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工場の10BASE5をMoCAで置き換えて高速化した話

私が勤めている会社(以下、当社)は建屋がいくつかに分かれており、一部の建屋は通信ケーブルが10BASE5となっていました。
10BASE5は名前の通り10Mbpsの通信回線であり、2024年現在ではモバイル通信にも劣る通信速度です。
本来は光ケーブルあるいはCat6AクラスのLANケーブルを敷設したいところですが、壁に穴を開けたり、数百メートルも配線を引き回すのは中々骨が折れる作業です。
そこで既設の10BASE5の配線をそのまま利用し、通信速度を改善する方法を見つけました。


MoCAとは

過去のこちらの記事を見てもらえると概略がつかめるかと思います。要約すると、同軸ケーブルを利用した通信規格のことです。今回置き換える10BASE5も同軸ケーブルですので、端子を加工すればそのまま流用が可能です。

10BASE5とは

10BASE5とは同軸ケーブルを利用した通信規格です。名前の通り通信速度は10Mbpsで、最長距離は約500mです。太い同軸ケーブルを使うため耐久性や耐ノイズ性に優れていますが、取り回しが大変です。
一方、直径5mmの細いケーブルを使う10BASE2という規格もあります。こちらは取り回しが良いのですが、そのぶん耐ノイズ性が犠牲になっており、最長距離は約200mとなっています。
10BASE5はケーブルに『タップ』を取り付けることで、任意の場所からLANケーブルを引き出すことができます。この便利な特性から、一時期は多くの工場で使われていました。

10BASE5の模式図
実際のケーブルとタップ

配線図

今回はタップを2つ残す予定だったので、最終的に下記のようにしました。
10BASE5のケーブルは途中で切断し、MoCAとLANハブで繋いでいます。

この図では単純に見えますが、実際には10BASE5(黄色)は工場内を200mほど蛇行して配線されていました。そのため切断する瞬間は多少緊張しました。
(一応、失敗しても元に戻すことはできます。)

MoCAアダプタは実績のあるgoCoaxのMA2500Dを使いました。以前はAmazonUSから1個5000円前後で購入できたのですが、今はインフレと円安の影響で10,000円前後に値上がりしてしまっています。今回は4つ購入したので40,000円ほどかかりました。

実測

PC1とPC3との間でiPerfを実行した結果は以下の通りです。上述の通り、PC1とPC3の間は200mほどあります。

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