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AIとタンパク質デザインのコラボ、好相性! 【27】

「タンパク質」といっても、食べ物や栄養の話ではありません。
実は今、タンパク質が暮らしに役立つ、と注目されています。
そんなタンパク質を創り出す「タンパク質デザイン」の研究を紹介します。

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みなさんは、「デザイン」と聞いて、何をイメージされますか? 私は、ファッションやインテリア、ウェブデザインなんかを思い浮かべましたが、実はタンパク質にも「デザイン」の概念があるんです! 

そもそも、デザインとは日本語で「設計」のことで、「車を設計する」とか「建物を設計する」の設計と本当は同じ意味。タンパク質デザインは、私たちの目には見えない分子の世界のお話ですが、例えば、がん治療で期待される抗体医薬のように、医療や産業に役立つタンパク質をデザインする研究が、今、注目されています。

ただ、タンパク質をデザインするのは簡単ではありません。一般に、タンパク質は、アミノ酸がいくつもつながった鎖が、ぐにゃぐにゃと絡み合ったような複雑な形をしています。タンパク質をデザインするときには、このアミノ酸の並び方と全体的な形の両方を考える必要があります。

でもタンパク質の多くは、アミノ酸が数百個も数千個もつながっているので、アミノ酸の並び方のパターンだけでも膨大です。スーパーコンピューターを使っても、現実的な時間内に計算することはできません。

そこで、名古屋大学の研究グループは、情報学と物理学を組み合わせた新しい方法を考え出しました。

具体的には、まず「アミノ酸は、タンパク質が安定するように並ぶ」という仮説を立てました。そして、「統計力学」という物理学の方法でその仮説を表現しました。さらにその仮説を、「ベイズ学習」という機械学習の手法に組み込み、タンパク質デザインのシミュレーションを行いました。機械学習は、AI(人工知能)の分野で注目される技術です。

その結果、これまでのやり方で時間をかけていた計算のステップを踏まなくても、正しくデザインできるケースも多いことがわかりました。大きなサイズのタンパク質を、よりスピーディにデザインすることもできたそうです。

今、タンパク質デザインの現場では、計算ソフトが広く使われていますが、「なぜソフトを使ったデザインがうまくいくか?」についてはわかっていませんでした。今回の成果は、この謎を理論的に裏付けるものでもあるそうです。

研究を行った時田 恵一郎ときたけいいちろう教授からのコメントです。

「今回の成果は,情報学研究科 複雑系科学専攻や、情報学部 自然情報学科が目指す『情報学と自然科学の融合』の新しい実りのひとつと言えるかと思います。自然科学とAIの両方に興味があるという高校生や学部生の方は,ぜひ名古屋大学情報学部,情報学研究科への進学をご検討ください!」

この研究について詳しくは、2021年8月25日発表の、名古屋大学 研究プレスリリースもご覧ください。

制作協力:髙山楓菜たかやまふうな(名古屋大学理学部3年)

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