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仕事を選ばない組織は、本当のチームと言えない

Ten-Labは、2011年の創業から当初4年ほど「来た仕事は原則としてすべて全力で引き受ける」方針をとっていました。結果、売上と組織が水膨れし、「永山さんは結局何をしたいんですか?」とスタッフに詰められ、説明するも理解を得られずに組織は崩壊…。という、思い出すだけで蕁麻疹が出そうになるつらい記憶があります。(当時のスタッフのみんな、ほんとうにごめんなさい。今は素直に謝れる。)

この経験から、私は一つの大きな教訓を得ました。
『前向きになれない1つの仕事が、チーム全体のバランスを壊すリスクを持っている』というものです。当社のように、社会的な地位も、財務基盤の安定性も乏しいどローカルなベンチャー企業において、事業推進の最大のエンジンは金銭的報酬ではなく、「それをやる意味」です。「メンバーのやりたいこと」が最大のエンジンである場合、「やりたくないけどやっている」状態は、そもそもの存在意義自体を否定する状態を生み出しかねません。

2015年4月に、Ten-Labは私も含む全スタッフのフルタイム雇用をとりやめ、フリーランスの集合体になりました。2か月の休養を経て、私が着手したのは、「受ける仕事/受けない仕事をしっかり判断する」ことでした。

基本的には、受けると決めた案件は、すべて私とスタッフが「やりたい!」と思える仕事のみ。このシフトによって、「これ、やる意味あるんだっけ?」という、業務推進のエンジンをじわじわ蝕む根源的な葛藤からぐんっと距離をとることができるようになりました。

(やりたい仕事のみを受ける=仕事を厳選するという運用を可能にしたのが、全スタッフをフリーランスとして案件単位でチームをつくる、最近一部で話題の「ギルド」スタイルだったりします)

この運用を意識するようになってからは、「自分たちが今やりたいと思うことはどんなテーマなのか」を考えることの重要性が高まりました。
仕事とは、クライアントがあって初めて成立するものです。しかし、そうそう都合よく自分たちがわくわくする案件のみを持ってくるクライアントに恵まれるわけがありません。

また、未来のクライアントに対して、「自分たちがわくわくするのはこういう案件です!」という領域をプレゼンテーションする必要もあります。
以来、Ten-Labでは、ゼロ予算でもやりたいこと、を真剣に議論し、可能なものを実践するようになりました。この数年でも、「ふりかえり会」「2枚目の名刺作戦会議」「パブコメラボ」などなど、多数のゼロ予算事業を試験的に運用しています。

不思議なことに、フルタイムの専属社員を10名抱えていたころより、雇用形態を案件単位の業務委託に切り替えた今のほうが組織内のつながりは強くなっています。

雇用というスタイルは、ともすると売上・利益最優先となりがちで、仕事を断る勇気を持ちづらいです。フリーランスによるチーム制(ギルド型)スタイルにすることで、組織縮小のリスクを織り込みつつ、やりたいこと・やるべきことを優先する仕組みにシフトできたのだと思います。Ten-Labは組織の在り方を切り替えるタイミングで、仕事の受け方を切り替えたことが、今につながっているように感じます。ちょっと乱暴な言い方になりますが、仕事を選ぶことで、クライアントのための組織を、自分たちのビジョンを実現するための組織に切り替えることができたのです。

これ、もしタイムスリップできるとしたら、創業当初の自分に一番伝えたいことです。

目の前の仕事を断る勇気が、長い目で見ると組織を強くするのですね。

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