最近の完飲と感想



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2019.9.28

『斜陽』 太宰治


平凡で退屈な日々に刺激を求めるのに変わることを恐れている。しっかりと愛の中で生きていけばいくほど削り取られていくのはそれこそ愛で、大人の風貌を気取り恋と革命を極度に崇拝することで自尊心を保つ。病気だ、病的だ、と思う。みんながみんな何かしらの病、とは聞くが、本作では''普通の人間''でい続けたいという心理的な依存(果てに共依存を招くようなものも)、身勝手な理想論、がいかに滑稽であるかを命の灯火が消える瞬間の儚さや美しさを交え非常にオブラートに包み優しくメッセージとしている。しかし大半の人間が、''普通の人間''であることを嫌がり認めようとはしない。それこそが人間が導き出した最も策略的な普通であるからだ。



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2019.10.4

『QJKJQ』 佐藤究


約400ページ、あっという間に読了。よくある謎解きトンデモ展開ミステリーかと思えば、思わぬところから「人はなぜ人を殺すのか?」「人はなぜ人なのか?」と誰もが曖昧に抱え突き詰めようとしない暗黙の了解への真理をつくほうへと気付けば迷い込んでいる。スプリーキラー、シリアルキラー、マスマーダー達の脳内を調べるために国家が犯す罪、見る暴力、といういわゆる''未必の故意''の愚かさ残酷さを法治国家を交え世界規模で壮大的に語る場面には並々ならぬ卑しさがあり目を背けたくなる。江戸川乱歩賞受賞作品、ていや江戸川乱歩がいないのに?と疑問には思ったけど長編ミステリーとして確かに秀逸だったので呆気なく納得してしまったな。



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2019.10.5

『インザ・ミソスープ』 村上龍


日本人は寂しい。日本人は寂しさを愛で埋めようとする。日本人は自国の文化を知ろうとしない。日本人は他人に興味関心がない。餌と電流を与えられるだけの猫のように飼いならされ死を待つのみだ。最後の最後でタイトルの意味を解し自らもその大海で泳いでいることを知る。何の具材が入っていても味噌を入れればそれとなく美味しくなる、というように他力本願で幸せを得ようとするな。人を殺める殺戮者フランクに同情するわけではないけど、きっとそういう奴らは彼のような凶悪殺人犯を前に口を開けただ殺されるのを待つだけだろう。常に何もしようとしていなければ、いざという時でさえ何も出来ない。ずっとピースしてたい。


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