見出し画像

意外! 「○○な動き」が赤ちゃんの学びを促す 【20】

今回は、赤ちゃんの学習に関する研究をご紹介します。

↓ 音声でもお届けしています!

赤ちゃんは、周囲の人々のどのような仕草から知識や社会のルールを学んでいるでしょうか?

私自身もみなさんも、赤ちゃんの頃は親や親戚など周囲の人たちの体の動きから学習してきています。ただ、動きといっても無数にあるので、具体的にどのような動きを見てどのように学習するかは、まだ明らかになっていません。

そこで、名古屋大学などの共同研究グループが赤ちゃんを対象に研究を行いました。

まず、赤ちゃんがどのような動きに注意を向けるかを調べました。生後4ヶ月の赤ちゃんにおもちゃを差し出す、次の2つの映像を見せます。

①無駄のない動きでさっと差し出す映像

②弧を描くように、曲線的で無駄な動きを加えながら差し出す映像

赤ちゃんは、どちらの映像をより長く見たと思いますか? 

結果は意外にも、②無駄な動きを伴う方でした。しかも他の人に向けた動作より、自分に向けられた動作をよく見ることもわかりました。赤ちゃんの注意を引くそのような動きは、赤ちゃんの学びを促すのでしょうか?

グループは、次に10ヶ月の赤ちゃんで調べました。赤ちゃんに何度も同じおもちゃを見せるのですが、見せるときに赤ちゃんの方を向き、無駄な動きを加えながら見せると、赤ちゃんはおもちゃに見飽きて、新しいおもちゃを好んで見るようになりました。つまり差し出された物体を学習することがわかりました。見せるときに赤ちゃんの方を向いていなかったときや、無駄な動きを加えなかったとき、赤ちゃんは学習しなかったそうです。

赤ちゃんは、自分に向けられた、非効率な動きから学習する可能性があるのですね。これまで、赤ちゃんが大げさな繰り返し動作を好むことが知られていましたが、具体的な動作の特徴まで明らかにしたのがこの研究のポイントです。赤ちゃんの学習メカニズムだけでなく、ロボット分野などへの応用も期待できるそうです。

研究を行った平井真洋ひらいまさひろ准教授からのコメントです。

「赤ちゃん研究は、親御さんの献身的なご協力があってこそ成り立つ研究です。研究は赤ちゃんのご機嫌次第で、楽しくもあり大変なところでもありますが、何かを発見したときの喜びは何者にも代えがたいものがあります。既に赤ちゃんの脳の活動を調べることにより,他者の動き情報に基づく学習に関する脳の仕組みについて研究を進めています。今後はこの研究を発展させ、神経発達の視点からヒトの学習メカニズムについて研究を進めていきたいと思います。」

詳しくは、2021年7月16日発表の名古屋大学 研究プレスリリースもご覧ください!

制作協力:袖浦雄也そでうらゆうや(名古屋大学 経済学部4年)

ベーシック線

◯ 関連リンク

 平井研究室(名古屋大学大学院情報学研究科)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?