乱気流の中を飛べ!飛行ロボット――東海学生No.1決定戦開催
名古屋大学と岐阜大学を運営する東海国立大学機構は9月20日、両大学の学生が製作した飛行ロボット(自律滑空機)の性能を競う「東海クライマックスシリーズ2024」を岐阜市内で開催しました。
両大学から選抜された各2チームが出場し、出場チームの中で最も大きな機体で安定した飛行を見せた名大Bチームが優勝しました。
大学の授業で自律飛行の機体を設計、製作して実際に飛ばす!
本大会は、両大学が共同で開講する「航空宇宙設計・生産融合人材育成プログラム」の一環。実習科目で学生が機体を構想し、設計から製作、飛行まで実践する“名物授業”として2021年度から毎年実施しています。
4回目となる今回は離陸地点付近に大型送風機を設置し、乱気流の中での飛行に挑戦。各チームはそれぞれ、飛行の安定性や速度、製作効率といったコンセプトを基に機体を製作して大会に臨みました。
出場した機体は、機首を上下に動かす「エレベーター」や機体を左右に傾ける「エルロン」などを装備し、飛行中の姿勢をセンサで感知してマイコンとモーターで制御するまさに「飛行ロボット」です。
どの機体も強風に“右往左往”させられながら、高く舞い上がって旋回したり、失速して墜落寸前で機首を持ち上げて飛行距離を伸ばしたりと、随所に制御の成果を見せて会場を沸かせました。
優勝した名大Bチームは、低速での安定した飛行を目指しつつ、製作が容易な「矩形翼(くけいよく)」の機体を製作。両端が直角の形状をした両翼1.2mの大きな翼で、重量300グラム強の“重い機体”を安定して飛ばしました。
準優勝の岐大Bチームは、メンバー2人という限られた条件で「約束された安定飛行」をコンセプトに機体を製作。これまで先輩たちが積み上げたノウハウを基に、堅実な飛行につなげました。
今大会には川崎重工業(株)の有志チームがゲスト参加。鳥のように羽ばたく機体や回転ローラーで浮力を生み出す機体など、ユニークな機体を飛ばして学生らに“プロの実力”を見せつけました。
現実の産業界の“ものづくり”を学生が体験するテーマとして最適
本プログラムの指導教員を務める工学研究科の原 進 教授によると、これまでの実験系科目は、一つの座学理論教育に対して一つの実験テーマという組み合わせが一般的でした。
一方、産業界における“ものづくり”は、複数の理論がさまざまな制約のもとで複雑に絡み合いながら仕様を満たすのが“当たり前”の世界です。原教授は「こうした現実を分かりやすく学生に体験してもらうテーマとして、飛行ロボットは一番適切だった」と考えています。
この大会は、単に両大学の学生と関係者が楽しむイベントではなく、工学教育研究としての大事な実践の場になっています。米国ノースカロライナ州立大学でも今年度から、本プログラムと同様の飛行ロボット教育が4年生向け教育プロジェクトとして採用されました。
今大会で優秀な成績を上げた名大と岐大チームの代表ら数名を2025年3月、同大学に派遣し、両国の学生が飛行ロボットを飛ばして交流して航空技術の学びを深める予定です。