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移動こそ介護予防 ー福祉Moverー

MWS日高 フレッシー便・大規模デイ

法人事務所の入る建物から 赤城山が見える

 群馬県前橋市。県庁所在地で、高崎市に次ぐ人口約33万人・第2位のまち。 
 一般社団法人ソーシャルアクション機構・代表理事の北嶋史誉さんを訪ねます。北嶋さんの前職は、高崎市を中心に介護事業を展開するエムダブルエス日高(MWS)の代表取締役。私は新聞記者時代に何度か取材させて頂いてきました。
 10年ほど前「デイサービスに移動販売車を導入する」というニュースで伺ったのが初めて。その時「もうすぐ面白いデイサービスができる」とお聞きしました。一日最大250名ほどが利用する大規模デイサービス・日高デイトレセンター。完成後訪ねると、予想以上にとても活気あるデイでした。
 自ら選択できるプログラムや食事、シミュレーションゴルフの導入など、今でこそ他のデイでも行われている取組みですが、当時は先駆的。業界の注目を集めました。今年開設10周年を迎えます。


2012年 取材当時の写真 ”デイに移動販売車がやって来る”はかなり新しかった。
車内にはお肉・野菜、トイレットペーパーなどの日用品など多様な品揃え。
利用者さんのために、購入した商品を保管する大型冷蔵庫もデイには導入されていました。
2012年1月開設の大規模デイ 2013年4月取材時に撮影。
ICTをすでに活かしていました
デイで行われるプログラムは多様
広い施設内 物の配置にも様々な仕掛けや工夫が


 高齢者のヒッチハイクを

 デイの送迎をどうこなす?

一般社団ソーシャルアクション機構 代表理事・北嶋史誉さん

 (北嶋さん)「大規模デイを運営するにあたって、250名の送迎を人の頭と手では無理だと思ったのね。僕は当時から“デジタル化、DX”と言っていて、その開発に取り組んでいた。開発したシステムをデイで活かしていたけども、自分たちだけで使っているのではもったいない。デイサービスはたくさんあるんだから「(送迎車の)座席空いてるよね。協力し合えばいいよね」って。空きシートを使って“移動したい”という高齢者と、その高齢者の自宅近くを通るから“ついでに乗せてあげるよ”って車をマッチングさせられれば、高齢者のヒッチハイクができると考えた」。

福祉Mover

 デイの送迎を効率的・円滑的にするために開発したのが「送迎業務支援システム・福祉Mover」です。
 送迎車に搭載したタブレットの位置情報をもとにリアルタイムで各送迎車の位置情報を管理画面で確認でき、送迎計画表も簡単に作成することができるます。
 タブレットには利用者の名前、送迎の順番、推奨送迎ルートなども表示されます。事前に送迎時の注意事項(「こたつのスイッチを消す」「〇〇も一緒に持って行く」)などの情報を入力しておくことで、タブレットで確認可能。ミスも起こりにくくなります。

福祉Mover スマホ画面 「5クリックくらいの操作で車を呼ぶところまで行ければいいですよね」と北嶋さん。操作はシンプルです。

 2019年には、送迎車の相席を“相乗り活用”する仕組みへと展開させました。経産省の補助事業採択、新潟県や栃木県での社会実証実験なども行ってきました。サービスのさらなる展開、普及活動を進めています。

インフラになればいい


 (北嶋さん)「インフラを取ると強いじゃないですか。電気でも水道でもインターネットでも。介護業界は“力がない”と言われるのは、そういうものがないからじゃないかと思う。“介護自体がインフラだ”って言っている人はいるんだけど“地域の交通を介護業界が担っているんだ”って思いを持てればいいよね。インフラの一部になれるような仕事をしないと。国で定められた仕組みのなかだけで仕事をしていたら収入も決められたまま。だったらそれ以外に、地域貢献をしながら、きちんと収入アップできる仕組みをつくったほうがいい」。
 
 福祉Moverは、国交省や(関東)運輸局なども注目。国の視察もありました。関係者らと議論を深めていけば、将来的に福祉mover導入による介護インセンティブを得ることは可能になるのではないかと北嶋さんは話します。
 

