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65年前のオーロラ解明大作戦【40】

約65年前に日本各地で観測されたオーロラ。
今回は、大切に残された当時の記録を読み解くプロジェクトのお話です。

トップ画像:©️新潟地方気象

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オーロラといえば、北欧やアラスカ、カナダなど高緯度の地域が有名ですが、日本でも見えるのをご存知ですか? ネットで検索すると「北海道で赤いオーロラが見える」といった情報が結構ヒットします。11年に1度訪れる、太陽の活動が活発な時期に、北海道くらいの緯度でもオーロラが見られるんです。

太陽の活動が活発かどうかの決め手は、黒点の数です。太陽の天体写真をみると黒い点が見えることがありますが、あれが黒点です。黒点の数は、今から400年以上前の、西暦1610年くらいから観測されていて、11年周期で増えたり減ったりを繰り返しています。

黒点は強い磁場を持っていて、その近くでは太陽フレアとよばれる大爆発が起こりやすくなっています。この大爆発で発生する電気を帯びた粒子が地球に降り注ぐ磁気嵐じきあらしという現象が起こると、オーロラとなって人の目にも届くのです。

さて、これまでの記録でいちばん黒点の数が多く、太陽活動が活発だったのは1957~1958年、今から65年ほど前です。日本でもオーロラが肉眼で見えたようで、専門家だけでなく市民の方々の観測記録も多く残っているそうです。そこで、これらの記録をくわしく調べ、当時のオーロラ観測の全貌を明らかにするプロジェクトを名古屋大学、京都大学、東京大学の研究グループが行ないました。

成果をハイライトしたプレスリリースには、読んでいてワクワクするような発見が続々と登場します。特に驚くのが、1958年2月に発生した大規模なオーロラです。北海道から山口県に至るまで、日本の津々浦々で、80以上の手書きのスケッチや、当時まだ普及していなかったカラー写真として記録されています。空高くカーテンのように舞うオーロラではなく、地平線付近に赤く広がる様子が描かれています。

このような記録から、オーロラが従来説より遥かに日本に近づき、青森上空まで下がっていたことが明らかになりました。中には黄色やオレンジ、ピンクや紫など低緯度地域ではあまり観測されない色のオーロラも記録されていて、かなり高いエネルギーの粒子が日本の空にも降り注いでいた可能性など、貴重な情報をたくさん引き出せたそうです。

また、ここで再発見されたオーロラの記録は、1958年2月のものだけではありません。この時と同じくらい巨大な磁気嵐が起きていた1957年9月のオーロラについては、これまでその実態がよくわかっていませんでした。しかし今回の検討で、北海道西部一帯でオーロラが見えており、オーロラ自体も少なくとも宗谷海峡上空まで下がってきていたことが明らかになりました。

このときオーロラが1958年2月ほど広い範囲で報告されなかった理由もわかってきました。当時の天気図をみると、1958年2月11日には天気が比較的良かったのに対し、1957年9月13日には、当時北海道西部を除き、日本列島の北部や東部がほとんど曇っていたことも明らかになりました。1958年2月のオーロラが山口県まで見えたのは、いくつもの偶然が重なったおかげだったのかもしれません。

多くの人の観測記録が65年経った今、新しい発見につながっていることに記録の持つ大きなパワーを感じます。研究グループも、市民と科学者が協力して研究を進めるシチズンサイエンスのさきがけ、と当時の観測コミュニティを高く評価しています。

ただ、こういった紙媒体の記録は保存や管理の問題があり、廃棄が検討されているものも少なくないそうです。大切に保管された過去の記録から、大きな成果を生んだこのプロジェクトのインパクトは大きいですね。

研究を行った早川尚志はやかわひさし特任助教からのメッセージです。

もしオーロラを目撃された場合、ぜひ、観測時刻やオーロラの高度、色彩などの情報を記録してみてください。オーロラの高度は周りの星などと対比させます。1957~1958年の記録が60年以上の時を越え、現代科学に貢献しているように、あなたの観測も将来、科学研究に大きなヒントを残してくれるかもしれません。

詳しくは、2021年12月20日発表の名古屋大学プレスリリースも、ぜひご覧ください。

(文:丸山恵)

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◯関連リンク

Geoscience Data Journal に掲載予定の論文

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