなくても自分は幸せだと思える様になった。

「たぶんこれで大丈夫」で生きている。
でも金は欲しい。

#エッセイ

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