増加の一途をたどる免許返納者

群馬県内の免許返納者数 推移グラフ
 

 全国でも車保有率上位の群馬県ですが、高齢化に伴い免許返納数も増加。コロナの影響で鈍化したものの高い数値。2019年には8000人を超えました。 

(北嶋さん)「8000人が免許を返納しているのにも関わらず、タクシー台数はどんどん減少。運転手も減少。増える見込みはない。バスだって、もはや大型2種免許持っている人は少ないし、減便される一方。利用しにくいものになっていってるんだよね。今はなんとかバランスを保っているけど、やがては崩れる時がくる。そうなったとき、door to doorで公然とお客さんを運んでお金をもらう仕事ってデイサービスしかない。白ナンバーで。
 全国にあるデイサービスの数はおよそ52,000。コンビニの数に匹敵するほど。ロードサイドにないから目立たないだけ。平均で一事業所5台の車を持っているとしたら、タクシーやバスより全然多い。それをちょっと空席を利用して移動支援に貢献してもらえれば、十分にインフラになるんじゃないの?って。誰でも予想し得るはずなのに、みんな蓋を閉めて、対策を怠っているとしか思えない状況なんだよね」  

(筆者)「確かに。よく自治体がコミュニティバスを走らせていますよね。料金こそ低額なものの、利用者数は少なく、本数も少ないことが多い。私の暮らすまちでは誰も乗っていないケースもよく見かけます。で、残念なのが(四国88か所巡礼―まちに3つ札所があるために)お遍路さんの活用が見込まれる週末は料金アップ。何のための、誰のためのバス?って思います」

空気を運ぶんじゃなくて


前橋市では、昨年12月からタクシーによるデイの送迎を実証実験中。
「社会福祉法人〇〇」などと表示がある福祉車両に乗りたくないがためにデイの利用を控える高齢者もいる。「タクシー」が自宅まで来てくれるなら”外出欲”が高まりそう。


 (北嶋さん)そうだよね。空気を運んでいるだけ。あと思うのは、みんな、タクシーを救うことばかりを考えているってこと。確かにタクシーがなくなってしまったら僕だって困る。だから法人として、デイサービスの送迎を一部タクシーに委託するという事業を国交省の補助金を得て取り組んでいるんですよ。乗客を待つタクシーと送迎に人手の欲しい介護事業者。双方の”状況”を活かす。足りないところは補え合えばいいんだよね。タクシーに乗ってもいい。福祉ムーバーを利用してもいい。もちろんバスに乗りたい人はバスを選べばいい。交通というのは、誰かが勝つんじゃなくて選択肢のひとつとしてあればいい。そういう在り方でないと、この多様な世の中に対応できないだろうって思う。だって、車いすごと車に乗らなきゃならない人もいるわけだから。そんなタクシーが市内にどれだけある?呼んだらすぐに来てくれる?だったら、車いすのまま乗り降り可能な福祉車両、ステップや手すりのついた福祉車両の、介護事業者の”空席”を活用したらいい。

客を奪う、じゃない。


 今までやってきて、やはり課題は”タクシー業界との軋轢を不安視す声”。でも、タクシーの利用が多いのは朝夜の時間帯。昼間は駅前で待機という光景はあちこちで見られるでしょう?都市部では半日型デイが多い。ということは送迎も一日2回転。送迎業務に人手が要るわけだから、午後の送迎をタクシー会社に委託する。タクシー会社にとっては確実な仕事になるし、介護事業者にとっては助かりますよね。
 介助がほとんどいらない、介護度の軽い利用者が多いデイなどは、全面的なタクシーへの送迎委託もあり得るんじゃないかと思いますね。都市部は駐車代も高い。委託できれば車の管理費やリース代もかからないわけだから。タクシー会社、介護事業者双方にメリットがあります。あるものを活かす、利用する。こっちのほうが持続可能性のある在り方。「客を奪う」じゃないんですよ。

“社会”が問題 想像できる?

