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【才能】

「聞いてよ~また彼氏に振られたんだけど~」
『はいはい、ご愁傷様』
「ちょっと、思ってないでしょ」
『今回はまだ長いほうだったんじゃない?』
「いうて3か月ですけど」

むくれながらモンブランを頬張る彼女は
失恋したてホヤホヤらしい。

「まっ、しょうがないね!切り替えて次次~」
『よくそんなすぐ他の人に行けるね』
「え~?だってもう私のこと好きじゃない人で
 うだうだ悩んでたってしょうがなくない?
 いつだって今の私が一番若くて可愛いんだから
 その時に恋しなきゃもったいないじゃん!」
『そう…?』
「そんなことより、あかりんの方はどうなのよ!順調?」
『まぁ、変わらずって感じかな』
「本当あかりんとこは安定してるね~」
『安定というか、マンネリというか、ね…』
「またまた~そろそろ結婚なんじゃないの~?」

正直そろそろかなとは思っている。
大祐とは付き合って3年半
これといって大きな喧嘩や問題もなく
順調に関係を築いてきたと思う。

「あっ、もうこんな時間。そろそろ解散しよっか」
『おっけーん!今日は愚痴聞いてくれてありがとうね
 また遊ぼう~』
「うん、ありがとう。梨華も次の人は続くといいね」
『ほんとに(笑)縁結び神社でも行こうかな』
「そうしな(笑)じゃあね」

そうして私たちはそれぞれの帰路についた。


買い物でもして帰ろうかと
遊びに出たついでにいつもとは違うスーパーに立ち寄った。

そこには見覚えのある後ろ姿

「あ、だいs…」

声をかけようとしてやめた。

〈ねぇだいくん、今日何食べたい?〉
【ん~みゆちゃんの作るごはん全部おいしいからなぁ】
〈ほんと?うれしい!〉

そこには仲睦まじそうな、男女が並んで歩いていた。

私はその場を後にして家に帰った。
彼にメッセージを送り、帰ってきたのは翌朝だった

"ごめん"

そのたった三文字でいとも簡単に私たちの関係は終わった。



『わ~あかりん!!来てくれてありがとう!』
「梨華、おめでとう」
『ありがとう!どう?今日は世界一私がかわいいでしょ』

ピンクの華やかでかわいらしいウエディングドレスを身にまとい
くるっと回って見せる

「うん、お姫様みたい」
『え~!?やだ~恥ずかしい!でもそう思う~!』

梨華は相変わらずだった。
それに比べ私はあれから2年経った今も
大祐を忘れられないでいる。

『あかりんもさ、難しいとは思うけど次の恋に進んでもいいんじゃない?
 あっ、もちろん彼氏がほしいとか思うんだったらね!
 今の時代、幸せの形なんていっぱいあるんだし!』
「ふふ、ありがとう。梨華が気遣うのおもしろいね」
『えっ、えー!?そんなことないよ!!ねぇじゅんくん!』

急に話を振られた新郎の順平さんはびっくりしている

〔えっ、あ、そうだね…?〕
「この度はご結婚おめでとうございます。
 見ての通りこんな感じの子ですが
 まっすぐで誠実でかわいらしいのは私が保証します」
〔ありがとうございます、えぇそうですね。
 それは僕もよくわかっています〕
『やんやん!私もいれて!そこでイチャイチャしないで!』
「してないでしょ~ほら主役は早く他のところも周ってきなさい」
『はーい!じゅんくんいこっ』
〔梨華ちゃん走っちゃだめだよ〕
『わかってるよ!あ、あかりん』
「ん?」
『新郎側いい人たくさんいるよ、まだ独身の割合のほうが高いみたい』
「ありがと」
『じゃ、またあとでね!』

そういってパタパタと小走りしてどこかへ行ってしまった。


あれから出会いもきっかけも一度もなかったわけではない。
でもどうにも踏み切れないというか。
あまりに私の中での彼が大きすぎたというか。
あっちはそうじゃなかったみたいだけど。

あの頃は、ぽんぽんいろんな人に簡単に乗り換える梨華のことを
正直調子が良くて軽い女の子だな、なんて思っていたけど。
それだけ他人のいいところを見つけるのが上手なんだろうなって
過去は過去と割り切って、次の人をまっすぐに愛せるんだろうなって
人を信用して好きになるというのにも才能が必要だと思い知らされた。





なごやん

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