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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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2024年2月の記事一覧

いつ、どこに意識は宿る? 脳神経科学に問う、われわれの正体

私たちはこの世界をどのように感じ、経験しているのでしょうか。 その主体となる「意識」は、全身の感覚器官からの情報や記憶、そこから湧き上がる感情、思考など、たくさんの情報をもとに形作られています。ですが、そもそも「意識」とはいったい何なのでしょうか? 1月12日に開催した名大カフェ第100回 × 高等研究院ウェビナーでは、文学、脳神経科学、実験心理学など、様々な分野の研究者が集いました。第一線で探求している現場の皆さんに研究の今を伺い、「意識」の謎を探ります。 第1部 「

研究者もなんとかしたい、つらい慢性疼痛

いつも体がだるく、あちこちが痛い、でも原因はわからない…。機能性身体症候群で悩む患者さんが多くいます。 効果的な治療法が確立されない中、原因を突き止め、患者さんを痛みから開放したいという研究者の挑戦は続いています。 機能性身体症候群の痛みの研究に長年取り組み、最近、原因究明への大きな一歩となる研究成果を発表した木山博資さん(医学系研究科 教授)にお話を伺いました。 ── 機能性身体症候群はどんな病気ですか? 機能性身体症候群は、臓器そのものに異常がないのに、強い疲労感

5000個の石器と向き合い、見えてきたホモ・サピエンスの「試行錯誤」

700万年の人類の歴史の中で、なぜ私たちホモ・サピエンスだけが生き残ったのか──。以前、石器を通じて人類進化の謎に挑む門脇誠二さん(名古屋大学博物館 教授)の研究を紹介しました。 門脇さんが重視するのは、石器技術だけではなく、石器づくりに関連する人類の行動。ホモ・サピエンスが石器の種類によって石材を使い分けていたことを示した前回の研究に続き、彼らが試行錯誤を繰り返しながら石器技術を向上させていったことを発表しました。 約5万年前のホモ・サピエンスに「脳の突然変異」が起き、

沖縄のマンゴーを枯らす真犯人を特定

沖縄のマンゴー農園で、マンゴーの木が枯れる事態が起こっている──。一報を受け、森と生き物の関係を研究する森林保護学の専門家梶村恒さん(生命農学研究科 教授)が調査に乗り出しました。 梶村さんが特に気になったのは「木に穴が開いています」という情報。研究室に保管しているサンプルがすぐに思い浮かびました。 機械的に空けたような穴です。悪意を持った「人」のシワザなのでしょうか。ドキドキしながら真犯人特定について梶村さんに聞きました。 ── 一体全体、誰がこんな穴を…? この穴

プラズマ×農業=スーパー作物を作りたいわけではありません

今さらですが、名大研究フロントラインは、地下鉄名古屋大学駅を降りてすぐのNational Innovation Complex(通称NIC館)の3階から発信しています。 実はそのすぐ上の4階は、専用カードキーがないと入れないエリア。先日、ついにそこに入る日がやってきました! 名古屋大学低温プラズマ科学研究センターです。 ドアの向こうは約2000m²の広大な研究スペース。間仕切り壁がほとんどない空間に、実験装置がずらりと並びます。 名大が誇るプラズマ研究の長い歴史の延長

カーボンナノチューブ、低リスク化のキーは…微生物!?

夢の素材として大きな期待を背負うカーボンナノチューブ。人の健康や生態系へのリスクが指摘されていることは、どのくらい知られているでしょうか? カーボンナノチューブの安全性の確立が求められる中、堀克敏さん(工学研究科 教授)は、「生態系への影響や分解技術の開発は、私たちの研究力で貢献できるところ」と話します。 微生物、酵素、SDGsがキーワードの堀研究室。2023年6月には廃油を微生物で分解するプロジェクトについてお話を伺いました。 堀研究室とカーボンナノチューブの関連性に

小児がんと卵巣がんの意外な共通点、研究留学で明らかに

医学の進歩で驚くほど予後が良くなった小児がんがあります。腎臓にでき、日本では年間100人が発症する「ウィルムス腫瘍」です。 「9割が治るがんってなかなかないと思います。」 このがんについて研究する宇野枢さん(医学系研究科 博士課程)は、発見が難しいにも関わらず、見つかってから治療しても予後が良いと話します。 それでも研究するのは、1割の患者さんは治療がうまくいかないから。治療がうまくいくケースといかないケースは何が違うのか、がん細胞を根気強く観察した結果見えてきたのは…