 昨年秋に福島県で90代の人が運転していて事故を起こした事件(※)があったでしょう。車に乗っていないと生活できない社会じゃダメじゃん!!免許を返納してもきちんと日常生活が送れる社会でないと。
 “免許返納しないほうが悪い”って言う人も多いけど、「免許がなきゃ、車がなきゃ、生活できなかったんだよ」って。そこをきちんと見て対策を考えなければ、状況は変わらないわけだから。

 (事故を起こした)男性宅から最寄りのバス停までは高齢者だと歩いて15~20分。買い物で高齢者が利用するのは負担が大きいとみられる。近所の70代女性は「ここでは車が手放せない。夫が運転できなくなったら自分も買い物難民になる」と話す。

※97歳運転の車が歩道を暴走 40代の女性が死亡した事件(朝日新聞デジタル22年12月7日)


 地方であるほどに、移動手段は少ないうえ、利便性にも欠ける。一方、福祉施設は数もあって遍在しているわけだから、送迎車両や既存の仕組みをもっとうまく活用できればと強く感じますよね。

 

想像できる?

  北陸のとある市で、市長は福祉Moverの導入にかなり意欲的だったものの、社協側が怪訝そうな姿勢を見せたケースがあったそうです。
 
 (北嶋さん)そのときに「無理に導入を進めるつもりはありません。だけどね、この場所で“免許を返納して”って言われたら生活できます?今はまだ若くて、運転なんて余裕でできるからそんなこと想像できない。だから改革しようって思わないんでしょう」って言ったの。そしたらみんな黙ってしまった。自分は車を簡単に運転できて、どこでも行けてしまうから。でも、車を運転できなくなったら、まずは歩いて移動するってなるけれど、麻痺があったら動きにくい。雨が降ってて傘さして、片麻痺だったら荷物どうすんの?って。
 そういうことを想像できるのかどうか。状況を改善していかないと、引きこもりの高齢者が増えてしまって、廃用症候群の人は増え、認知症も進んでいく。だから僕は「デジタル使って、スマホ使って…」って開発を始めたんだけど、始めた当初は”スマホなんて持っているシニアはいないよ”って言われた。今はどう?誰もがスマホを持っているんだから。
 最近は依頼が多く、出張が増えています。移動に困っている土地が多いから、僕の話はよく分かるって言ってくれるんですよ。
 側面的に介護業界を支援する役割を担えたらいいなって思っているんです。 

世界観のチェンジ

 北嶋さんがこれまで多くの現場に触れて気づいたこと。それは業界のシステム遅れでした。
 
(北嶋さん)驚きました。デイサービスの送迎を、ホワイトボード上でマグネット、利用者の名前を書いたタグを使って、アナログでやっている。ホワイドボードがびっしり埋まっていて。もはや芸術。だけど一つ変更があれば他を動かさなければならない。担当者はものすごく大変。ミスだって起こりやすい。でもこれが出来るのは一人だけ。仕事が属人化してしまっている。
  福祉業界は慣行されてきたことへの変化を嫌う傾向が強い業界。
  ”今までこれでやってきたし、やってこれだんだからこのままでいいじゃないの”って。でもそれでいいのは、理事長や管理者だけ。もはや小学生がタブレット端末を自在に活用する時代。
 ホワイトボードとペンとマグネット…な世界観に「ここで働きたい」と思う若い介護士さんはいますか?

その車がどこを走っているのか。乗車人数、空き座席数などの情報が一目で分かる

 (前職の)MWS日高では毎年新卒が入社するし、求職者も多いんだけど“なぜそんな若い人たちが入社希望するんですか?”って質問される。アナログな現場と、スマホやタブレットを活用したDXの世界で仕事をこなす現場、どちらがカッコいいかって一目瞭然ですよね。必要なのは世界観のチェンジ。持続可能性という側面を見たって、デイサービスの空いている車、すなわち“あるものを使ってシェアする在り方”のほうがカッコいいでしょう?。

前橋市で「めぶく」

シェア、サスティナビリティのためのDXへ


 福祉Moverはマスコミにも次々と取り上げられ認知度も上昇。評価は高いといいます。ただ、なかなか自治体の導入には至らず…。
 前例がないのを嫌がる自治体と、タクシー業界との軋轢の懸念がぬぐえないことが主たる理由です。
  ですが、法人が籍を置く前橋市は、強く一歩を踏み出しています。北嶋さんの考えに共鳴し、システムを導入し始めているのです。具体的には次の通り。

