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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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2023年6月の記事一覧

食と老化の関係、1ミリの虫で読み解く

脳の老化予防に効く乳酸菌──名古屋大学と雪印メグミルク株式会社さんが、線虫というモデル生物を使って探索しているテーマです。線虫にも脳があり、老化でその機能は低下します。6年にわたる研究の結果、エサとしてラクトバチルス・ロイテリ菌 (SBT10010) という乳酸菌を与えると、脳機能の低下が起こらないことを発見しました。 ヨーグルトで脳の老化防止が叶うかも…!?と期待できそうな発見ですが、少し注意してみる必要があるようです。 研究を行った野間健太郎さん(理学研究科 准教授)

子育てしながら研究したかったら、名大おいでよ!

「癒やされてきました!」といって、実験室に案内してくれたのは、石川由希さん(理学研究科 講師)。大学構内にあるこすもす保育園に8ヶ月の子を預け、ちょうどお昼の授乳から帰ってきたところでした。 「もう少し子どもが大きくなったら、子どもをもっとラボに連れてこようと思ってるんですよ〜。ボスや先輩たちもそうしてたので。」 特任助教として名古屋大学に赴任したのは2013年。当時、フトアゴヒゲトカゲを飼っていた石川さんは、「トカゲのおねえちゃん」「ユキちゃん」として、上司の上川内あづ

大学×大学発ベンチャー×大手企業で、SDGs実現へ

2023年5月31日のことです。きんとも🦠起業家大学教授こと堀 克敏さん(工学研究科教授)がこんなつぶやきを発信。 「菌」への興味から、バイオ研究の道に進み、大学教授をしながら起業。新しい産学連携のしくみを開拓し続ける堀さんは、いったいどんな野望を抱いているのか…!? お話をききました。 <インタビュー概要> ── ハウス食品グループさん、住友商事さん、豊田合成さん、大手三社との産学連携ですね…!実現のポイントは? 本業である動植物油の分解技術の高さに加えて、名古屋大学

深海9801m、岩石学者が本当に欲しかったもの

5月30日、第93回目を迎えた名大カフェ「深海9801m、岩石学者が本当に欲しかったもの」が、久しぶりの対面開催で行われました。 会場は、地下鉄名古屋大学駅すぐ、NIC館1階のコワーキングスペース「Idea Stoa」。この時の模様をレポートします。 今回のテーマは超深海探査。ゲストの道林 克禎さんと一緒に、日本で一番深い海の底に出かけましょう。 ■本当は岩石学者 髙橋:道林さんは岩石の研究をされているということですね。 道林:中学生の頃は、宇宙探査機「ボイジャー」

マイクロフローで『わざわざ難しいものをつくる』そのココロは?

「マイクロフロー大好きなんで、ずっとやっているんですよ」 と話すのは、有機合成化学が専門の布施新一郎さん。名古屋大学では、薬の発見から製造プロセスまでをカバーする創薬科学研究科でマイクロフロー推しの研究をしています。 「マイクロフロー」は、正式には「マイクロフロー合成法」という、化学物質を合成する方法の一つ。薬を作る方法として注目されています。この後詳しく紹介するので、ここでは、マイクロ=とても小さい、フロー=流路、つまり「とても細いチューブ」を想像してください…! 布

ジェームズ・ウェッブ、研究者が語る深宇宙観測の新時代

何度もの開発延期を経て、2021年暮れに打ち上がり、去年7月に観測を始めたばかりのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。まさに旬なこの宇宙望遠鏡で、130億年前の宇宙を観測し、本日「感動」の観測結果を発表したのが、 柏野大地さん(高等研究院/理学研究科 特任助教)です。 どんな発見か、端的にいうと、こうです↓ 成果の科学的なポイントは、高等研究院のわかりやすい解説記事にお任せし、ここでは「ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡で観測するって具体的にはどんな感じなのか!? 」に着目。実

素粒子宇宙円卓会議#9 |ニュートリノの飛跡の美しさに魅せられて

「KMIの研究者と、KMIサイエンスコミュニケーションチームと名大研究フロントラインメンバーが台本なしに交流し、どのような相互作用が生まれるのか」という切り口で、KMI研究者をゲストに迎え、素粒子宇宙対話をポッドキャスト配信する本企画。 9回目となった今回は、佐藤 修さん(未来材料・システム研究所 特任准教授/KMI連携研究者)をお招きし、お話を伺いました。 佐藤さんは、主に原子核乾板を用いたニュートリノの研究をされています。元々は地球外生命体への興味から素粒子物理学を研

「昔はいたんだけどね」っていいたくないから…。今伝えたい海の「光」とは?

光るナマコの新種を13種も見つけたとの一報を受け、「え、そもそもナマコって光るの?」というところから始まった今回のインタビュー企画。情報主は、別所-上原 学さん(高等研究院/理学研究科 特任助教)。光る生き物として有名どころのホタルやクラゲだけでなく、光るキノコからミミズまで、光る生き物は何でも知っているといっても過言ではない、光る生き物ハカセです。 ちょうど2年前のこの時期、フロントラインでは篠島(愛知県三河湾の離島)でのウミホタル採集に同行し、別所さんの光る生き物研究へ