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【新型コロナ】8割おじさんの功罪

 ▼ 今回参考にさせて頂いた書籍はこちらです。
 ■ 「こわいほどよくわかる 新型コロナとワクチンのひみつ
 ■ 「コロナ脳: 日本人はデマに殺される

いつもお読み頂き、誠にありがとうございます。

今回のnoteを読むことで、

 ■ 8割おじさんの予測が的外れだったことがわかる
 ■ 研究者がウイルスの毒性の強さを強調したい理由がわかる
 ■ 新型コロナの症状は風邪と同じだということがわかる

ようになります。

今回は医師であり放射線治療の専門家で「近藤誠がん研究所」の所長である近藤 誠氏の著書「こわいほどよくわかる 新型コロナとワクチンのひみつ」から新型コロナウイルスに関するパートを要約していきます。

本書ではワクチンに関しても詳しく解説していますが、ワクチンパートは別のnoteで解説していますので、合わせてお読み頂けると幸いです。

また、「実はインフルよりザコい新型コロナ」では京都大学ウイルス・再生医科学研究所の准教授の宮沢孝幸氏の著書を要約していますので、こちらもご参考ください。

8割おじさんの功罪

「8割おじさん」を覚えていますでしょうか?

8割おじさんこと西浦博教授は当時は北海道大学の教授で、現在は京都大学の教授です。

彼は、2020年4月に「新型コロナに対して何も対策しなければ、日本でおよそ42万人が亡くなる」と強烈な警告を発し、人の接種を8割減らさなければならないと警鐘を鳴らしました。

しかし、その年末の新型コロナによる死者は西浦氏の推計の100分の1にも満たなかったのです。

彼のおかげである面もあるとは思いますが、それにしても過剰な警告だったのではないでしょうか? さらに過剰な自粛により経済が滞り、自殺者が増えるという負の側面もありました。

また、西浦氏は第三波の際に「感染爆発により2月末に東京の感染者は1日3,500人、3月末に1日7,000人」という推計を出しています。

しかしこれもまた大きく外れ、実際の感染者数は2月末・3月末どちらも200~300人程度でした。(参考:東京都の新型コロナデータ

8割おじさんの問題点

確かに、西浦氏が警鐘を鳴らしてくれたおかげで国民の自粛には大きく貢献してくれたと思います。

しかし、西浦氏は分科会のメンバーではなく、厚生労働省のクラスター対策版の人間でありるにも関わらず、分科会を通り越して記者会見を開き、政策の決定に関わってしまったのです。

また、彼が当初「42万人が亡くなる」という推計をした計算では、爆発的に感染が広がっているドイツの実効再生算数をそのまま使って計算していました。

ドイツの実効再生算数は2.5で、当時の日本は1.8ほどだったのです。

実効再生算数は変動するのは当たり前であり、そのまま固定して計算するのはおかしいと指摘されています。

そもそも新型コロナとは?

そもそも「新型コロナウイルス」とはなんでしょうか?

新型コロナとは、新型とついているように「コロナウイルス」の新しいやつです。

コロナウイルスにはもともと6種類が存在し、そのうち下記の2つは特に多くの死者を出しています。

 ▼ SARS(重症急性呼吸器症候群)

SARSは肺が攻撃されて呼吸不全が起こります。中国で2002年で初めて確認され、世界中に広まり、8,000人が感染、800人以上が亡くなりました。しかし、2004年以降はSARSは確認されておらず、収束したと考えられています。

 ▼ MARS(中東呼吸器症候群)

MARSもまた重い肺炎が特徴的ですが、新型コロナと似て軽症者や無症状者もいます。2012年に中東で確認され、ヨーロッパなどを中心に感染者が増加。これまでに2,000人以上が感染し、800人以上の死者を出しました。

残りの4種類のコロナウイルスは、よくある「風邪(感冒)」の原因です。主に熱が出たり、咳や鼻水、のどの痛み、だるさを引き起こします。

全ての風邪の原因の2割ほどがコロナウイルスによるものです。(J Med Virol 2019;91:570)。

新型コロナウイルスはどこから来た?