〇市による補助事業 
市が1000万円を補助。法人17施設・送迎者約100台が福祉Moverを導入
(2021年10月から2022年3月まで実証事業)
 
デイとタクシー事業者との共創事業 
デイ10事業所 とタクシー会社8社(最大28台)での実証運行 
(2022年12月15日から年2023年2月14日)
 
〇2023年2月より デジタル送迎網による外出支援が始まるといいます
デイ等利用者の非通所日における相乗り外出支援の実施(※)

(※)「デイの通所日は週2日か3日。非通所日の移動も支援しなければ”引きこもり”となってしまい、介護予防にはつながらないのでは」(北嶋さん)この外出支援の実施には大切な意味がある。

 前橋市には、核となるビジョンがありました。
『めぶく。』です。
 ビジョンが発表されたのは2016年。官民協働事業として(一社)田中仁財団(眼鏡会社・JINS社長)とともに策定を進め、前橋市出身のコピーライター・糸井重里さんの協力を得てできたものだそうです。
 

ビジョン発表のパンフレット 「昇るか、沈むか」というキャッチにも、市の覚悟を感じます

柔らかで太い ビジョン

市内にある「太陽の鐘」。このタッチ、見たことがある…。岡本太郎!!前橋ビジョン「めぶく。」を支えるのは「太陽の会」。2016年8月、企業家有志により結成されたそうです。毎年の純利益の1%(最低限100万円)をまちの資産になるものに投資。岡本太郎の「太陽の鐘」の移設も太陽の会が支援している、というからスゴイ!写真:前橋観光コンベンション協会より
取材時に手に取った、前橋新聞発行のフリーペーパー 市全体で「めぶく」というビジョンのもと活動していることが分かります。

「めぶく」というビジョンを市民に浸透させるための組織が一般社団法人前橋まちなかエージェンシー。代表理事の橋本薫さんへのインタビュー記事を発見しました。一部抜粋すると…

―街の課題、とは何ですとのインタビュアーの質問に対して

(橋本) 多くの人に「前橋とはどんな街か」をリサーチしました。みんな「暮らしやすくて、いい街です」と言います。でも「ではどこが魅力か」と聞くと、言葉につまってしまう。赤城山とか具体的な場所を上げる人も、赤城山の何が魅力かという部分までしっかりと言語化できませんでした。
街の良さを明確にプレゼンテーションできないのは、市としてのビジョンがなく、目指す街を市民が共有できていないということ。それが、シビックプライドを衰退させている、前橋の一つの課題だと分かりました。
民間発案でビジョン策定を提案し、先入観のない海外のコンサルティング会社に頼んで「Where good things grow(良いものが育つまち)」という分析を得ました。
日本語訳は前橋市出身のコピーライター、糸井重里さんに頼むことにしたのですが、長く前橋と距離を置いていた糸井さんですから、1回でOKとはいきませんでした。何度かお願いして、言われたのが「過度に装飾された言葉は前橋には似合わない」ということ。
むしろ言葉より、市民一人一人が木を植え、一生かけて育てていくような行動を伴う方がいいとアドバイスされました。そして頂いた「めぶく。」のボディーコピーは、まさに自らの手で土地を育て、芽吹き、成長を見守っていくという強い意思が込められていました。

https://imakoko-gunma.com/mebuku-maebashi/
より一部抜粋

 こんなにも太い一本のボディ“めぶく”を掲げる前橋市が羨ましく感じます。
 さらに、市のHPには次のような記述があります。

市役所だけでは、地域が直面する課題を発見したり、発見した課題を解決する技術やノウハウを十分に保有しておらず、その対応はますます難しくなっています。その一方で、スマートフォンの普及や情報通信技術の進展により、場所や時間の制約を超えた活動や、双方向のコミュニケーションが可能な社会が形成されつつあります。
 
