値札のついてないもの【エッセイ】
この惑星の住人は値札のついているものにお金を支払う。
対価を払うとモノが手に入るのである。
交換取引のための便利なシステムだが、困ったことに誰かが値札をつけた時から世の中に不平・不満が生まれる。理由は人によってモノの価値が違うからだ。その値札はある人には腹が立つほど高く感じるのだろう。
時に値札によって人は幻惑されることもある。市場価格よりもかけ離れた値札は特にその効果が高い。
なんと高額すぎる値札には誰も不平を言わなくなるのである。この惑星の住人は手の届く範囲の価格設定にだけ過敏に反応する。
また、値札がついていないことによって、価値があるモノに敬意を払わなくなることもある。価値が見えなくなるのだろう。
先日、10万で買ったものが不用になったのでタダで譲ると言った時は誰も手を挙げなかったのに、「今なら6万で売ります」と声を掛けたところ即座に売れた。意味がわからない。意味は分からないがこの世界には「タダより高いものは無い」という言葉がある。きっとそういうものなのだろう。
しかし、タダでもらえるオマケにはすぐに飛びつく。何なのだこの惑星の住人は。
そうかと思えば、本当に価値があると思うものに値をつけない文化もある。そんなに価値があると思うなら10億でも1000億でも値札をつければいいと思うのだが、いくら積んでもこれは売らないのだから値はつけないと言う。
なるほどこれは理解できる。売りたくないのだから値札はつけないに越したことは無い。
なんでもお金で手に入るようで、そうはいかないこの惑星に住む人間という生命体は本当に興味深い。
ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー