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新宿の交差点を見ながら

中学生位の時から思っていた。
僕の性的な初体験の人は誰なんだろうって。
そんな事を自分がいずれ経験するとは信じられなかったし、想像も出来なかった。

出来ればクラスの好きな女の子とそうなりたいような気がしたけど、僕の中学3年間の恋愛感情を捧げたその人は性の対象には思わなかった。

僕の胸を常に締め付け続ける彼女を何故そういう対象に思わなかったのか。それは過度に考えれば今の僕の人格形成に至る発端のようにも思う事が出来る気がする。

それでも出来たら付き合いたいな。とは思った。付き合うという事がどういう事かは分からないが、僕の思いを知ってほしいと思った。勘違いなのだろうが、彼女も僕の事を少しくらいら思ってるのかな。と錯覚出来るような瞬間も長い学生生活の中にはあって、そんな時には僕の心は恋愛感情が湧き上がって爆発しそうであったし今も漠然と記憶の断片が残っている。

効率よく段階を経て、良い流れで告白を行い。誠実な言葉を届けられたなら、僕の初体験が彼女であった可能性はごく僅かだがあったのではないかと思う。自意識過剰かもしれないけど、僕の彼女に対する膨大な恋愛感情と共にクラスという狭い世界での共生の果てに伝わり合う感情があると思わなくもないし学生時代特有のあいつ、○○の事、好きみたいだよ。みたいなクラスのムードが彼女の心を洗脳する可能性だってあったのだ。

僕はその後、正式に女性とお付き合いをするまでに10年を要したが、成就も失敗もしなかった中途半端な僕の精神的な意味での初恋は長い間鎖となって僕の心を彼女に繋ぎ続けた。

今、どこで何をやってどんな風に暮らしてるのかな。と今でも思う時はある。電車の中、街角で偶然会える可能性はゼロではないが、記憶の中に眠る面影はいつのまにか僕の脳内で変貌を遂げているのかもしれないので、もしも会える事があっても気付きもせずに2人は通り過ぎてしまうのかもしれない。

今、新宿三丁目の喫茶店の三階で明治通りの交差点を行き交う人達を見ている。信号が変わる度に沢山の人が行き交い僕の視界から去っていく。彼女を題材にした恋愛小説でも書いてみようかなと思ったりもしてみたけど、多分そんなものを書いても違和感の固まりを抱えて溜息に包まれてしまうだろう。

なんだかいつも午後から夕方の時間帯には何かに怯えていて妙に息苦しい気がする。日が沈んで夜になれば大抵は落ち着くと期待しているけれど、1日のテンポは早くて時間の流れが体に染み付いたままで頑張り続けるのは少し辛い。

旅にでも行きたいなと思うけれど、行きたい場所がある訳でもないし逃げ出したいと思っている訳でもない。

自由を手にしたくて。憧れていた事があって、生きてきたけれど、今までに掴めた事や知った事もあるかもしれないけれど、時間の風は想像力を越える程に強風で生きてきた時間に微かなプライドを持って立ち尽くしているけれど、予想も出来ない角度の風が吹けば飛ばされてしまうかもしれない。

10年前と新宿の街並みは変わったかな。そうでもない気もするな。視界を上に上げれば鮮明な青。心の中のどろっとした濁った色と混ぜ合わせて古くなった人生の旗を何度も染め上げる。

それを小脇に抱えてこれから来るであろう夜に備えようとしているんだ。

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