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”祝福”という、その日。

出会い

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 2020年4月6日、満開の桜が咲くなかで「オノさん」というボランティア活動をしている79歳の男性に出会いました。
 場所は香川県高松市庵治町。小さな漁師町で、高い場所からは屋島や五剣山と瀬戸内海が一望できる、とても素敵な風景が広がっている町です。
 オノさんは、30年以上ほぼほぼ一人で、庵治の山道の手入れやゴミの管理をされているのです。私は数年前からたまに散歩で訪れていました。「ボランティア」と書かれたジョウロが木にかけられているのを見て、“ボランティアの方々の存在”には気づいていましたが、今まで出会ったことはありませんでした。
 昨年初めて、その“ボランティアの方”―団体ではなく、個人だったことにとても驚いたのですが、オノさんに出会えたのです。話の流れからオノさんの誕生日が4月22日であることを把握した私。

 「そうだ!この風景を一年間、毎月写真を撮る。それを写真集にしてオノさんの来年の誕生日にプレゼントしよう」


 ちなみに。4月22日といえばアースデイ。地球のことを考える日です。ご存じでしたか?

 ともあれこうして、「庵治の山道を毎月歩いて写真を撮る一年間」が始まったのでした。

一年間に及ぶプロジェクト

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 5月はあちこちで花たちが嬉しそうに咲いていて。6月、7月…梅雨…アジサイにびわ、水溜まりにカニ。夏はカーっと日差しが強く、海と空がとびきりの青。向日葵も咲きました。そして秋。やわらかな陽だまり。木の葉が色づき、やがて落葉。12月、1月と…冬は南天の赤い実がとても目立っていました。

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「あ、変わった」
 
 同じ場所を毎月歩いて写真に収めていくという行為が“自然の変化、四季の移ろい”を身体で感じさせてくれることになりました。
 自然の変化に気づけたことが、私はとても嬉しかったのです。

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 年が明け、梅の花。水仙もあちらこちらに。桜の木を見れば、つぼみがギュッと、そして膨らみも見せている。明らかに春が近づいてきていました。

図らずも…。

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 3月中旬すぎ、咲き始めている桜の木にシャッターを向け…12か月、この地を歩いたことになりました。
 「一年間、無事に写真を撮り溜めた」
 ホっとした、その日。


 いよいよ写真をまとめます。パソコンで作業を行い、3月下旬、写真集は完成しました。完成品が郵便で届いたのは4月6日。図らずも、「オノさんと出会った日」の一年後に写真集が届いたことになったのです。

予感

 こうして毎月歩いていたわけですが、オノさんに会えたのは一年間で3回。4月22日に行ったところで、会えるかは不確かです。昨年の4月22日、80歳の誕生日は、初めて出会った日の、オノさんと娘の写真、海辺で拾った貝をフォトフレームの周りに飾り付け、プレゼントしました。

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(2020年4月6日の記念写真)

 その日は仕事があって、「幼稚園に迎えに行ったらそのまま庵治に行ってね」と、仕事休みだった夫と娘とは山道で待ち合わせることに。
 私は仕事の最中、ソワソワソワソワ。仕事を終えたら急いで山道へ。「どうかどうか、会えますように!」と祈りながら、心臓をドキドキさせながら…。奇跡が起き、オノさんに会うことができたのです。

 さて、今年の4月22日は木曜日。私は仕事休みの木曜日。今年は不思議と「きっと会える」。会えなかった時のことは考えずにいました。
 小1の娘は13時すぎに帰宅。
 さ、行こ!!
 車を走らせ始めます。雲が多いな…あれ?しかも庵治の方向、曇り空…。雨が降らなければいいのだけども。

 寄り道をして、山道に着いたのは14時半過ぎ。歩き始めて間もなくでした、青い服が見えたのは。私はニヤリ。

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  娘が駆け寄っていきました。

 「オノさん、今日は…81歳になられた日ですよね」

 プレゼントを渡してくれた娘。

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 オノさんの顔がほころびました。聞けばなんと、今日は奥様との結婚記念日でもあるそう。
 もう、ご自身の誕生日、結婚記念日、アースデイとトリプルでおめでたい4月22日だったのです。

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 「では、私は続き(の作業)を…」
 「私たちは散策してきますね」

自然からの贈り物

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 せっかく来たのだから、山道散策へ。浜へも向かいました。トンネルみたいな木々を抜けていくと、浜に降りることができるのです。
 「潮、かなり引いてるね」
 調べてみたらこの日の干潮は14時ちょっとすぎ。今、時刻は15時。娘は貝拾いに夢中になり始め…
 「あっち行けるよー!!」と夫。
 潮が引いていたため、大きな岩を超えることができ、今まで一度も歩いていなかった浜辺へ行くことができました。

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「ここどこ?」ってくらいに、美しい景色。見上げた空に雲はなく、ひたすら青い。

 「ほんと、庵治っていい場所だよね。ここなんか、本当に知る人ぞ知る…」

 山道手前の王子神社は、映画『世界の中心で愛を叫ぶ』のロケ地にもなっているので、訪れる人は多いのですが、その先のこの山道を進む人は少ないのです。
 私たちも「ねぇ、ちょっと行ってみようよ」という冒険心で歩みを進めたが故に発見できたのですから。

 もう、嬉しいとしか…

 山道へ戻り、帰路を進んでいくと青い服…。ん?
 「オノさん!!」
 娘が駆け出していきました。

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 娘の手には袋。
 「どうぞどうぞ。召し上がってください。家に戻って取りに行ったんです。展望台のほうに行ってるかなと思ったんですがいなかったのでここ(ベンチ)に座って…」
 オノさんは私たちが戻ってくるのをずっと待っていてくださったんですね。
 娘は大喜びで頂いたお茶をゴクゴク、お菓子をパクパク。

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 おしゃべりしながら、オノさんと4人で歩きます。

 「オノさんの背中、濡れてる。なんで?」

 娘が言いました。

 「汗かいてるんだよー。だって、こんな暑いなか、オノさん一生懸命に木や花の手入れをしているんだから」

 自ら苗を買ったり、周囲から寄付されたり。それらを植え、時には植え替え、水をやり、支柱を添えて。今ここにある風景はオノさんの30年にもなる行為の結果…

 「歩いて健康に」
 「散歩しながら、花を楽しんでほしい。屋島が美しい風景を楽しんでほしい」

 オノさんが持たれているこの思い。
 本当に素敵です。
 こんな素敵な人だから、4月22日という日が祝福されないわけがありません。

 神様は見ている。

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 昨年、コロナ禍で、緊急事態宣言のなかでオノさんと出会って。
私の、オノさんへのこのプロジェクトは気持ちの支えでもありました。

 一年という時の移りを身体で味わいながら進んでいった2020年。

 2021年も変わらずコロナは社会を騒がせ続けていますが、オノさんの存在は私にとっての勇気になる。

 コロナ禍だからって、日々を流すことなく、できるだけ丁寧に過ごしていきたい。

 だって、一度きりの今日なのだから。

 小さな変化に気づける自分で居るためにも。
 確かな、大切なモノに気づいていけるように。

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介護、福祉、医療界隈の物書き。1983年埼玉県生まれ、香川在住。高齢者住宅新聞社にて長く現場取材。のちにフリー。 コミュニティ、まちづくり、場のチカラ、建築、空間、風景。旅と南米。organic。