生命誕生にも関与⁉ 星の円盤寿命、明らかに 【25】
今回は、星の周りにある円盤の寿命に関する研究をご紹介します。
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星の周りの円盤といえば、土星の円盤が有名ですよね。土星の円盤は惑星に比べて薄くて小さいですが、若い星の周りの円盤は中心の星に比べてかなり大きいです。この円盤の中で我々の住む地球の様な惑星が作られます。
実は星の周りの円盤はこれから惑星をつくる材料になるガスと塵でできています。ただ、円盤は永遠に存在するわけではなく、円盤の中心にある星から出る紫外線やX線などの熱で蒸発することで寿命を迎えます。この円盤の蒸発を「光蒸発」と呼びます。
これまで、円盤の寿命は300~600万年といわれていました。ところが近年、その寿命を超えてもなお、ガスを持ち続ける「ガスリッチデブリ円盤」と呼ばれる円盤があることが分かっています。
なぜこのような円盤が存在するのか、研究グループは円盤がなくなってしまう原因になる光蒸発についてシミュレーションを行い、円盤の寿命を割り出しました。
その結果、円盤の質量が太陽のおよそ0.1%以下だと、光蒸発でガスがなくなるのがとても遅くなるということが分かりました。円盤の寿命に換算すると、数千万年です。数百万年と予想されていたので、10倍も長い値です。実際に、寿命の長いガスリッチデブリ円盤の発見例は少なく、シミュレーション結果と一致しています。
これまでは「ガスリッチデブリ円盤」は、惑星形成過程がすでに終わっていて、円盤を構成しているガスは惑星形成後の残骸だと解釈されてきました。ただ、今回の研究成果から、「ガスリッチデブリ円盤」のガスは初期からの生き残りで、さらにその存在が円盤の中で惑星形成が起こっている痕跡である可能性を示しています。
「ガスリッチデブリ円盤」程度のガスが残る円盤ではちょうど地球の様な惑星が形成されている最中という理論予想もあるので、太陽系以外の惑星系で地球の様な惑星ができるのを目撃しているのかもしれません。
研究を行なった小林浩助教からのコメントです。
「今回の研究成果により円盤の寿命が一桁も長くなる可能性が示されました。これにより、円盤の中でどのような惑星が形成されるかの理論予測もずいぶん変わってくるでしょう。今回の成果をもとに、太陽系以外でどのように多種多様な惑星系が予測されるのか、またこのような惑星系が発見されていくのか、期待しています。」
詳しくは、2021年7月12日発表の名古屋大学研究プレスリリースもご覧下さい!
制作協力:宮田芙悠(名古屋大学大学院 理学研究科修士1年)
◯ 関連リンク
・理論宇宙物理学研究室 (TA研)(名古屋大学大学院理学研究科)
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