見出し画像

ウイルスはなぜコウモリからやってくる? 【30】

ヒトの細胞とコウモリの細胞を、ウイルスに感染させると…。
コウモリ特有のウイルス反応、なるほど〜とうなづける結果です。

今回は、コウモリとウイルスとの関わりについての研究を紹介します。

↓ 音声でもお届けしています!

世界で2億人を超える感染者と、450万人を超える死者を出している新型コロナウイルス感染症。コウモリが持つコロナウイルスが、野生動物を通じてヒトに感染したと考えられています。以前に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、エボラ出血熱など、ヒトにとって致命的な感染症も、コウモリ由来のウイルスが原因でした。

研究を行った本道栄一ほんどうえいいち教授によると、いくつかの種類のコウモリは、人に致死的な病原性を示すエボラ出血熱や狂犬病ウイルスにも抵抗性を持っていて、これら危険なウイルスを持ったまま長距離を飛行する、という問題点があるそうです。

コウモリとウイルスに、どんな関わりがあるのでしょうか?

名古屋大学、山口大学、国立感染症研究所の共同研究グループは、4種類のコウモリ、ヒト、ハムスターの腎臓に由来する培養細胞を使って、ウイルス感染が、細胞にどのような影響を与えるか、細胞への毒性を調べました。

使ったのは、「コウモリオルソレオウイルス」というヒトにも感染するコウモリ由来のウイルスです。実験の結果、3種類のコウモリの細胞に、他との大きな違いが見つかりました。

まず、使用したコウモリの細胞は、このウイルスに対する抵抗性が高く、死んでしまう細胞の割合が低いことです。遺伝子レベルで調べると、ウイルス感染後に病原体などの外敵を見つける「パターン認識受容体」というタンパク質と、ウイルスをやっつけて増殖できないようにする「インターフェロン」というタンパク質の遺伝子の発現量が増える、という共通点が見つかりました。遺伝子の発現量が増えると、結果としてこれらのタンパク質が作られる量も増えると考えられます。

また、パターン認識受容体が外敵を見つけられないようにすると、ウイルス増殖の第一歩となるRNAの複製が感染後に増えることもわかりました。

つまり、コウモリが持つパターン認識受容体の遺伝子やインターフェロンの遺伝子は、コウモリがウイルスに感染したときに感染症の症状が出ないように働いているのですね。研究が発展すれば、今回実験に使ったコウモリオルソレオウイルス以外のウイルスにも共通して効果のある薬の開発につながるかもしれません。

本道教授のコメントです。

「コウモリが長距離を移動するのは、人間の活動と密接な関係があるため、コウモリの研究は、今回のような自然科学的な研究だけでなく、社会科学的な研究も行う必要があります。」

この研究について詳しくは、2021年8月30日発表の名古屋大学研究プレスリリースもご覧ください!

制作協力:堀内愛歩ほりうちなるほ(経済学研究科 修士1年)

ベーシック線

◯ 関連リンク

 ・本道栄一教授


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?