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【名大研究フロントライン 6】 「みんなのため」の追放なら心は痛みにくい

今回は、仲間からメンバーを除外するときの「心の痛み」について、社会心理学の研究を紹介します。

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職場での解雇やグループからの仲間はずれ…。想像するだけで心が痛みますが、日常的に起こっていることです。集団からメンバーを追放することを専門的な言葉で「排斥はいせき」といいます。排斥された時の強い心の痛みは、脳の反応を調べた研究でも確かめられています。

では、排斥する立場の人はどうでしょうか?人は「お互いを受け入れ合うべきだ」と考える生き物です。きっと排斥する立場の人も心を痛めているはずです。ただ、誰かを排斥しなければならない状況では、排斥の対象を決める「心の中のルール」がありそうです。

そこで、名古屋大学と高知工科大学の共同研究グループは心理学実験を行いました。まず、実験の参加者に架空のメンバーとのチームプロジェクトを疑似体験してもらいます。そして、チームとして成果を出している状況で「誰か1人を排斥しなければならない」と伝え、メンバーの成績を見ながら排斥の対象者を選んでもらいました。

いろいろなパターンで実験を繰り返していくと、排斥の対象になりやすいメンバーの特徴がわかってきました。さて、ここでちょっと考えてみてください。あなたなら次の2人のメンバーのうちどちらを排斥の対象にしますか?

① あなた個人に貢献していて、チーム全体には貢献していないメンバー

② あなた個人には貢献していないが、チーム全体に貢献しているメンバー

自分の利益をとるか、チームの利益をとるか、迷うところかもしれませんが、実験で見えてきた傾向は、①です。

排斥する立場の人は、チームの利益を優先し、自分の利益になる人でも排斥してしまうということです。そして、その方が心が痛みにくいこともわかりました。日本人の大学生や一般の方を対象とした複数の実験で同じ結果が得られたそうです。

この研究を行った名古屋大学教育発達科学研究科の五十嵐祐いがらしたすく准教授は、「排斥されやすい人の特徴を明らかにすることで、どのような時に排斥が起こるのかを予測できるようになるかもしれません」と話しています。

排斥を社会からなくすことは難しいですが、私たち人間を苦しめます。このジレンマがこのような研究によってやわらいでいくといいですね。

詳しくは、2021年5月14日の名古屋大学研究プレスリリースもご覧ください!

ベーシック線

◯ 関連リンク

 五十嵐祐准教授の研究室


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