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いつまで自宅待機? 【22】

今回は、新型コロナウイルス感染者の隔離日数に関する研究を紹介します。(2021年9月5日に配信した内容です)

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オリンピック・パラリンピックは終わりましたが、緊急事態宣言の発令・撤回が繰り返されていて、新型コロナウイルスの感染者数も増加が続いていますね。ワクチン接種率は徐々に上がっているようですが、マスクなしの生活はまだまだ先になりそうです。

今、日本で新型コロナウイルスに感染して症状が出てしまうと、「発症から10日間、かつ症状が回復してから3日間」の隔離が必要です。これは、感染者を一定期間だけ隔離する「固定期間法」の考え方が基になっています。

期間だけに基づくのでわかりやすいですが、感染した人が感染力を失うまでの日数に個人差がある点を考慮できません。実際、隔離が終わっても感染力が残る場合や、逆に感染させるリスクがないのに、不要に隔離されている場合もあるそうです。

隔離期間のもう一つの考え方に、「PCRテスト法」があります。PCR検査で感染者のウイルス量を測り、感染力を失った時点で隔離を終了できるので、より確実です。ただ、何回もPCR検査を行うため医療従事者の負担が大きく、検査体制も大きな課題になります。

現場に寄り添いつつも感染防止に効果的な隔離期間は、その時々の状況に応じて柔軟に設定する必要がある、そう考えた名古屋大学の研究グループは、隔離終了のタイミングを検証するシミュレータを開発しました。

このシミュレータは、隔離のリスクと負担を計算できます。

例えば、隔離期間を発症から10日間とすると、感染力の残る患者の隔離を終了してしまうリスクはわずか1%未満ですが、感染力のなくなった患者を約1週間も不要に隔離してしまうことを計算できます。

逆に、感染力の残る患者の隔離を早く終了してしまうリスクを5%以下に抑えたければ、7日間の隔離期間が必要だと割り出すこともできました。

シミュレータの開発には、実際の感染者のウイルス量のデータを数式に落とし込む、ウイルスダイナミクスという新しい学問が基になっています。研究を行った岩見真吾いわみしんご教授とJeong Yong Damチョン ヨン ダム研究員からのコメントです。

「COVID-19患者の隔離は、さらなる感染を減らすための最も簡単で効果的な戦略ですが、長期的な隔離は患者に負担をかける可能性があります。この問題をきっかけに、私たちは、さらなる感染を減らしながら、隔離の負担を減らす方法を考えました。そして、数学的モデルベースのシミュレーション手法を使用してこの研究を実施しました。今後も、COVID-19の蔓延を抑えるのに役立つ研究を行っていきたいです。」

開発されたシミュレータが実用化され、隔離にまつわる全体的なリスクや負担を最小限に抑えられるといいですね。最近は変異種も出てきていますが、これにも開発されたシミュレータが対応できるのか気になるところです。今後の研究に期待しましょう。

詳しくは、2021年7月28日発表の、名古屋大学研究プレスリリースをご覧ください!

制作協力:堀内愛歩ほりうちなるほ(名古屋大学大学院 経済学研究科 修士1年)

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