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イグアナの娘、ならぬ姪

今週は水、木、金と自宅勤務。今日は土曜日だから、4日間完全にステイホームだった。GWはどうかな、完全におうち時間かな。そろそろいろんなアンテナ広げたい気もする。

このコラムを読んで、自分も『イグアナの娘』だったんだなと思った。イグアナの娘は確か、ドラマを見ていた気がするが…。そして、『娘』ではなく『姪』だが。毒親ではなく、毒叔父(母方の)だった、のかもしれない。

「かわいくない、ぶさいく、足が遅い、頭はよくない、ぽっちゃり、意地汚い、食い意地が張っている。いいところが何にもない(笑)」

「それに比べておじさんは、昔はかわいかったし、足も速くてヒーローだった」

「(私の)おばあちゃんは才女だったし、(私の)ママも要領がよかった。(私の)おばちゃんだって今は太ってるけど、昔はスリムで足も速かった」

「(私の)いとこのお兄ちゃんは白くて美形だし、なぎが生まれたときは『かわいい』って誰も言わなかった。黒いし、髪の毛も逆立って剛毛だし、背中にも毛が生えてたし」

「(私の)いとこの弟は、スポーツ万能で、昔のおじさんみたいだ」


これらの言葉を言われ出したのは、小学校4年生くらいだったと思う。少なくても覚えている限りは。それを、毎回、会うたびに、くどくど言ってくる。叔父は下戸なので、少しでも飲むとすぐにこの話題になって、本当に面倒だった。

私の祖父母は若くして亡くなったので、幼少のころから法事などで親戚と顔を合わせる機会は多かった。とはいっても、同世代は1個上と1個下の従兄弟しかいなかったから親戚の集まりはつまらなかったし、正直誰が誰だかわからなかったし、覚えられなかった。

正月、法事、夏休み、法事、年に数回親戚の集まりがあるから、年に4回は言われていたと思う。最初は母も「いいところもあるのよ。体はすごく柔らかいのよ」とか、祖母は「そんなことないわよ。かわいいわよ。将来はとても美人よ」とか言ってくれていた。祖母は小6のときに亡くなったけれど。父は反論してくれたことがなかったから、やっぱり叔父が言うことは本当なんだろうな、とか、一人っ子なのに何も自慢できるところがない娘でごめんなさい、とか思っていた。

色黒で、太っていて、チビ。成績もよくない。卑屈、ねくら。喋れば甲高い声でうるさい。本当にいいところがない、と自覚したのが中学生の時。

叔父の言葉は、会うたびに、30代後半まで続いた。ある時、ブチギレた。

「うるさいわ!毎日鏡で顔見てるんだから、ブスなのはわかるし、頭が悪いのも自覚してる。それでも努力してるし、少しでもかわいくいよう、がんばろうと思うのに、あんたが全部ぶち壊すんだよ。あんたのおかげで、「可愛いね」と言ってくる男に騙されなかったのだけは感謝するけどね。親戚と会うたびに私のことを貶めて、彼らだって毎回聞いてるんだから、知ってるでしょうよ、見りゃわかるでしょうよ。小学生の時から25年以上も、毎回毎回ぐちぐち、ほんとうっとうしいわ。だからあんたに会いたくないんだよ」

そのころすでに母の兄弟は4人中2人亡くなっていて、祖父母の法事も33回忌とか37回忌とかはすでにやらなくなっていた。私はもう家を出ていたけど、実家とは2分の距離だったので、叔父夫婦が実家に遊びに来るときは、「あんたも挨拶くらいしなさいよ」と母に呼ばれていた。ほんとうに嫌だったけど。

私がブチギレて以来、母は私に「叔父夫婦が来ているから遊びに来い」って言うこともなくなったし、父は私を褒めるようになった。「理系ですごいと思ってる」。気を遣っているのか、そう思っていたけどなかなか会話のない父娘だったから言えなかっただけなのか。平和主義だから、叔父とけんかしたくなかっただけかもしれないけど。


私の身長が止まったのは中2~3のとき。体重は、増減±7kgくらいはあるけど、体形は昔から変わっていない。整形もしていない。炎天下のスポーツをやめたから真っ黒ではなくなったけど、地黒ではある。基本、何も変わっていないのだ。

なのに、「カワイイ」と言われることが多くなってきた。すっぴんでも。『イグアナの娘』の主人公のように、美人ではないけれど。私自身は変わっていないのに、まわりからの評価が変わっているのはなぜだろうか。不思議で仕方がない。

叔父が吐く毒の言葉の数々から解放されたからか、誉め言葉に対して「ありがとう」と言えるようになった。柔和な笑顔も身に着けた。ずっと笑顔でいると、本当になるのだ。笑顔に擬態している、とも言える。

男性に「笑顔が可愛いね」と言われるとこの人騙されてるなぁ、とまだ思ってしまうところが毒が抜け切れていないのと、自分自身も毒でできているのかもしれない。女の子に「可愛いね」と言われると、貴女のおかげだよ、と思う。

可愛くない、は態度の問題。可愛くない娘なんか、いないのだ、と私は思う。

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