林房雄「林檎」(1926)について
「十二月一日――小樽。此の前の手紙にも林檎の話を書いたね。海峡を渡つて、函館から小樽に来る汽車の窓から、新鮮な雪を着た林檎の林を見た――その雪と林檎の配合が、どんなに美しかつたか、てなことを、長々とね。今日もその林檎の話だ」(林房雄『林檎』1926)
いくら独語でマルクスが読めたからといって、それを文学の俎上にのぼせて敷衍することはむずかしい。それがマルキズムを文学運動の領域にまで拡大し、ひいては運動体に凝結させ、展開していくとなればなおさらだ。しかし、絶妙なさじ加減で政