それでは、7番目となる新型コロナウイルスは一体どこから発生したのでしょうか?

この点については下記2つの説がありますが、明確なことは未だにわかっておらず、現在調査中です。

① 自然界に生息するコウモリ発祥説
② 武官のウイルス研究所から漏れた説

さらに謎を呼ぶのは、新型コロナウイルスが中国で確認される前の2019年9月にイタリアで流行していたことが明らかになったことです(Tumori 2020;33176598)。

新型コロナが重度の肺炎を引き起こす理由

新型コロナウイルスに感染するとなぜ重度の肺炎になるのでしょうか?

結論から言うと、新型コロナウイルスが人の細胞に入るために必要な「カギ」を持っていて、そのカギに合致する「カギ穴」が肺に存在するからです。

そのカギとは、新型コロナが持つ「スパイクタンパク」を指します。

スパイクタンパクとはウイルスが細胞に侵入するために必要な「カギ」のようなものです。

テレビなどで新型コロナウイルスの顕微鏡画像を見たことがあるかと思いますが、ウイルスの周りにトゲトゲのような突起が付いていますよね。アレがスパイクタンパクでありカギです。

 【カギを使って侵入するコロナウイルス】

もしこのカギがなければ、新型コロナウイルスは人に感染できません。なぜなら、この「カギ」がなければウイルスは人の細胞に侵入することができないからです。

また、ウイルスは細菌と違って自分だけでは増殖することができず死んでしまうので、他の生物の細胞に侵入して寄生する必要があります。

ですが人の細胞表面にはウイルスや細菌が入らないように、特別なカギでしか入れないロックをかけています。そのおかげで、いろいろなウイルスが自由に出入りすることを防いでいるのです。

しかし、新型コロナウイルスはそのロックを解除するのに必要なカギを持っているため、人の細胞に侵入でき、感染することが可能なのです。

その特別なロックというのが「ACE2(アンギオテンシン変換酵素2)受容体」という受容体なのですが、新型コロナウイルスはこの受容体にくっつくことができます。

つまり、新型コロナが持つスパイクタンパクは「カギ」であり、人の細胞表面にあるACE2受容体は「カギ穴」で、この両者がガチっとハマってしまうのです。

 【あらゆるところに存在するACE2受容体】

この「ACE2受容体」がない細胞や臓器には、新型コロナウイルスは入り込めませんが、実はこの受容体は人のあらゆるところに存在します。

そう、察しの言い方はお気づきかもしれませんが最初の「なぜ重度の肺炎になるのか?」という疑問の答えは、まさにこの受容体にあります。

肺にもこの「ACE2受容体」があるため、新型コロナウイルスに感染すると肺炎が重症化しやすいのです。

また「ACE2受容体」は鼻・咽頭・口腔粘膜・小腸にも存在します。さらに、心臓・肝臓・腎臓・脳・膵臓の細胞表面にもあります。

新型コロナの症状は風邪と同じ

新型コロナに感染すると、基本的には風邪と似たような症状が出ます。

熱や咳、のどの痛み、頭痛、だるさなどが主な症状ですが、稀に嘔吐や下痢といった症状も表れます。

さらに著者の近藤氏によると、新型コロナでは軽症者か無症状者がほとんどです。

感染しても全体の8割は無症状か軽症で終わり、残り2割の人が中等か重度化し亡くなる場合もあります。

だからといって「新型コロナはただの風邪だ」というと「恐ろしい感染症だ」と反論する方もいますが、これはどちらが正しいというわけではありません。

持病がある方や高齢者にとっては恐ろしい感染症とも言えますし、若く健康的な人にとってはただの風邪とも言えます。

しかし近藤氏は将来的には、多くの人が免疫をもつか、ウイルスが弱毒化するなどして、結果的に「ただの風邪」になると予想しています。

感染から発症までの期間は2~14日

新型コロナに感染してから症状が現れるまでの「潜伏期間」は、研究によって差があり、明確にはなっていません。

しかし、多くの研究では感染してからおよそ2日から14日以内には症状が出てくるようです(Ann Intern Med 2020;172:577)。

また、およそ5割は感染から5日から7日以内に症状が表れることがわかっています(Sci Adv 2020;6:eabc1202)。

スペイン風邪から学ぶ新型コロナ流行

スペイン風邪は1928年から1920年に世界中で広まった感染症で、世界人口の3分1が感染し死者数は5,000万から1億人以上でた、史上最悪のパンデミックだとされています。