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル化を手段として変革を進めることです。単なる新技術の導入ではなく、それに合わせて制度や政策、組織のあり方等を変革していくことが求められています。こうした社会情勢の変化を踏まえ、平成13年3月に策定した「前橋市情報化推進基本方針」を見直し、「前橋市DX推進計画」を策定しました。

https://www.city.maebashi.gunma.jp/


DXを推進するために前橋市DX推進委員会が設置されており、組織のなかにテーマごとに活動する13のワーキンググループが存在するそうです。そのWGの⑫と⑬にハッとします。

⑫地域社会のDX推進 目指す未来:共助の在り方を再構築
⑬デジタルデバイド解消 目指す未来:誰も取り残されない

 
とあるから。
”インクルーシブ”をめざす市の姿勢、いいなって思いませんか?
 そんな前橋市のトップ・山本市長のブログがまた面白いのです。

2021年3月7日のタイトルは「私は社会から“ハミダシもの”かもしれません」。

”当選以来、タクシーの料金補助であるマイタク、自動運転バス、AIによって個々人の乗り合いを促進して料金の料金負担を減らすAI乗り合いタクシーを進めて来ました。”と述べ(前橋MaaSのこと)“私のビジョンを先行して、自治体の市域を超えた住民の移動支援に取り組む方がおられます”と、北嶋さん、MWS日高、福祉ムーバーを紹介しています。

私が目指す移動支援は著者『移動貧困社会からの脱却』(楠田悦子)の書かれるように、既存の交通資源の活用を効率化することで、行政の補助や支援のもとで、より安価に移動困難な高齢者の方や障害者の方に移動・外出の自由を提供することです。
 
 日本社会が習い性【ナライセイ】としてしまった常識に私は例外則を生み出すべきだと。

最近ではファーストペンギンと言われますが・・・
組織維持の為に組織内部の常識がどれだけ社会進化を停滞させているか?
組織や社会は例外によって進化する。もしかしたら、私は社会から“ハミダシもの”かもしれません。
でも、“ハミダシもの”がどの時代においても未来を造ってきたと私は信じます。

前橋市長 山本りゅうのブログ  Slow &Super City
https://ameblo.jp/ryu-yamamoto/entry-12655214621.html
一部省略して抜粋

手段と目的

北嶋さんは言っていました。

「デイでの移動販売車の導入・活用はゴールじゃないんですよ。ひとつの目的のための手段。やっぱりね、買い物に自ら行くというのが最大の目的。選ぶ・買うという大切な行為が付随するんですよね。移動こそ最大の介護予防だと思います」

 本当にそう思います。

 最後に、筆者の身近な話を。

取材日は1月5日 帰路の車中にて。関東平野の夕暮れ。

 私の92歳の祖母(要介護1)。認知症が進行してしまい、買い物に行ったとしても「自ら選ぶ」ことができません。料理をすることもありません。シルバーカーを忘れて、友達の家に出かけられるほど足はまだ丈夫なのに…。

 祖父(97)がなんでもやるタイプで、買い物・調理を進んで行っていました。
 祖母はそれに乗っかってしまっていたんですね。認知症になってからではすでに時遅し。
 2022年夏、双方がコロナ感染。祖母は無症状でしたが、祖父は熱が下がらず。入院した時には中等症(腎不全や糖尿病など併発)。結局今も、退院のめどが立たない祖父。
 祖母を介護するのは私の母親。母も、はじめのころは「一緒に洗濯物を干しましょう」って祖母の行動を促していたようなのですが、認知症が進むにつれ、洗濯物の干し方がおかしくなり、タンスに「下着」「パジャマ」などとタグをつけてもおかしくなってしまう。食事をしたことすら忘れてしまうくらいですから、介護する側にとってはストレスでしかなく「私がやってしまったほうが早い」。祖母のできることがどんどんなくなってしまったのです。

 「自ら動いて、順序だてて何かをする(「買い物に出かける」がその最もかもしれません)」ということをもう少し維持できていれば違っていたかもしれません。
 
 福祉Moverの存在、その意義や意味が、日本のもっとあちらこちらに届いてほしいなって切に願う、取材時間でした。前橋市の動向にも注目していきたいと思います。


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