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ホモ・サピエンス拡散の出発点、ヨルダンの遺跡で新たな発見 【42】

なぜ私たちだけが人類として生き残ったのでしょう…
ヨルダンのトール・ファワズ遺跡の発掘から、私たちの歴史に思いを馳せてみませんか?

(トップ画像提供:門脇誠二かどわきせいじ講師)

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今回は、私たちヒト「ホモ・サピエンス」の歴史をひも解く、遺跡発掘に基づく研究をご紹介します。

発掘の舞台は、トール・ファワズという中東ヨルダン南部の遺跡です。アフリカで出現したホモ・サピエンスがユーラシアに拡散した出発点にあたる地域ですが、遺跡の正確な年代はわかっていませんでした。

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そこで、名古屋大学の門脇誠二かどわきせいじ講師の研究グループは、このトール・ファワズ遺跡を数年に渡って調査し、石器など1万点以上の遺物を発掘してきました。そして詳細な分析の結果、遺跡の年代を今から約4万年まえ前後と推定しました。

その時代は、上部旧石器じょうぶきゅうせっき時代とよばれる時代の初期にあたります。ネアンデルタール人など古代人が絶滅、石器の形や製作技術が変化し、新しい文化が誕生し始めた時期です。この時代の新しい技術を取り入れた石器は、遺跡周辺だけでなく朝鮮半島や日本でも見つかるほど、適用度の高いものだそうです。

また、この遺跡は海から遠く離れた内陸にあるのに、貝殻も見つかっています。異なる環境から資源を得る手段は、生き延びていく上でのリスク回避につながっていたと考えられるそうです。

私たちホモ・サピエンスは、アフリカからユーラシアに拡散した後、すでにユーラシアにいた旧人に勝る人口増加を成し遂げました。なぜ、唯一生き残ることができたのか、その理由を探るヒントが、発掘された遺物にまだまだ隠されているかもしれません。

研究を行った門脇講師からのコメントです。

人類がホモ・サピエンスだけになった現在の状況は、人類の歴史においてとても特殊な状態です。そうなった過程や理由を遺跡調査から調べることで、私たちホモ・サピエンスの人間性の良い面や反省すべき面を明らかにしたいです。

詳しくは、2022年1月5日発表のプレスリリースもご覧ください。

(文:丸山恵)

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◯関連リンク

門脇誠二研究室(名古屋大学 環境学研究科/博物館)

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