このスペイン風邪から、現在の新型コロナウイルスのパンデミックについて学べることがあります。

それは、ウイルスそのものの毒性の危険性よりも、ウイルスに対する手段(ワクチンや薬)の弊害の方が大きくなる可能性です。

結論から言うと、スペイン風邪の大量死の原因はスペイン風邪そのものではなく、スペイン風邪に対する「鎮痛解熱剤」として当時使用されたアスピリンの可能性があるのです。

つまり、これを現在の新型コロナウイルスと重ねると、新型コロナで亡くなるよりも、それを治療するためのワクチンのせいで亡くなる可能性を考える必要があります。

研究費が欲しいウイルスの専門家

著者の近藤氏によると「感染症の専門家はスペイン風邪による大量死をどうにかしてウイルスの毒性の強さによるものだとしたがっている」としています。

なぜ、ウイルスの研究者はウイルスのせいにしたがるのかというと、もし大量死の原因がウイルスのせいではなかった場合、下記のような懸念があるからです。

■ 自分たちの研究の意味や存在意義がなくなってしまう
■ 研究費用がおりなくなる
■ ワクチンの開発意欲がなくなる

このような理由から、ウイルス研究者はどうしても大量死はウイルスそのものの毒性の強さのせいにしたかったのではないか、と考えられます。

スペイン風邪大量死の真犯人は「アスピリン」説

なぜスペイン風邪で大規模な大量死が起きているのかがわからないままだったのですが「その原因はアスピリンかもしれない」と指摘する声があがりました。

ドイツで開発されたアスピリンは、1890年代に製薬会社のバイエルが「解熱鎮痛薬」として販売した、世界で初めての「合成薬」です。

アスピリンは痛み止めや熱冷ましとして大ヒットし、「奇跡のクスリ」とすら呼ばれたにも関わらず、なぜ大量死の原因になりうるのでしょうか?

「大量死アスピリン原因説」を提唱しているのは、アメリカの医師 カレン・スタル氏ですが、彼女の主張は下記のとおりです。

 ■ 現在のアメリカの最大摂取量は1日4gだが、当時は8~31gとされていた。これは中毒になるレベルであり、健康な人が摂取しても33%が過呼吸に、3%に肺浮腫が生じる。
 ■ スペイン風邪の第二波がアメリカで広まった時に、軍関係者で大量のアスピリンを処方するように「医学的司令」が出された。これは兵士が大量死し始めた時期と重なっている。
 ■ 当時、通常の医師は「アスピリンは毒かもしれない」と考えた医師たちは、スペイン風邪の患者にアスピリンを処方しなかったおかげで、「亡くなる人はほぼいなかった」としている。
 ■ 大量死のピークは第二波の最中だったが、これはドイツがもつ「製造特許」を無視してアメリカが大量生産し、軍関係者に配り、中毒量を与えたので、若者や壮年者が数多く亡くなったことが原因と考えられる。
 ■ さらに、一般社会ではアスピリンを大量に処方することがなかったため、乳幼児や高齢者の死亡率は、一般的なインフルエンザと変わらなかった、とされている。

余談ですが、スペイン風邪は名前からしてスペイン発祥と思われがちですが、当時は戦争中だったためアメリカなどの参戦国は感染状況を他国に知られないようにしていて、参戦国はではないスペインが感染状況を発信していたためにこのような名前がついたようです。

かわいそうですね。


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 ▼ 参考書籍はこちらです。
 ■ 「こわいほどよくわかる 新型コロナとワクチンのひみつ
 ■ 「コロナ脳: 日本人はデマに殺される

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